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第7話:【7日目】新人獣人のパトロールと、絶対零度の魔導氷室

 異世界生活7日目の朝。

 ホワイト村(仮称)に、新たな活気が生まれていた。


「村長! 異常なしです! 半径二キロ圏内に魔物の匂いはありません!」


 朝イチのミーティング。ルナがピンと耳を立て、尻尾をぶんぶんと振りながら報告してきた。

 狼獣人の機動力と嗅覚はすさまじく、彼女が毎朝パトロールをしてくれるおかげで、村のセキュリティレベルは格段に跳ね上がった。


「ありがとう、ルナ。助かるよ。よし、それじゃあ朝のルーティンにいこうか」


 俺は家の外に出ると、『日めくりカレンダー』の前に立った。

 昨日のスプリンクラー導入により、畑の野菜は一晩でとんでもない量に増殖している。

 当面の食糧には困らないが、今度は「保存」という新たな課題タスクが浮上していた。腐らせて廃棄するのは、PMとして一番避けたいリソースの無駄遣いだからだ。


「今日のドロップで、保存関係のものが出てくれればいいんだが……」


 期待を込めて、「残り358日」の紙をめくる。

 光の粒子が集まり、どさっと地面に落ちたのは、青白く発光する巨大な魔石のようなものだった。


『SSRアイテム【絶対零度の氷結魔核コア】を獲得しました』

『※密閉空間に設置することで、空間内を任意の低温状態に保ちます。鮮度を永遠に保つ巨大冷蔵庫が作成可能です』


「……よし! 完璧な引きだ!」


 俺は思わずガッツポーズをした。まさに今一番欲しかったソリューションだ。

 カレンダーの「状況に最適化されたドロップ」という仕様は、本当に恐ろしいほど優秀だった。


「ガルド、シルフィ! 緊急タスクだ!」

「おう!」「はいっ!」

「今日の目標は『巨大氷室ひむろ』の建設だ。ガルドは無限箱の石材と木材を使って、断熱性の高い頑丈な倉庫を建ててくれ。そこにこの魔核を設置する」

「ガハハ! 任せときな! 断熱構造ならドワーフの十八番だぜ!」


 ガルドがハンマーを担いで駆け出し、シルフィもサポートに回る。

 そして俺は、目をキラキラさせているルナに向き直った。


「ルナ。氷室ができたら、畑の野菜を全力で収穫して倉庫に運んでほしい」

「はいっ! アタシの足なら、あっという間に全部運んでみせます!」

「よし。それじゃあ、作業開始!」


 午前中のうちに、ガルドの手によって立派な石造りの倉庫が完成した。

 内部の台座に【絶対零度の氷結魔核】をセットすると、ひんやりとした冷気が空間を満たし、完璧な冷蔵・冷凍庫が出来上がった。


「すげえ冷気だ! これなら何年でも食いモンが保つぜ!」

「さあ、ルナ! 収穫だ!」


 俺の合図とともに、ルナが畑へと飛び出していく。

 彼女の動きはまさに獣そのものだった。目にも留まらぬ速さで畑を駆け回り、両手いっぱいに抱えたトマトや芋を次々と氷室へと運び込んでいく。

 その顔は、労働の辛さなど微塵も感じさせない、純粋な喜びに満ちていた。


 昼前には、氷室の棚が色鮮やかな野菜で埋め尽くされた。


「ふうっ、終わりましたぁ!」


 額の汗を拭いながら、ルナが誇らしげに胸を張る。


「お疲れ様、ルナ。素晴らしい働きぶりだ。これで村の食糧備蓄ストックは完璧になった」


 俺が冷たい湧き水を入れたコップを渡すと、ルナは一気に飲み干した。


「ぷはぁっ! 美味しい……! あ、あの、村長」

「ん?」

「こんなに美味しいご飯が毎日食べられて、お風呂にも入れて、ふかふかのベッドで寝られるなんて……アタシ、ここに来て本当に良かったです!」


 尻尾をちぎれんばかりに振るルナ。しかし、その耳が少しだけピクッと下がり、彼女は氷室に積まれた山盛りの野菜を見つめた。


「……あの、村長。これ、アタシたちだけで食べるんですか?」

「当面はそうなるな。腐ることはないから、ゆっくり消費していけばいい。どうかしたか?」

「えっと……アタシの一族のみんなにも、食べさせてあげたいなって……思っちゃって」


 ルナの言葉に、俺はハッとした。

 そうだ。彼女は悪徳商人に騙され、一族ごと住処を追われたと言っていた。

 彼女の家族や仲間たちは、今もどこかの荒野で飢えに苦しんでいるかもしれないのだ。


「ルナ。君の一族は、今どこにいるか分かるか?」

「は、はい。たぶん、南の岩山の方に身を隠しているはずです」

「そうか」


 俺はメモ帳を開き、新たなマイルストーンを書き込んだ。


「よし。氷室もできたことだし、近いうちに『出張』に行くか」

「えっ?」

「うちの村は人手が足りない。君の仲間たちがここで働いてくれるなら、願ってもないことだ。迎えに行こう、全員で」

「む、村長……っ!」


 ルナの目から、ボロボロと大粒の涙がこぼれ落ちた。

 彼女は俺の腰に勢いよく抱きつき、わんわんと泣き声を上げた。


「あ、ありがとうございます……! アタシ、一生ついていきますぅぅ!」


 腹ペコの狼を助けたら、一族ごと採用ヘッドハンティングできそうだ。

 村の人口が一気に増えれば、新たな課題も出てくるだろう。だが、今の俺たちなら、どんなトラブルも「ホワイトなタスク管理」で乗り越えられる気がした。


「よし、午後からは受け入れ態勢の準備(居住区の拡大)だ。今日も定時退社を目指すぞ!」


(残り358日。明日は何が出る?)

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