第65話:【65日目】イルミネーションと、冬の夜の祭典
勇者パーティーが丸一日の爆睡を経て、スッキリとした顔(憑き物が落ちたような爽やかな笑顔)で起きてきた65日目の夕方。
俺は日めくりカレンダーの「残り301日」の紙から引いた、大掛かりなシステムを広場に展開していた。
冬は夜が長い。長い夜を暗いまま過ごすのは、モチベーションの低下に繋がる。PMとして、暗い時期こそ「光」を見せる必要があるのだ。
『SSRアイテム【幻想空間・魔導イルミネーション&ドローンショー・キット】を獲得しました』
『※村中の木々や建物を魔法の光で装飾し、数百機の小型光球が夜空に立体的な光の芸術を描き出します』
「タクト様! 準備完了いたしました!」
シルフィが防寒コートに身を包み、嬉しそうに報告にきた。
「よし。村のみんな、そして勇者一行も外に出てきてくれ! ホワイト村・第一回ウィンター・イルミネーションの点灯だ!」
俺がメインスイッチの魔力回路をオンにした瞬間。
村の中心にある世界樹を中心に、広場の木々、タワーマンションの外壁、迎賓館のテラスなど、村のあらゆる場所に仕掛けられた極小の魔石が一斉に輝き出した。
青、金、純白の温かい光が、雪に反射して村全体を宝石箱のように照らし出す。
「うおおおおっ! すっげえええ! 昼間みたいに明るいぞ!」
「綺麗……! 雪が光って、星屑みたいですぅ!」
さらに、数百機の小型光球が夜空に飛び立ち、空中でフォーメーションを組む。
光の粒子が集まり、夜空に巨大な「光る世界樹」や「走る獣の群れ」、そして「大きく羽ばたく鳥」の立体映像(3Dホログラム)を次々と描き出していった。
「信じられない……。王都のどんな豪華な魔法祭でも、こんな奇跡のような光景は見たことがない……」
温かいココアの入ったマグカップを両手で包みながら、勇者アーサーが夜空を見上げて感嘆の声を漏らす。
彼の隣には、フリースを着込んだ四天王ザンギュラとグレイシアが立ち、一緒に光のアートを見上げている。
勇者と魔王軍幹部が、争うことなく同じ空を見上げて感動しているのだ。
「アーサー。これがうちの村の『日常』だ。命を削って戦うだけが世界を救う方法じゃない。誰もが笑顔で、理不尽に搾取されない環境(ホワイトな世界)を作ること。それが俺のプロジェクトだ」
「タクト村長……。俺、王国には帰りません。魔王軍が来たら、俺もこの村の防衛部隊として働きます。だから、どうか俺たちをこの村で雇ってください!」
勇者パーティーの四人が、深々と頭を下げた。
魔王を倒すはずの勇者までが、ホワイトな待遇とコタツの魅力に敗北し、転職を決意してしまった瞬間だった。
「歓迎するよ。まあ、まずはゆっくり休暇を満喫してくれ」
俺は笑って彼らの肩を叩いた。
魔王討伐(復活)まで、ついにあと300日。
村のインフラは最高潮に達し、人材も最強の布陣が揃いつつある。
幻想的なイルミネーションに照らされながら、ホワイト村の冬はどこよりも暖かく、活気に満ちていた。
(残り300日。明日は何が出る?)
【キャラクター紹介(65日目時点)】
タクト
元PMの村長。冬の寒さやメンタルヘルス対策にも余念がなく、次々とホワイトなレクリエーションを投入する。ついに勇者までヘッドハンティングしてしまった。
シルフィ
エルフの秘書。タクトとスキーをしたことで、さらに彼への忠誠心(と好意)を深めている。
グレイシア
元・魔王軍四天王『氷将』で、村のCFO(最高財務責任者)。コタツから一歩も出ずに完璧な財務管理を行い、社内報のコラムも担当する。
アーサー(New)
王国の伝説の勇者。極寒の旅とブラックな予算管理に心を折られ、遭難していたところを助けられる。村のホワイトな待遇と、すっかり丸くなった魔王軍幹部を見て「世界を救う」意味を失い、村への転職を決意。現在は長期有給休暇中。




