第61話:【61日目】一面の銀世界と、魔導スキーリゾート
61日目の朝、俺がタワーマンションの自室のカーテンを開けると、窓の外には見渡す限りの「銀世界」が広がっていた。
荒野を吹き抜ける風が、夜通し分厚い雪雲を運び込み、村全体をすっぽりと白い雪で覆い尽くしていたのだ。
「おお……見事な大雪だな」
村の主要な施設間には、すでに地下の地熱パイプ(クロエとガルドが共同開発したロードヒーティング)が稼働しており、歩道やバスのルートに雪は積もっていない。
だが、農地の外周や広場の端には、数十センチの雪が積もっている。
温かい防寒具に身を包んだ獣人たちが、初めて見る雪にはしゃいで雪合戦を始めている声が、窓越しにも聞こえてきた。
「冬の寒さ対策は完璧だが、日照時間が短く、外に出る機会が減ると『冬季うつ』のようなメンタルヘルス不調のリスクが高まる。冬には冬の『体を動かすレクリエーション』が必要だな」
俺は日めくりカレンダーの前に立ち、「残り305日」の紙をめくった。
光の粒子が収束し、現れたのは、色鮮やかなボードやスキー板のセットと、巨大な光る杭だった。
『SSRアイテム【魔導スノーリゾート展開キット&無限のウィンターギア】を獲得しました』
『※任意の斜面に打ち込むことで、雪質を最高のパウダースノーに保ち、自動で斜面の上へ運んでくれる魔法のリフト(動く雪道)を形成します。怪我防止の安全結界付き』
「キタ! これぞ冬のアクティビティの王様だ!」
俺は即座にガルドとルナを呼び出し、村の北側にあるなだらかな丘陵地帯にこのキットを展開した。
杭を打ち込むと、丘全体がキラキラと輝く極上のゲレンデへと変貌した。
「みんな! 今日は午後の業務を半休にして、冬のスポーツ大会とする!」
俺がインカムで呼びかけると、村中から歓声が上がった。
ウィンターギアはそれぞれの体格に合わせて自動でサイズ調整される優れものだ。獣人たちはスノーボードを、魔族たちはスキー板を足に装着し、ゲレンデへと飛び出していく。
「ガハハ! 俺様の重心の低さを舐めるなよ! 直滑降だぁぁっ!」
ガルドが弾丸のように雪山を滑り降りていく。
「にゃはは! この板、すごく滑ります! 風になったみたいですぅ!」
ルナたち獣人は、持ち前の運動神経であっという間にスノーボードのコツを掴み、華麗なターンを決めている。
「ふん、こんな板切れ二枚で……っ、うおぉぉっ!? 止まらん、止まらんぞ!」
一方、魔王軍随一の怪力を誇るCSO(最高防衛責任者)のザンギュラは、体重が重すぎるせいか猛スピードで斜面を転げ落ち、巨大な雪だるまと化していた。
「タクト様! 私、うまく滑れませんぅ……きゃっ」
「おっと。スキーはまず、ハの字で止まる練習からだ。俺が手を引いてやるから、ゆっくりな」
「は、はいっ! タクト様と雪山デート……っ!」
シルフィが顔を真っ赤にして俺の手を握りしめる。
そんな微笑ましい光景の横を、凄まじいスピードと完璧なフォームで滑り抜けていく影があった。
元Sランク冒険者にして見習い警備員の、フレイアだ。
「はははっ! 素晴らしい! 足元の重心移動だけでこれほど俊敏に動けるとは! これは足腰の鍛錬に最適だな!」
「フレイアさん、完全に修業モードに入ってるな……」
雪山を堪能し、冷え切った体は、大浴場(天然温泉)とサウナで芯まで温め直す。
冬の寒さを逆手にとった最高の福利厚生に、村人たちの笑顔は絶えなかった。
(残り304日。明日は何が出る?)




