第60話:【60日目】冬の始まりと、ホワイト村の交通網整備
グレイシアとその直属の部下(数十名の文官魔族たち)が村に加入し、村の人口は二百人に迫る規模となった。
彼女たちの仕事ぶりは素晴らしく、村の在庫管理や予算計画(外貨である金貨の運用など)は一瞬にして完璧に整理された。
しかし、人口が増え、居住区や農地、迎賓館などの施設が広大になったことで、新たな課題が浮上していた。
「タクト様。村の端にあるタワーマンションから、中心の村役場や食堂まで歩くのが、この寒さだと少し億劫ですね」
シルフィが、マフラーに顔を埋めながらポツリとこぼした。
確かに、広大な敷地を歩いて移動するのは、冬場はそれだけで体力を奪われる(通勤のストレス)。
PMとして、社員の通勤ストレスの軽減は重要なタスクだ。
「よし、村内の交通インフラを整備しよう」
60日目の朝。俺は「残り306日」の紙をめくった。
光の粒子が現れたのは、角ばった箱のような、複数人が乗れる車両だった。
『SSRアイテム【全自動・魔導巡回バス(ゴーレム牽引型)】を獲得しました』
『※設定したルートを正確無比な時間で巡回する魔法のバスです。車内は常に適温に保たれ、揺れは一切ありません。乗車定員四十名』
「キタ! これで村内の移動も完璧になる!」
先頭には、以前防衛用にドロップしたのと同じ【慈愛のゴーレム】の小型版のような運転手ゴーレムが座っている。
俺は即座にガルドの建築部隊に指示を出し、村の主要な施設(タワマン、食堂、大浴場、温室、村役場など)を巡る『バス停』を設置させた。
「お待たせしました。ホワイト村循環線、発車いたします」
ゴーレムの機械的な、しかしどこか温かみのあるアナウンスと共に、魔導バスが滑らかに走り出す。
車内には、農作業に向かう獣人たちや、事務仕事に向かう魔族たちが乗り込んでいる。
「いやぁ、これは便利ですね! 外の冷たい風を全く浴びずに農地まで行けます!」
「ガハハ! 座席もふかふかだし、足元から温かい風が出てるぞ!」
車内で嬉しそうに談笑する社員たち。
通勤電車の殺伐とした空気など微塵もない、和やかな「通勤風景」だ。
「タクト様。村の拡張工事と、冬のインフラ整備、すべてオンスケジュール(計画通り)で完了しました。これで、いつ本格的な雪が降っても大丈夫です」
隣の席に座るグレイシア(CFO)が、手元の書類を見ながら完璧な報告をしてくれる。
「ありがとう、グレイシア。君の事務処理能力のおかげで、俺の負担も劇的に減ったよ」
「ふん。当然だ。魔王軍の杜撰な管理に比べれば、この村の透明性の高いシステムは息をするように簡単だからな。……それに、コタツで仕事ができるのは最高だ」
少しだけ頬を緩ませる氷の四天王。
外の世界はこれから厳しい冬を迎えるが、このホワイト村の中だけは、常に暖かく、豊かで、笑顔に満ちている。
魔王討伐(復活)まで、あと305日。
俺の異世界プロジェクトは、いよいよ本格的な「国家規模」の運営フェーズへと突入しようとしていた。
(残り305日。明日は何が出る?)
【キャラクター紹介(60日目時点)】
タクト
元PMの村長(25歳)。ブラック企業で過労死したトラウマから、「世界一のホワイト村」を作ることに執念を燃やす。日めくりカレンダーから出るSSRアイテムと、持ち前のタスク管理能力で、あらゆる問題を「福利厚生」で解決する。
シルフィ
エルフの精霊術師。タクトの秘書兼万能魔法サポート。タクトを過剰に崇拝している。
ガルド
伝説のドワーフ。村の建築・インフラ部門リーダー。
ルナ
狼獣人。村の警備・探索部門のリーダー。
ガロ族長
ルナの父親。獣人たちを率いる農業部門のリーダー。
セシル
引退した元・聖女。村の総料理長。彼女の作るまかない飯は、あらゆる者の戦意を喪失させる美味さ。
マルコ
行商人。ホワイト村の特産品を外部で売り捌き、莫大な利益をもたらすビジネスパートナー。
シオン
ダークエルフの元暗殺者。村の最高情報責任者(CIO)。外部の情報収集やセキュリティを担う。
ザンギュラ
元・魔王軍四天王。村の最高防衛責任者(CSO)。ブラックな労働環境に嫌気がさして村に寝返った。体験入社を経てすっかり温泉の虜に。
フレイア
元・Sランク冒険者(剣聖)。過酷な任務から逃れ、村の「見習い警備員」として就職。サウナで完全に整っている。
グレイシア
元・魔王軍四天王『氷将』。村の最高財務責任者(CFO)。冷徹な事務方だったが、タクトが用意した「魔導コタツ」の魔力に敗北し、寝返る。コタツに入りながら村の予算を完璧に管理する。




