第49話:【49日目】Sランク冒険者の来訪と、魔王軍との遭遇
無限の培養器によって量産された「幻影の松茸」は、セシルの手によって極上の炊き込みご飯や炭火焼きへと姿を変え、村人たちの胃袋を大いに満たした。
そんな49日目の朝。
俺は日課となっている日めくりカレンダーの前に立ち、「残り317日」の紙をめくった。
『SSRアイテム【歓迎の魔導レッドカーペット】を獲得しました』
『※敷かれた上を歩く者の足の疲労を和らげ、同時に「殺気」や「敵意」を無意識のうちに浄化する魔法の絨毯です』
「よし。これで来客へのおもてなし(ホスピタリティ)がさらに向上するな。結界の入り口から迎賓館に向けて敷いておこう」
そして、昼下がり。
村の入り口の結界の外に、久しぶりの「外部からの来客」が到着した。
「タクト村長! お久しぶりです!」
荷馬車から手を振るのは、行商人のマルコだ。
しかし、今回は彼一人ではない。彼の背後には、鋭い目つきをした長身の女性が立っていた。
銀色の鎧に身を包み、腰には巨大な大剣を帯びている。ただ者ではないオーラ(プレッシャー)が漂っていた。
「マルコ、久しぶりだな。そちらの女性は?」
「ええ! 実は、前回の特産品(トマトと木彫り)が王都で大反響を呼びまして。この村の噂を聞きつけた『Sランク冒険者』のフレイア様が、どうしても護衛(視察)として同行したいと……」
「Sランク冒険者『剣聖』のフレイアだ。……ふん、ただの荒野に村があるなどと半信半疑だったが、どうやら強力な幻惑の結界が張られているようだな」
フレイアは鋭い視線で結界の奥を睨みつけた。
俺はシルフィに指示し、結界を一部解除して彼らを招き入れた。
「ようこそ、ホワイト村へ。視察なら歓迎するよ。どうぞ、このカーペットの上を」
結界を通り抜け、俺が今朝敷いたばかりの【魔導レッドカーペット】に足を踏み入れたフレイアは、一瞬「おや?」という顔をした。足の裏から伝わる極上の柔らかさが、彼女の長旅の疲労をふわりと吸い出していくのだ。
さらに、巨大なタワマンや、自動で水を撒く畑を見て彼女は息を呑んだ。
しかし次の瞬間、広場の奥でVR訓練からログアウトして談笑している「巨漢の集団」を見た彼女の顔色がサッと変わった。
「なっ……!? あれは、魔王軍四天王のザンギュラ!? なぜこんな所に魔族の軍勢が……!」
フレイアは瞬時に大剣を引き抜き、凄まじい闘気を放とうとした。
――が、足元のレッドカーペットの浄化作用により、本来の彼女が放つべき鋭い殺気は、春風のようにマイルドなものになってしまっていた。
突然の事態に、ザンギュラたちも「なんだァ!?」と身構える。
「待て、フレイアさん。剣を収めてくれ」
俺は二人の間に割って入り、メモ帳を掲げた。
「彼はうちの『最高防衛責任者(CSO)』だ。魔王軍はすでに退職して、今はうちの正式な社員(村人)として働いている」
「……は? 退職? 社員? お前は何を言っているんだ! 相手は人間を滅ぼす魔族だぞ!」
「うちの村は種族不問だ。人間もエルフもドワーフも魔族も、同じ条件で働く仲間だ。彼らは村のルール(定時退社と週休二日)を守る立派な労働者だよ」
俺の言葉に、ザンギュラが後ろから頷いた。
「おう。俺たちはもう人間を襲う気はねえ。ここの温泉と飯を知っちまったら、魔王様の下には戻れねえからな。お前も、温泉入ってくか?」
レッドカーペットによって殺気を削がれ、さらに魔王軍の凶悪な幹部から「温泉を勧められる」という予想外すぎる事態の連続に、人類最強の剣聖は完全にフリーズしてしまった。
(残り316日。明日は何が出る?)




