第48話:【48日目】秋の味覚と、魔王城のブラック会議
村がVRゲームとマッサージで盛り上がっていた頃。
遥か北に位置する「魔王城(仮)」の会議室では、重苦しい空気が漂っていた。
「……南へ向かったザンギュラからの定時連絡が途絶えて、すでに一週間が経過している」
円卓の奥で、骸骨の姿をした魔法使い――四天王の一人であるリッチ・ネクロディアが、低い声で告げた。
他の四天王たちも、険しい表情で腕を組んでいる。
「あの脳筋が、人間の軍勢ごときにやられるわけがない。おそらく、通信機(魔石)を壊したまま暴れ回っているのだろう」
「いや、あるいは……我らの劣悪な労働環境に嫌気がさして、逃亡した(バックレた)という線もあるのではないか?」
「馬鹿な。魔族の誇りを捨てて逃げるなど……しかし、先月の給与(魔石)の遅配には、あいつもかなり怒っていたからな……」
ブラック企業特有の「社員の失踪」に対する疑心暗鬼が、魔王軍の幹部たちを苛んでいた。
魔王の復活まで一年を切っているというのに、彼らの兵站と人員管理はすでに崩壊の危機に瀕しているのだった。
――一方、その頃のホワイト村。
「村長ーっ! 見てください! 森でパトロール中に、こんなに大きなキノコを見つけました!」
ルナが尻尾を振りながら、両手で抱えるほどの巨大な茶色いキノコを村役場に持ってきた。
「おお、立派なキノコだな。だが、野生のキノコは毒が怖いぞ」
「はい! なので、クロエさんに解析(成分分析)をお願いしようかと!」
俺たちはCTOのクロエの研究所(タワマンの一室)へと向かった。
クロエは魔導顕微鏡から顔を上げると、キノコを見て目を輝かせた。
「わあ、これは【幻影の松茸】だね! 毒はないし、焼くととんでもなくいい香りがする高級食材だよ! でも、自然界じゃ滅多に見つからないんだ」
「なるほど。なら、増やそう」
俺は今朝カレンダーから引いたばかりのアイテムを取り出した。
『SSRアイテム【無限の魔導菌床培養器】を獲得しました』
『※あらゆる菌類・キノコを、最適な湿度と魔力で数時間のうちに大量増殖させる培養システムです』
「これにその松茸をセットしてくれ。明日の朝には、村人全員で秋の味覚が楽しめるはずだ」
「村長、あんた本当に何でも出せるんだね……! よし、任せなさい!」
俺たちの村では、食料不足の不安も、労働環境の不満も存在しない。
ブラックな魔王軍との格差は、日を追うごとに広がっていくばかりだった。
(残り317日。明日は何が出る?)




