第46話:【46日目】CSOの悩みと、魔導VRシミュレーター
魔王軍幹部であったザンギュラとその部下百名が村に加入し、村の防衛力は世界最高レベルに達した。
だが、CSO(最高防衛責任者)に就任したザンギュラから、さっそく「現場の課題」がエスカレーション(報告)されてきた。
「タクト村長。待遇には何の不満もねえ。飯は美味いし、タワマンのベッドは最高だ。だが……部下たちの『モチベーションの維持』が難しい」
「モチベーション? 平和すぎて退屈しているのか?」
「ああ。魔族ってのは闘争本能が強い。実戦がないから、広場で訓練をしてるんだが……怪我をさせないように寸止めばかりじゃ、逆にストレスが溜まるらしくてな」
なるほど。安全を確保しつつ、彼らの闘争本能を満たし、かつ訓練としての効果も出す。
前世の企業で言うところの「安全な環境での実地研修」が必要だ。
「よし、今日のカレンダーに頼んでみよう」
俺は日めくりカレンダーの前に立ち、「残り324日」の紙をめくった。
光の粒子が収束し、現れたのは、黒い流線型のヘルメット(ヘッドマウントディスプレイ)が数十個入ったコンテナだった。
『SSRアイテム【魔導VR(仮想現実)シミュレーター・セット】を獲得しました』
『※ヘルメットを被ることで、意識を共有の仮想空間にダイブさせます。痛みはありますが実際の肉体は無傷で、あらゆる地形・敵を設定した極限の戦闘訓練が可能です』
「……キタ! 究極のeスポーツ(戦闘訓練)デバイス!」
俺は即座にザンギュラと部下たちを広場に集め、ヘルメットを配布した。
「いいか、これを被れば『絶対に死なないし怪我もしない空間』で、好きなだけ全力で戦える。武器も魔法も使い放題だ。まずは試しに、俺が設定した仮想空間で、ザンギュラの部隊とガルドの建築部隊で模擬戦(チーム戦)をやってみてくれ」
「おおっ! 全力でぶつかり合っていいのか!」
「ガハハ! ドワーフの怪力、見せてやるぜ!」
広場に敷いたレジャーシートの上に仰向けに寝転がり、両陣営がヘルメットを被る。
俺が管理者権限でスイッチを入れると、彼らの意識は仮想空間へとダイブした。
空中に浮かび上がったモニターには、荒野を模したフィールドで、魔族とドワーフ・獣人たちが笑顔で(そして容赦なく)武器を交え、魔法を撃ち合う白熱の映像が映し出されていた。
「これなら、怪我人(労災)ゼロで完璧な実戦訓練ができるな」
平和な村における、安全で最高にエキサイティングな戦闘シミュレーション。
ホワイト村の防衛力は、遊びながらさらに研ぎ澄まされていく。
(残り319日。明日は何が出る?)




