第45話:【45日目】魔導タワマンと、秋の足音
ザンギュラと魔王軍百名が正規採用された翌朝。
俺たちの前には、物理的な「スペースの問題」が立ちはだかっていた。
「村長! 新入社員(魔族)たちの仮眠用テントが広場を埋め尽くしてます! これじゃトラクターが通れません!」
「ああ、分かっている。今日中に彼らの住居を手配する」
獣人たち三十人を受け入れた時も大変だったが、今回はその三倍以上、しかもザンギュラのように巨体の者も多い。
平屋のユニットハウスを百棟も並べれば、せっかくの農地や景観を圧迫してしまう。土地の有効活用(高層化)が必要だ。
「頼むぞ、カレンダー。今の俺に必要なのは、省スペースで大容量の居住空間だ」
俺は日めくりカレンダーの「残り321日」の紙をめくった。
光の粒子が収束し、現れたのは、銀色に輝く細長い杭のような魔導具だった。
『SSRアイテム【魔導タワーマンション建設キット】を獲得しました』
『※地面に打ち込んで魔力を注ぐだけで、耐震・防音・空調完備の高層集合住宅を一瞬で建造します。百世帯収容可能』
「……ついにマンションまで生えてくるようになったか」
俺は苦笑しながら、ガルドとシルフィを呼んだ。
「ガルド、居住区の奥のスペースにこの杭を打ち込んでくれ。シルフィ、魔力注入だ」
「おおっ! なんだか分からねえが、でっかいのが建つんだな!」
「はいっ! いきます、【魔力充填】!」
ガルドがハンマーで杭を打ち込み、シルフィが魔力を注ぐと、地面がわずかに揺れ、ズゴゴゴゴッと巨大な建造物が天に向かって伸びていった。
外壁は周囲の景観に馴染むシックなレンガ調。十五階建ての立派なタワーマンションが、荒野の空にそびえ立った。
「な、なんだこの高い塔は……!?」
「我々がここに住むのですか!?」
魔族たちがぽかんと口を開けて見上げている。
俺はザンギュラに、マンションのマスターキー(魔石)を渡した。
「これが君たちの新しい寮だ。防音も完璧だから、夜勤のシフト明けでも静かに眠れるぞ。部屋割りはCSOであるあんたに任せる」
「……タクト村長。あんた、本当に神様なんじゃねえのか? こんな巨大な城を、一瞬で……」
「俺はただのPMだ。リソースを最適化してるだけさ」
魔族たちは歓声を上げて新しいマンションへと引っ越していった。
エレベーター(魔力昇降機)のギミックに驚く声が外まで聞こえてくる。
「さて、これで受け入れ態勢も完了したな」
俺が空を見上げると、夏の刺すような日差しは少し和らぎ、乾いた風の中にほんのりと涼しさが混じり始めているのを感じた。
季節は巡る。
過酷な夏を乗り越え、村はいよいよ実りの秋を迎えようとしていた。
「タクト様! ルナさんたちが森のパトロールから戻ってきました。美味しそうなキノコをたくさん見つけたそうですよ!」
「キノコか。秋の味覚だな。セシルに炊き込みご飯をお願いしよう」
かつては殺し合い、いがみ合っていた種族たちが、同じ村で一つのタワーマンションに住み、一緒に美味しいご飯を食べる。
魔王復活まであと323日。
俺のホワイト村経営は、いよいよ磐石のフェーズへと突入していた。
(残り320日。明日は何が出る?)




