第42話:【42日目】ザンギュラの体験入社。魔石カレーと極上温泉
四天王ザンギュラとその部下百名が、「敵地視察」という名目で村に足を踏み入れた42日目。
実質的な「体験入社」の始まりである。
「……ちっ。罠の気配があれば、内側からお前らの首を刎ねてやるからな!」
警戒心剥き出しで広場を歩く彼らを、俺はまず「社員食堂」へと案内した。
その前に、今朝「残り323日」の紙から引いたばかりのアイテムを取り出す。
『SSRアイテム【極上・おもてなし魔導作務衣(×100)】を獲得しました』
『※着用者の体型に自動でフィットし、極限の肌触りと通気性でストレスを軽減するリラックスウェアです』
「ザンギュラ。鎧のままじゃ肩が凝るだろう。まずはこれに着替えてくれ」
「ふん! こんな布切れ……って、なんだこの異常な肌触りは!? 体が、軽い……!」
作務衣に着替えた魔族たちは、あまりの着心地の良さにすでに戸惑いの表情を浮かべていた。
そこへ、総料理長セシルが腕を振るった本日のまかないが運ばれてくる。
「皆様、長旅お疲れ様でした! 本日のメニューは『世界樹野菜と魔猪の特製カレー』です!」
元・聖女であるセシルが魔族に料理を振る舞うという、外の世界ならあり得ない光景。
スパイシーで食欲をそそる香りに、魔族たちは警戒心を完全に投げ捨ててカレーにがっついた。
「うおおおおっ! なんだこのドロドロした食い物は! 美味すぎる!」
「辛い! だが美味い! 止まらねえ!」
「ザンギュラ様も食べてみてください! 魔王城のヘドロみたいな飯とは天と地ですよ!」
部下に促され、ザンギュラも恐る恐るカレーを口に運んだ。
その瞬間、彼の三ツ白眼が見開かれた。
「……っ!! (な、なんだこの複雑なスパイスの絡み合いは! 肉の旨味が極限まで引き出されていやがる! 美味い、美味すぎる!)」
無言で二杯目をおかわりするザンギュラを見て、俺は勝利を確信した。
食事が終わると、次は「大浴場」での入浴タイムだ。
砂埃にまみれていた魔族たちは、霊泉の効能に触れた瞬間、次々と昇天しかけていた。
「だ、騙されねえぞ……! 俺は魔王軍の幹部だ! こんな温泉くらいで、骨抜きにされてたまるか……っ!」
ザンギュラは湯船の中で必死に険しい顔を作っていたが、その声はひどく間延びしていた。
体験入社の一日目は、圧倒的なホワイト待遇を見せつけることで幕を閉じた。
(残り322日。明日は何が出る?)




