第41話:【41日目】ザンギュラ襲来と、魔導プレゼンボード
翌日。
村の北側の荒野に、四天王ザンギュラ率いる魔王軍の軍勢が到着した。
「……おい。ここが例の『光の爆発』が上がった場所か? ただの村じゃねえか」
ザンギュラは肩に巨大な斧を担いだまま、不審そうに村を見回した。
昨日の【鎮静のアロマ】の効果が出ているのか、彼の目は血走っておらず、部下の魔族たちもどこかぽやーっとした顔をしている。
「ザンギュラ様! あそこを見てください! 見たこともない美味そうな野菜が山のように実っています! それに、あちらの建物から漂う美味そうな匂いは……っ!」
「おいおい、腹の虫が鳴りっぱなしだぜ。ちょうどいい、あの村を制圧して、食料も拠点も根こそぎいただくぞ! 突撃ィィッ!」
ザンギュラが号令をかけ、百体の魔族が一斉に村へ向かって駆け出した。
――しかし。
ガィィィンッ!!
「ぐほぁっ!?」
「いっでえええ!?」
村の境界線で、魔族たちは見えない壁(結界)に激突し、次々と鼻を打って転がった。
「な、なんだこれは!? 強力な結界魔法……!? ええい、俺様の斧で粉砕してやる!」
ザンギュラが渾身の力で斧を振り下ろすが、結界は火花一つ散らさずにその一撃を完全に無効化した。ザンギュラは手が痺れて斧を落としそうになっている。
「……ようこそ、ホワイト村へ。遠いところご苦労様」
結界の内側から、俺はインカムのスピーカー機能を使って声をかけた。
ザンギュラがギロリと俺を睨む。
「てめえがこの村の長か! 小賢しい結界を張りやがって! 我ら魔王軍に逆らう気か!」
「逆らう気はないさ。むしろ、君たちに『提案』があって待っていたんだ」
俺は今朝カレンダーから引いたアイテムを起動した。
『SSRアイテム【真実を映す魔導プレゼンボード】を獲得しました』
『※空中に巨大な画面を投影し、見せたい情報(グラフ、図解、映像)を相手の脳に直接、極めて分かりやすく伝達する魔法のホワイトボードです』
結界の外の上空に、巨大な光のスクリーンが出現した。
そこに映し出されたのは、「ホワイト村の充実した労働環境」と「魔王軍の現在の待遇」を比較する、見事な棒グラフと福利厚生の一覧表だった。
「な、なんだこの空中の絵は……!?」
「ザンギュラ殿。あんたたち、魔王復活のための拠点作りと兵站管理で、休みなく働かされているそうじゃないか。給料も出ず、飯はまずい携帯食料のみ。ちがうか?」
「うぐっ……! な、なぜそれを!?」
「うちの村で『魔王復活までの待機(就職)』をしないか? という提案だ」
俺はプレゼンボードの画面を切り替え、大浴場の映像と、セシルが作った料理の映像をデカデカと映し出した。
「一日8時間労働。残業なし、週休二日。世界樹の野菜を使った三食のまかないに、天然温泉付きだ。魔王が復活するまで、うちの防衛部隊として働きながら英気を養うのが、プロジェクトの全体最適だと思わないか?」
プレゼンボードの力により、その圧倒的な「魅力」が魔族たちの脳に直接叩き込まれる。
魔王軍の兵士たちは、すでにヨダレを垂らして完全に戦意を喪失していた。
「ザ、ザンギュラ様……俺たち、もうこの村で働きたいです……」
「馬鹿野郎! 我ら魔族の誇りを忘れたか! こんな甘言に乗る俺様だと――」
ザンギュラの怒鳴り声は、彼自身の盛大な腹の音によってかき消された。
(残り324日。明日は何が出る?)




