第40話:【40日目】魔王軍の接近と、鎮静のアロマ
夏祭りの余韻も冷めやらぬ36日目の朝。
村役場(PMO)で日課のコーヒーを飲んでいると、CIO(最高情報責任者)のシオンが血相を変えて飛び込んできた。
「タクト様! 緊急事態です! 北の山脈方面に放っていた【魔導監視ドローン】が、大規模な軍勢を捉えました!」
「軍勢? 辺境伯爵の残党か?」
「いえ、違います。あれは……魔王軍です!」
シオンが空中に投影したモニターには、土埃を上げて進軍する異形の軍団が映し出されていた。
数は約百。先頭を歩くのは、身の丈三メートルはある巨漢の魔族だ。
「あの巨漢は、魔王直属の幹部……四天王のザンギュラです! 脳筋で好戦的、通った後は草木も残らないと言われる最悪の破壊者! タクト様、ただちに村の防衛レベルを最大に引き上げましょう!」
「四天王か。予定よりだいぶ早い来客だな」
魔王の復活までまだ一年近くあるというのに、幹部が直々にやってくるとは。
俺は冷静にモニターを観察した。彼らは完全に武装しており、明確な「敵意」を持っている。
このままでは村の【絶対平和の聖域結界石】に阻まれて中には入れないだろうが、外で百人規模の軍勢に暴れられると、マルコたち商人の出入りができなくなり、物流が完全にストップしてしまう。
「撃退……いや、交渉で解決しよう」
「交渉!? 相手は血に飢えた魔族ですよ!?」
「まあ見ててくれ。今日のドロップが、ちょうど良い『場作り』に役立ちそうだからな」
俺は今朝『日めくりカレンダー』から引いたばかりのアイテムをテーブルに置いた。
『SSRアイテム【鎮静の魔導アロマディフューザー】を獲得しました』
『※稼働させると、半径数キロの空間に「極上のリラックス効果」と「戦意喪失」をもたらす不可視の香りを散布します』
「シオン。これをドローンに括り付けて、彼らの進軍ルートの風上に設置してきてくれ。スイッチを入れておけば、村に到着する頃には随分と『話しやすい状態』になっているはずだ」
「は、はあ……。アロマで魔王軍を止めるなんて聞いたことがありませんが……やってみます」
武力衝突は最終手段であり、リソースの無駄遣いだ。
相手がどれだけ好戦的であろうと、まずはテーブルにつかせる。
それが、ホワイト村のPMとしての正しい対応である。
(残り325日。明日は何が出る?)




