第38話:【38日目】ホワイト村・第一回夏祭りと、屋台グルメ
夏祭りの開催が宣言された翌日。
村はお祭り騒ぎの準備で朝から熱気に包まれていた。
俺がカレンダーから引いた今日のドロップは、まさにこの日のためのようなアイテムだった。
『SSRアイテム【全自動・魔導屋台セット&無限の屋台飯素材】を獲得しました』
『※焼きそば、たこ焼き、綿菓子など、お祭りに欠かせない絶品グルメを自動で調理・提供する屋台のセットです』
「完璧すぎる。これでセシルの負担を増やさずに、全員に飯を行き渡らせることができるな」
広場には提灯(クロエが魔石で作った)が飾られ、ガルドと元傭兵たちが協力して見事な櫓を組み上げている。
ルナたち獣人は、マルコから買っておいた色鮮やかな布を使い、裁縫スキルを活かして「浴衣」のような衣装を作り上げていた。
そして、日が落ちて涼しい風が吹き始めた頃。
櫓の上の太鼓(これもガルド作)がドンッと鳴り響き、第一回ホワイト村夏祭りが開幕した。
「タクト様! お待たせいたしましたっ!」
振り返ると、そこには息を呑むような光景があった。
シルフィが、白地に薄紫の朝顔が描かれた浴衣を着て、少し恥ずかしそうに立っていたのだ。金糸のような髪はアップにまとめられ、うなじが色っぽい。
その後ろには、元気なひまわり柄の浴衣を着たルナや、シックな黒い浴衣を着こなしたシオンもいる。
「おお……みんな、すごく似合ってるよ。最高だ」
「えへへ……タクト様にそう言っていただけると、徹夜で縫った甲斐がありました!」
「こらルナ、徹夜は禁止だと言っただろ」
俺が苦笑いしながら注意すると、ルナはペロッと舌を出した。
「さあさあ、村長! まずは食いモンだぜ!」
ガルドに引っ張られ、俺たちは【魔導屋台】が並ぶエリアへ向かった。
屋台からは、香ばしいソースの匂いが漂っている。
鉄板の上では、見えざる手(魔法)が太麺の焼きそばを豪快に炒め、隣ではまん丸のたこ焼きがクルクルと自動でひっくり返されていた。
「なんだこの『やきそば』って料理は! 麺に絡んだこの黒い汁、魔薬か何かか!? 美味すぎて箸が止まらねえ!」
「あむっ、はふっ! この丸いヤツ(たこ焼き)、中から熱いのがトロッと……美味しいぃぃ!」
滞在中の冒険者たちや、昨日まで敵だったはずの傭兵たちも、肩を組んで屋台飯を貪り、エール(マルコが持ち込んだ酒)を飲み交わしている。
そこには種族も、身分も、過去の因縁もない。ただ「同じ村の仲間」として、最高の時間を共有しているだけだ。
「……タクト様。こんなに美しい光景、私は初めて見ました」
りんご飴を手にしたシオンが、ぽつりと呟いた。
「辺境伯爵の領地では、貧富の差が激しく、祭りの日でも笑っているのは貴族だけでした。でもここは……全員が、心の底から笑っています」
「それが、プロジェクトを成功させる一番の原動力だからな」
俺はラムネ(これも屋台から出た)の瓶を傾けながら、夜空を見上げた。
「そろそろ、メインイベントの時間だ」
俺がインカムで合図を送ると、広場の中心に設置された【魔導打ち上げ花火セット】から、ヒュルルルルという音と共に光の玉が打ち上がった。
そして、上空で――ドォォォンッ!
夜空に、赤、青、金色の巨大な光の華が咲き誇った。
村中から、「おおおおおっ!!」という大歓声が湧き上がる。
連続して打ち上がる極彩色の花火。
火の粉が落ちることもなく、煙も自動で浄化されるため、夜空はどこまでも澄み切っている。
俺の隣で、シルフィが花火の光に顔を照らされながら、そっと俺の袖を掴んだ。
「タクト様。私……この村に来て、タクト様に出会えて、本当に幸せです」
「俺もだよ、シルフィ。この村の仲間に出会えてよかった」
過労死した前世からは想像もつかない、豊かで温かい時間。
俺はPMとして、このホワイト村の平和を何があっても守り抜くと、花火を見上げながら密かに決意を固めたのだった。
(残り327日。明日は何が出る?)




