第36話:【36日目】捕虜の労働環境改善と、最初の面接
落とし穴でぐっすりと熟睡した傭兵たちは、ゴーレムに抱えられたまま村の中へと連行され、翌朝、広場で目を覚ました。
「……はっ!? 俺たちは一体……!?」
「おお、目が覚めたか。よく眠れたようだな」
俺が声をかけると、傭兵のリーダーらしき傷顔の男が、慌てて剣を探した。だが、武器はすでにシオンによってすべて没収されている。
「くそっ、殺せ! 辺境伯爵様の私兵として、誇り高く死んでやる!」
「物騒なことを言うな。俺はお前たちを殺す気はない。むしろ、スカウト(採用)したいと思っている」
俺は今朝のルーティンで「残り329日」の紙から引いたアイテムを横に置いた。
対象者の適性と本音を可視化する『SSRアイテム【真実の魔導面接ブース】』だ。これを通して見れば、彼らが根っからの悪人ではなく、単に生きるために金で雇われただけの労働者であることが分かる。
「お前たち、辺境伯爵からボーナスとして金貨百枚と言われていたそうだが、基本給はいくらだ? 怪我をした時の労災や、休日はあるのか?」
俺の問いに、傷顔の男は顔をしかめた。
「きほんきゅう……? そんなもんあるわけねえだろ。俺たちは使い捨ての駒だ。怪我をしたら捨てられるし、休みなんざ雨が降った日くらいだ!」
「そうか。お前たちは今日から、このホワイト村の『研修生(見習い社員)』だ」
俺は彼らに向かって、高らかに宣言した。
「うちの村では、労働は1日8時間、週休二日。怪我をしたら絶対安静で、世界樹の野菜を使った三食のまかないと、天然温泉が無料でついてくる。もちろん、真面目に働けば給料(銀貨)も出す」
「な、なんだって……?」
「とりあえず、今日はもう夕方だ。そこにある大浴場に入って、食堂でセシルの飯を食ってこい。逃げたければ止めないが……まあ、一度体験してみることだな」
数時間後。
温泉で全身の垢と疲れを落とし、セシルが作った「世界樹野菜の特大ハンバーグ」を腹一杯食べた五十人の傭兵たちは、食堂の床に突っ伏して号泣していた。
「うおおおおんっ! 美味すぎるぅぅぅ! 俺たちの今までの人生はなんだったんだぁぁ!」
「あんな冷たい領主のために死ぬなんて馬鹿らしい! 俺、この村で一生土を耕して生きていきますぅぅ!」
ブラックな環境で搾取されてきた者ほど、ホワイトな待遇の味を知るともう二度と元には戻れないのだ。
こうして、労働力がさらに五十人増え、村の拡張工事は一気に加速することになった。
(残り328日。明日は何が出る?)




