第34話:【34日目】決戦前夜。完璧なトラップ配置とメンタルケア
敵の傭兵団が到着する前日。
村は「決戦前夜」という言葉が全く似合わないほど、のんびりとした空気に包まれていた。
「タクト様、今日のカレンダーのドロップ品です。これで皆様の緊張をほぐせますね!」
シルフィが笑顔で持ってきたのは、今朝「残り331日」の紙から現れたアイテムだった。
『SSRアイテム【魔導シアター付き・極上ポップコーンメーカー】を獲得しました』
『※出来立ての温かいポップコーンを無限に生成し、食べる者の心を芯からリラックスさせる魔法の娯楽装置です』
「ああ。戦いの前だからといって、ピリピリする必要はない。メンタルケアもPMの重要な仕事だからな」
広場に出ると、すでにガルドとルナたちの手によって「落とし穴トラップ」の構築は完璧に完了していた。
クロエの催眠クーラーもテスト稼働を終え、十体の【慈愛の防衛ゴーレム】たちが、穴の底で大人しく待機している。
「村長ーっ! 罠の準備、バッチリです!」
「ガハハ! フカフカの干し草を山ほど敷き詰めたからな。落ちてもかすり傷一つ負わねえぜ!」
作業を終えた獣人たちやガルドに、俺は労いの言葉をかけながら、出来立てのキャラメルポップコーンを配って回った。
「みんな、お疲れ様。明日は敵が来るが、俺たちはこの広場からモニター越しに見守るだけだ。誰も危険な目には遭わせない」
「はいっ! アタシたち、村長を信じてますから!」
ポップコーンを頬張るルナの尻尾は、不安など微塵も感じさせないほど元気に揺れている。
普通、戦争の前日といえば、遺書を書いたり恐怖で眠れなかったりするものだ。しかし、このホワイト村では、全員が「明日はお休みモードで映画鑑賞(迎撃戦)だ」くらいにしか思っていない。
「シオン。敵の進軍スピードはどうだ?」
「予定通りです。明日の昼過ぎには、キルゾーン(罠のエリア)に到達します。……それにしても、これほど悲壮感のない防衛戦は初めてです」
「無理な突撃や悲壮感は、計画破綻(プロジェクト失敗)の証拠だからな」
俺はポップコーンを口に放り込みながら、夕陽に染まる荒野を見つめた。
準備はすべて整った。あとは、明日彼らが罠にはまるのを待つだけだ。
(残り330日。明日は何が出る?)




