第30話:【30日目】魔導3Dプリンターと、止まらない外貨獲得
ホワイト村の快適さに骨抜きにされた冒険者たちは、予定の滞在日数をとっくに過ぎても「もう少し、あと一日だけ……」と滞在を延ばし続けていた。
しかし、彼らも冒険者ギルドに籍を置く身。いつまでも帰らないわけにはいかない。
「村長……俺たち、明日には王都へ帰ります。これ以上ここにいたら、剣の振り方を忘れちまいそうだ……」
「そうか。気をつけてな」
「……でも、王都の連中にこの村の話をしても、絶対に信じてもらえないと思うんです。何か、この村に来たという『証(お土産)』を持って帰りたいんですが……」
彼らの要望はもっともだ。
観光地において、「お土産」は口コミを広げる最強のマーケティングツールである。
だが、ガルドの手彫りの木工品は一日に作れる数が限られているし、ジェラートは溶けてしまう。大量生産できる「特産品」のラインが必要だった。
「よし、今日のドロップの出番だな」
俺は今朝カレンダーから引いた『残り336日』のSSRアイテムを起動した。
『SSRアイテム【全自動・魔導複製機(3Dプリンター)】を獲得しました』
『※元となるアイテムと素材をセットするだけで、寸分違わぬ精巧な複製を瞬時に大量生産します』
「クロエ、ガルド! 出番だ!」
俺はCTOと建築責任者を村役場に招集した。
「ガルド、お前が持てる最高の技術で、『村の風景を彫り込んだ木彫りのメダル』を一枚作ってくれ」
「おう! そんなもん五分で仕上げてやらあ!」
「クロエ。ガルドが作ったメダルをマスターデータ(原型)にして、この複製機で無限箱の木材を使って量産ラインを構築してくれ」
「まかせてよ! この複製機の魔力回路、解析は済んでるからね! 1時間に百個は量産できるよ!」
ガルドが魂を込めて彫った見事な木彫りメダルを複製機にセットすると、ウィィィンという静かな音と共に、全く同じ品質のメダルが次々と吐き出されてきた。
「おおおっ! 俺様の作品が、一瞬で増えていくぞ!」
「すごいすごい! 魔力による物質構成の自動化、完璧な精度だ!」
さらに、俺はセシルに頼んで「日持ちする世界樹のドライフルーツ」と「黄金の蜂蜜の小瓶」をパッケージングさせた。
これらのお土産セットを、出発の朝、冒険者たちに提示した。
「ホワイト村特製・お土産セットだ。木彫りメダル、ドライフルーツ、蜂蜜が入って、銀貨三枚でどうだ」
「買います!! あるだけ全部買わせてください!!」
冒険者たちは財布の中の銀貨と金貨をすべてはたき、両手いっぱいにお土産を抱えて、ホクホク顔で王都へと帰っていった。
「タクト様! 彼らが落としていったお金、とんでもない額になってますよ!」
シルフィが売上金(ギルド送金の手形含む)を計算しながら目を回している。
村のランニングコストはカレンダーのおかげで実質ゼロ。つまり、売上=純利益である。
観光による外貨獲得の仕組みが確立した。
この莫大な資金があれば、カレンダーに頼らずとも外の世界から好きなものを「輸入」できる。
ホワイト村は、もはや一つの「経済圏」として自立し始めていた。
(残り335日。明日は何が出る?)




