第27話:【27日目】魔導製氷機と、至福のひんやりジェラート
迎賓館が建ち、マルコたち商人との独占取引が成立した翌日。
村の季節は、はっきりと「夏」へ移行しつつあった。
「あ、あついですぅ……毛皮が、毛皮が蒸れますぅ……」
「がはは、獣人の嬢ちゃんたちにはきつい季節だな。俺様は汗をかいてハンマーを振るうのも好きだがな!」
農作業やパトロールから戻ってきたルナたち獣人は、舌を出してぐったりとしている。
荒野の夏は日差しが強く、乾燥しているとはいえ気温は三十度を優に超えていた。いくら労働時間が8時間とはいえ、この環境下での肉体労働は熱中症のリスク(労災)を跳ね上げる。
「これは、早急に冷却のソリューションが必要だな」
俺は日めくりカレンダーの前に立った。
現在の表示は「残り339日」。夏の暑さを吹き飛ばす、最高の福利厚生を頼むぞ。
ペリッ。
光の粒子と共に現れたのは、銀色に輝くスタイリッシュな箱型の機械だった。
『SSRアイテム【全自動・魔導製氷機&ジェラートメーカー】を獲得しました』
『※空気中の水分と魔力を凍らせ、不純物ゼロの純氷を無限に生成します。果物や乳製品を投入すれば、極上の氷菓を自動で練り上げます』
「キタ! 夏の最強インフラ!」
俺は即座に機械を食堂へ運び込み、セシルとクロエを呼んだ。
「すごい! 内部の冷却魔法陣が、信じられない効率で熱を奪っているよ! このコンプレッサーの構造、どうなってるのさ!」
CTOのクロエは早速機械に張り付いて分解の衝動と戦っている。
「セシル。氷室にある世界樹の果実と、養蜂箱の蜂蜜を使って、この機械で『ジェラート』を作ってみてくれないか?」
「じぇらーと、ですか? 冷たいお菓子ですね! はい、お任せください!」
数十分後。
午後三時の「おやつタイム」のチャイムが鳴り、暑さでへばっていた獣人たちが食堂に集まってきた。
「みんな、お疲れ様。今日は『夏の特別ボーナス』の支給日だ」
俺が合図すると、セシルが木製のカップに入った色鮮やかなジェラートを配って回った。
ルナがスプーンで一口すくい、口に入れた瞬間――彼女の耳と尻尾が、バツンッと直立した。
「ひゃあぁぁぁっ!? つ、冷たくて、甘ぁぁぁい!!」
その声を皮切りに、食堂中で絶叫が上がった。
「なんだこれ! 雪みたいに冷たいのに、果物の味が爆発してるぞ!」
「あづいぃ……って思ってたのに、一口で生き返りましたぁぁ!」
「美味い! 美味すぎる! 俺様の火照った体に染み渡るぜ!」
世界樹の果実の濃厚な果汁と、黄金の蜂蜜の甘み。それをカレンダー謹製のSSRジェラートメーカーが、空気を含ませながら極限まで滑らかに凍らせたのだ。美味くないはずがない。
「タクト様、あーん、してくださいっ」
「だから自分で食べるってば、シルフィ」
俺も特製トマトジェラートを口に運ぶ。
ひんやりとした冷たさが食道を通り抜け、一気に体温が下がるのを感じた。最高だ。
「よし、今年の夏はこれで乗り切れるな」
熱中症対策という名目で導入された極上のスイーツは、村人たちのモチベーションをさらに爆上げすることになった。
(残り338日。明日は何が出る?)




