第25話:【25日目】魔導養蜂箱と、至福の「おやつタイム」
村の生活インフラは、外の世界の王侯貴族ですら嫉妬するレベルに達していた。
だが、総料理長のセシルから、一つだけ「欠乏しているもの」の報告が上がっていた。
『村長様。世界樹のお野菜のおかげで料理は完璧なのですが……どうしても「甘味(砂糖)」が足りません。皆さんに、甘いお菓子を作ってあげたいのですが』
疲れた脳と体に一番効くのは、良質な糖分だ。
前世でも、午後のデスクワークの合間に食べるチョコレート一本が、どれだけ救いになったことか。
「よし、今日は甘味のサプライチェーンを構築しよう」
俺はカレンダーの前に立ち、「残り341日」の紙をめくった。
現れたのは、木製の小さな家のような箱と、その周囲を飛び回る金色の小さな虫たちだった。
『SSRアイテム【豊穣の魔導養蜂箱(ミツバチ付き)】を獲得しました』
『※絶対に人を刺さない温厚な魔導ミツバチです。周囲の植物から、極上の甘さと栄養価を持つ「黄金の蜂蜜」を毎日大量に生産します』
「素晴らしい! これぞ自然の甘味料!」
俺は即座にセシルを呼び出し、黄金の蜂蜜が入った瓶を渡した。
「セシル。これで、午後三時の休憩に、みんなに甘いものを振る舞ってやってくれないか?」
「は、蜂蜜……! しかも、こんなに美しくて澄み切った蜂蜜は初めて見ました! はいっ、腕によりをかけて作ります!」
その日の午後三時。
村役場のチャイム(これもクロエが作った)が鳴り響き、全村人に「休憩時間」が告げられた。
食堂に集まった住人たちの前に出されたのは、世界樹の芋をマッシュして蜂蜜をたっぷりとかけた「黄金のハニーポテトケーキ」だった。
「「「いただきます!!」」」
一口食べた瞬間、食堂に静寂が訪れ――直後、爆発的な歓声が上がった。
「あ、甘い……! 脳みそがとろけそうだぜぇぇ!」
「美味しいです! 疲れが、疲れが一瞬で吹き飛びますぅ!」
甘いお菓子という娯楽を知らなかった獣人たちは、あまりの美味しさに感極まって泣き出している。
ガルドも顔を真っ赤にしてケーキを頬張り、クロエは「この糖分、脳の回転率が300%アップするよ!」と大興奮だ。
「タクト様も、あーん、してくださいっ」
「いや、自分で食べるから」
シルフィの猛烈なアピールをかわしつつ、俺も一口食べる。
上品でコクのある蜂蜜の甘さが、世界樹の芋の自然な甘みと完璧にマッチしていた。
「労働の合間の、甘い休憩時間。これこそがホワイト企業の特権だな」
午後三時の「おやつタイム」は、村の新たな絶対ルール(福利厚生)として定着することになった。
(残り340日。明日は何が出る?)




