第22話:【22日目】魔導インカムと、ホウレンソウの徹底
自動書記の羽根ペンにより、村役場(PMO)のタスク管理は完璧になった。
だが、村の敷地が広がり、各部門が離れた場所で作業するようになると、新たな問題――「コミュニケーションコストの増大」が発生した。
「村長ーっ! ガルドさんが、追加の石材をどこに置けばいいか聞いてますー!」
「わかった、今行く!」
ルナが息を切らして走ってくるのを労いつつ、俺も現場へ向かう。
これではいけない。物理的な移動による伝言ゲームは、時間の無駄であるだけでなく、伝達ミスの原因にもなる。
「今日のカレンダーで、通信インフラを引き当てたいところだな」
朝のルーティン。俺は期待を込めて「残り344日」の紙をめくった。
黄金の光が収束し、手のひらに現れたのは、小さなイヤーカフのような通信機が数十個入った箱だった。
『SSRアイテム【念話の魔導インカムセット】を獲得しました』
『※耳に装着することで、どれだけ離れていても特定の相手、または全員とクリアな音声で会話ができる魔導具です。自動翻訳機能付き』
「よっしゃ! これで情報伝達がシームレスになる!」
俺は即座に各部門のリーダーたちを役場に集め、インカムを配布した。
「これは『インカム』という通信ツールだ。これを使えば、走って呼びに来なくても、離れた場所から俺や他のメンバーと話ができる」
「おおっ! こりゃあ便利だぜ。いちいち大声出さなくて済むな」
「タクト様の声が、いつでも耳元で聞こえるのですね……っ!」
ガルドは感心し、シルフィはなぜか頬を赤らめている。
「いいか、全員に徹底してほしいルールがある。仕事の基本は『報・連・相』だ」
「ほうれんそう? お野菜のことですか?」とルナが首を傾げる。
「いや、報告・連絡・相談の略だ。何か完了したら『報告』、予定が変わったら『連絡』、迷ったら一人で抱え込まずに『相談』。このインカムを使って、些細なことでも俺に伝えてくれ。情報が透明化されれば、トラブルを未然に防げる」
早速、その日の業務からインカムを運用し始めた。
『村長、トラクターの燃料(魔力)が切れそうだ』とガロ族長からの通信。
「シルフィ、農業区画へ魔力充填のサポートに向かってくれ」
『はいっ、ただちに向かいます!』
『村長! 今日のまかないのスープ、塩加減はどうしましょう?』とセシル。
「昨日は汗をかく作業が多かったから、少し濃い目で頼む」
『承知いたしました!』
素晴らしい。現場の状況がリアルタイムで把握でき、俺の指示も一瞬で伝わる。
これで「言った・言わない」のトラブルも無くなり、村全体の作業効率がさらに数段跳ね上がった。
前世でチャットツールの通知音に怯えていた俺だが、健全な環境でのコミュニケーションツールは、これほどまでに頼もしいものなのかと実感した。
(残り343日。明日は何が出る?)




