第21話:【21日目】村役場の開設と、自動書記ツールによる業務効率化
行商人のマルコが去った後、俺はPMとして一つの限界を感じていた。
「村長! トラクターの魔力充填が切れそうです!」
「タクト様! 新しい家を五棟建てるための配置図の確認をお願いします!」
「村長、セシルちゃんが今日のメニューの承認を欲しいって!」
俺の元に、村中の情報と決裁事項がひっきりなしに集まってくるのだ。
村人が三十人を超え、各部門が自律的に動き始めたのは良いが、その「承認」をすべて俺一人でやっているため、俺自身が村最大のボトルネック(渋滞の原因)になりつつあった。
「いかん。俺が過労死したら元も子もない」
俺は日めくりカレンダーの前に立ち、「残り345日」の紙をめくった。
今の俺に必要なのは、バックオフィス(事務管理)のツールだ。
『SSRアイテム【全自動・魔導書記の羽根ペンと無限羊皮紙】を獲得しました』
『※音声や思考を読み取り、一瞬で完璧な書類・図面を作成する魔法のペンです。紙は尽きることがありません』
「よっしゃ! 神様、愛してる!」
俺は空中に現れた純白の羽根ペンを掴み取り、シルフィを呼んだ。
「シルフィ! 今日から、俺たちの家の一室を『村役場(PMO:プロジェクトマネジメントオフィス)』にする! 君は俺の専属秘書として、そこで情報の一元管理をしてくれ!」
「村役場……ですか! はい、タクト様の秘書として粉骨砕身頑張ります!」
「いや粉骨砕身はしなくていい。定時で帰れ」
俺は早速、魔導羽根ペンを稼働させた。
「えー、村の住民基本台帳を作成。各人の名前、種族、所属部門をリスト化。次に、各部門の今日のタスク一覧をボード形式で出力」
俺が言葉を発するだけで、羽根ペンが勝手に動き出し、無限羊皮紙の上に美しい文字と完璧なフォーマットの表を一瞬で書き上げていく。
前世でExcelやPowerPointと格闘していた数時間が、わずか数秒で終わってしまった。
「すごい……! タクト様の言葉が、そのまま綺麗な書類になっていきます!」
「これを使えば、マニュアルの作成も、スケジュール管理も一瞬だ。シルフィ、各部門からの報告はここで受け付け、このペンを使って可視化(ボードに貼り出し)してくれ。俺はそれを見て承認を出す」
「承知いたしました! 情報の整理ですね、お任せください!」
こうして村の中心に「村役場」が設立され、巨大なタスクボード(かんばんボード)が設置された。
誰が今何をしていて、何が滞っているのかが一目でわかるようになったのだ。
「おお、こりゃ分かりやすいぜ! 俺様の建築部隊の進捗が一番早いな!」
「負けてられませんね! ルナ、農業部隊ももっとペースを上げますよ!」
タスクの可視化は、村人たちのモチベーションをさらに高める結果となった。
圧倒的なインフラ、SSRの人材、そして完璧なプロジェクト管理。
異世界に転生して21日。
名もなき荒野は、すでに一つの「超ホワイトな小国家」としての体裁を整えつつあった。
魔王が復活するまで、あと344日。
俺は淹れたてのコーヒーを飲みながら、完璧に整理されたタスクボードを眺めて満足げに微笑んだ。
(残り344日。明日は何が出る?)




