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19/92

第19話:【19日目】SSR「魔導プロジェクター」と、星空の映画鑑賞会

 食と住が完璧に満たされ、村人たちの顔には余裕の笑みが浮かぶようになった。

 だが、PMの視点から言えば、ここで立ち止まるわけにはいかない。

 「マズローの欲求段階説」で言えば、生理的欲求と安全の欲求が満たされた今、次に必要なのは「精神的な豊かさ(娯楽)」である。


 朝。俺は期待を込めてカレンダーをめくった。


『SSRアイテム【追憶の魔導プロジェクター】を獲得しました』

『※使用者の記憶にある映像や物語を、空中に大スクリーンとして投影し、音声と共に再生する魔導具です』


「……来たな。娯楽インフラの頂点だ」


 俺の手の中には、手のひらサイズの黒い水晶玉が握られていた。

 前世の俺にとって、休日に映画やアニメを見ることは数少ない現実逃避リフレッシュの手段だった。それをこの異世界で再現できるとは。


「ガルド! 広場に大きな白い布を張ったスクリーンを作ってくれ。今夜は村の全員で『鑑賞会』をやるぞ!」

「かんしょうかい? なんだか分からねえが、任せときな!」


 夕食後。

 セシルの美味しいまかない(今日は世界樹芋のフライドポテトと果実水)を手にした三十人以上の村人たちが、広場に集まってきた。


「村長、これはいったい何が始まるんですか?」

「まあ見ててくれ。シルフィ、広場の灯りを少し落としてくれるか」

「はいっ」


 広場が薄暗くなったところで、俺は【追憶の魔導プロジェクター】に魔力を流し込み、前世で見た「大ヒットした王道ファンタジー映画」の記憶を強く念じた。


 ――バシュッ!


 プロジェクターから強烈な光が放たれ、ガルドが張った白い布に、色鮮やかな映像が映し出された。

 同時に、水晶玉から臨場感あふれるオーケストラのBGMが鳴り響く。


「な、なんだこれはぁぁっ!?」

「人が、人が布の中に閉じ込められてるぞ!」

「お父さん、あれ絵が動いてるよ!」


 初めて見る「映像(映画)」に、獣人たちはパニックになりかけたが、物語が進むにつれて全員が画面に釘付けになった。

 勇者が魔王に立ち向かい、仲間と共に困難を乗り越えていく王道ストーリー。

 美しい映像と音楽に、ドワーフのガルドは「あの剣の造形、すげえな!」と感心し、エルフのシルフィは「この魔法の演出、勉強になります!」と目を輝かせている。


 約二時間の上映が終わると、広場は静寂に包まれ――やがて、割れんばかりの拍手と歓声が巻き起こった。


「すげえ……! 俺、こんなすごい物語、初めて見た!」

「勇者様、かっこよかったですねぇ……ぐすっ」

「タクト様! これ、明日もやってくれるんですか!?」


 興奮冷めやらぬ村人たちを見て、俺は満足げに頷いた。


「ああ。週に二回の休日の前夜は、『映画祭』の日にしよう。俺の記憶だけじゃなく、ガルドの昔の冒険譚や、ガロ族長の一族の歴史なんかを映像化するのも面白いかもしれないな」

「おおっ! 俺様の武勇伝を見せて良いのか! ガハハ、腕が鳴るぜ!」


 労働の後の、極上の食事と最高のエンターテインメント。

 村の結束力チームワークと、村人たちのロイヤリティは、限界を突破して跳ね上がり続けている。


(残り346日。明日は何が出る?)

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