第18話:【18日目】社員食堂の設立と、聖なるまかない飯
元・聖女セシルという最強の総料理長を迎え、村の食環境は劇的な進化を遂げようとしていた。
だが、三十人以上の食事を快適に提供するには、彼女の腕だけでなく「設備」が必要だ。
「よし、今日はセシルのための最高のキッチン環境を引いてみせる」
俺は日めくりカレンダーの前に立ち、「残り348日」の紙をめくった。
光の粒子が集まり、どさっと現れたのは、銀色に輝く巨大な金属製の箱と、それに付随するいくつかの調理器具だった。
『SSRアイテム【全自動・魔導システムキッチン一式】を獲得しました』
『※火加減の自動調整、魔力洗浄による一瞬での洗い物、巨大オーブンを備えた完璧な厨房設備です』
「おお……これなら何十人分でも同時に作れるな!」
俺はガルド率いる建築部隊に急ピッチで「社員食堂」を建設させ、そこにこのシステムキッチンを設置した。
広々とした食堂に、三十人以上の獣人たちと俺たちが並ぶ。
配膳カウンターの向こうで、セシルが「初出勤の成果」を披露した。
「皆様、お待たせいたしました! 本日のまかない『世界樹のトマトと芋の聖なるチーズ焼き』と、『清らかなるオニオンスープ』です!」
配膳された料理を見た瞬間、全員の語彙力が消滅した。
「……なんっっだこれ!?」
「匂いだけで、匂いだけで涙が出てきそうですぅぅ!」
世界樹の野菜という最高級の素材を、魔導オーブンで完璧に火入れし、さらにセシルが持つ「微弱な浄化魔法」と「祈り(愛情)」を込めて調理することで、素材の旨味が限界突破していた。
一口食べた獣人たちが、次々とその場に崩れ落ちる。
「うおおおおっ! 美味すぎる! これまでの俺の人生はなんだったんだ!」
「タクト様……私、エルフの郷で食べた百年祭の晩餐より、こっちの方が美味しいです……!」
「アタシ、もう村長とセシル様に一生ついていきますぅ!」
食堂のあちこちから、むせび泣く声と歓喜の叫びが上がる。
俺もチーズ焼きを口に運んだが、前世で一度だけ会社の経費で食べた星付きレストランのコース料理すら、これの足元にも及ばないと確信した。
「セシル、これはすごいな。魔法を使っているのか?」
「いえ、浄化魔法でアクやえぐみを取り除いているだけで、あとはただの私の趣味です! 教会では隠れてネズミの肉を調理したりして練習していたので……あ、今のは忘れてください!」
壮絶な過去を笑顔で語るセシル。彼女の心の闇は、このホワイト村で徐々に浄化していくしかないだろう。
「この食堂は、ビュッフェ形式にする。セシルの負担を減らすため、配膳と片付けはセルフサービスだ。ルナ、獣人たちの中から数人、セシルの調理アシスタントをつけてくれ」
「はいっ! アタシがやります! つまみ食い……じゃなくて、味見係も兼ねて!」
「ルナは警備のリーダーだろ。適任者を探してくれ」
俺のタスク管理と、セシルの圧倒的な料理スキルにより、村の「食環境」は異世界最高レベルへと到達した。
美味しいご飯は、すべての労働の基本である。
お腹いっぱいになった獣人たちは、午後からの農作業や建築作業を、いつもの倍のスピードで片付けてしまった。
「よし、今日も定時退社だ。セシルも、キッチンの片付けが終わったら温泉に入ってゆっくり休んでくれ」
「はいっ! 村長様、私……今、すっごく幸せです!」
満面の笑みでエプロンを外すセシルを見て、俺は小さくガッツポーズをした。
ブラック環境から人材を救い出し、適切なポジションで輝かせる。
これだからPMはやめられない。
(残り347日。明日は何が出る?)




