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第180話:【180日目】『特別イベント企画部』発足と、正式なインターン着任

 朝の澄み切った秋空が、ホワイト株式会社の本社ビルを爽やかに包み込んでいた。


 社長室のデスクには、色鮮やかな感謝祭の広報チラシが整然と並べられている。昨日、広場で配り切られたチラシには、住民たちからの『楽しみにしています!』『いつも村を明るくしてくれてありがとう!』という温かいメッセージが添えられていた。


「ふふ、昨日のベルゼリカ様の嬉しそうな顔、今でも目に焼き付いておりますよ」


 秘書のシルフィが淹れたてのハーブティーを差し出しながら、柔らかい微笑みを浮かべる。


「ああ。自分の仕事が誰かの笑顔に直結している──その手応えを知った人間は強いよ」


 俺──タクトが応じると同時に、ドアが『コンコン!』と威勢よく叩かれた。


「失礼しますわ、タクト! 今日の日めくりカレンダーのスワイプ、わたくしに任せていただけますかしら!?」


 入ってきたのはベルゼリカだった。悪戯で大パニックを起こしていた面影はなく、背筋をピシッと伸ばし輝く瞳で俺を見つめている。隣には誇らしげな兄のリオンの姿もあった。


「おはよう、ベル。今日も頼むよ」


「はい! いざ……スワイプですわッ!」


 ベルが指先でカレンダー画面を軽やかに撫で上げる。ピリン──ッ! と透明感のある電子音が響き、表示が書き換わった。


 ──『残り185日 → 184日』!


 聖なる光がデスクの中央へ収束し、重厚な革張りのバインダーが現れる。金色の箔押しでロゴが刻まれた優れものだ。


 SSR【企画バインダー(プロジェクト)】


『※頭の中のイベント企画案を挟むだけで、予算、スケジュール、リスク管理を自動でフレームワーク化して仕様書に変換する経営ツールです』


「見事なバインダーですわね! 頭の中のアイデアが図表になって整理されていく感覚がありますわ!」


「まさに今のベルにぴったりだ。頭の中のイベント企画案を挟むだけで、予算、スケジュール、リスク管理を自動でフレームワーク化してくれる経営ツールだよ」


「まあ……! わたくしのアイデアを仕様書にしてくれる魔法のバインダーですの!?」


「そうだ。そして──ベル、君に渡したいものがもう一つある」


 俺はデスクから金色のエンボス加工が施された辞令書を取り出し、差し出した。


「ホワイト株式会社代表取締役タクト・サクラバより命ずる。本日をもって新設部署『特別イベント企画部』を発足し、ベルゼリカ殿を同部署の『特別インターン』として正式に任用する!」


「え……!? わたくしが、正式な特別インターン……!?」


 ベルは震える手で辞令書を受け取り、名前と会社の紋章を何度も見つめた。


「昨日のチラシ配りで見せた行動力と『住民を楽しませたい』という情熱は本物だった。これまでのトラブルも、君の自由な発想があったからこそのイノベーションだ。見習いではなく正式なリーダーとして、この村のワクワクを作り出してほしい」


「タクト……っ!」


 ベルの瞳から、ぽろぽろと大粒の嬉し涙が溢れ出した。


「よかったじゃないかベル。ただの引きこもりの妹じゃなくて、立派な社員だな」


 リオンが照れくさそうに妹の肩をぽんと叩く。


「愚兄に言われたくはありませんわ! ですが……ふふっ、本当に嬉しいですわ……! 絶対に世界一のイベントを作ってみせますわッ!」


「よし! 特別イベント企画部の初仕事として、役員会での『秋の大感謝祭&お菓子フェス』のプレゼンを行う! 会議室へ移動だ!」


 役員会議室。長テーブルを囲むのは最高幹部たちだ。最高投資責任者(CIO)のレイカ姉さん、シルフィ、ザンギュラ、ネクロディア、グレイシア、シオン、セシル、黒崎、そしてスーちゃん。


「皆様、お集まりいただきありがとうございますわ!」


 ベルが中央のプレゼン台に立ち、胸を張った。隣には広報見習いのリオンが控えている。


「本日発足いたしました『特別イベント企画部』の初プロジェクトとして、『ホワイト村・秋の大感謝祭&お菓子フェス』の企画案をご提案いたしますわ! ドロップアイテムの【企画バインダー(プロジェクト)】で最適化した仕様書がこちらです!」


 バインダーを開くとホログラムの立体レイアウトが浮かび上がった。


「目玉はセシル様特製のポテチ限定試食会、クリーンアップトリオの『お掃除パフォーマンス』、空中建設チームの『バルーンショー』ですわ! 技術と現場の魅力を体験していただくエンタメフェスとなっております!」


「……ほう。単なるお祭りではなく、認知度向上とエンゲージメント強化を目的とした完全な体験型マーケティングですね」  最高投資責任者(CIO)のレイカ姉さんが満足そうに頷く。 「投資対効果の観点からも申し分ありませんわ。投入予算の三倍以上の価値が創出されます」


「〜ですぞ! データ構造も完璧ですぞ! 演出用プログラムはわたくしとシオン殿で爆速デプロイしておきますぞーっ!」  ネクロディアが絶賛し、シオンも画面に「人流誘導プロトコル準備完了」と文字を躍らせた。


「安全管理も隙がないな。警備部隊が誘導ラインを完備しよう!」


「セシル厨房も総力を挙げて限定メニューを焼き上げますよ!」


「ガハハ! 会場の清掃と設営は俺とスー隊長にお任せくだせぇ!」  黒崎が笑うと、足元でスーちゃんも「ぷるるっ! ぷるぷるっ!」と体を元気に跳ねさせた。


「財務面での予算枠も即座に承認いたしますわ。最高のイベントにしましょう」  CFOのグレイシアが微笑み、役員会議室が温かい拍手に包まれた。


「皆様……ありがとうございますわ! 全力を尽くしますわッ!」


「よし! 『秋の大感謝祭&お菓子フェス』、キックオフだ!」


「「「オーッ!!」」」


 夕方。夕日に染まる本社ビルの屋上テラスで、三人で広場を見下ろしていた。


「なあ、タクト。俺たちが魔王城にいた頃は毎日が退屈だった。でも、こうして『誰かのために働く』ってことを知って……胸が熱くなるんだ」


「ふふ、愚兄にしては良いことを言いますわね。わたくしもただの『わがまま』より、自分の力で誰かを笑顔にする『お仕事』の方があっと言わせるほど誇らしいですわ!」


「ああ。二人とも、本当に立派なホワイト会社の仲間だよ」


 タクトは二人の頭を優しく撫でた。


 カオスなトラブルシューティングを通じて、わがまま姫だったベルは『働く喜び』を知り、ホワイト会社の不可欠なピースへと成長を遂げた。  365日後に魔王すらも就職させる──その目標に向けた折り返し地点が、着実に近づいている。

【180日目時点の主要キャラクター紹介】

■ タクト(ホワイト株式会社 代表取締役(兼PM)) 状況:新設部署『特別イベント企画部』を発足させ、ベルに正式な辞令を交付。トラブルを価値へと転換する完璧なマネジメントで組織をさらに強固にした。


■ ベルゼリカ(魔王城のわがまま姫(特別インターン)) 状況:新設された『特別イベント企画部』の特別インターン(部署長見習い)に正式着任。初プロジェクトのプレゼンを見事に成功させ、働く誇りと歓喜に満ち溢れている。


■ リオン(広報・エンタメ事業部見習い(元・魔王の息子)) 状況:妹のプレゼンをサポートし、共同でのイベントマーケティングに参画。「誰かのために働く喜び」を妹と共に噛み締めている。


■ シルフィ(社長秘書) 状況:ベルへの辞令交付と役員会のセッティングを完璧にサポート。成長したベルの姿に涙ぐみながら祝福した。


■ レイカ(ホワイト株式会社 最高投資責任者(元・魔王軍臨時CEO)) 状況:ベルのイベント企画案を『完全なエクスペリエンス・マーケティング』と高く評価し、全社的な投資効果を承認した。


■ ザンギュラ(CSO(最高安全責任者)) 状況:イベント会場の安全誘導プロトコルを即座に策定し、鉄壁の警備体制でフェスを支える準備を整えた。


■ ネクロディア(CDO(最高デジタル責任者)) 状況:「〜ですぞ!」の技術者魂で演出用魔導プログラムを爆速デプロイし、シオンと共にデジタル演出の全責任を担う。


■ グレイシア(CFO(最高財務責任者)) 状況:特別イベント企画部の初仕事に相応しい予算枠を即座に承認し、財務面から完璧なバックアップを完了させた。


■ シオン(CIO(最高情報責任者)) 状況:全知監視網を用いた人流誘導プロトコルを構築し、会場内の混雑緩和と安全性の両立をデータで保証した。


■ 黒崎(見習い清掃員(元ブラックCEO)) 状況:現場の仲間たちと共に会場設営と清掃の総指揮を執り、「一粒のゴミも残さない」と熱く意気込んでいる。


■ スー(清掃局長(スライム)) 状況:言葉は話さず「ぷるるっ! ぷるぷるっ!」と愛らしく鳴きながら元気に跳ね、黒崎と共に会場美化の準備に燃えている。


■ セシル(総料理長) 状況:限定『Wパンチポテチ』と特製スイーツの大量仕込みを開始し、食の力でイベントを大成功させようと腕を鳴らしている。

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