↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
170/174

第170話:【170日目】楽園のグランドオープンと、365日への道筋

 ホワイト株式会社の本社ビル、最上階の社長室。


 朝の清らかな光がガラス窓から差し込む部屋で、タクトは再び自分のデスクの傍らに鎮座したクリスタルカレンダーを見つめていた。


 成果主義による破奪と占領劇を乗り越え、ついに俺たちの手へと戻ってきた、大切な日めくりカレンダー。


「社長、170日目のアップデートの準備が整いました!」


 秘書のシルフィが、出来立ての温かいコーヒーをトレイに載せて、弾むような足取りで歩み寄ってくる。 隣には、新たに最高投資責任者《CIO》として参画したレイカ姉さんと、配給されたポテチと炭酸水を嬉しそうに抱えたニートのリオン、そして完全復帰を果たした四天王たちが笑顔で見守っていた。


「へっへー! やっぱりカレンダーのドロップ確認はタクトに任せるのが一番だな! 俺がめくるとドライバーやらバインダーやら地味なもんしか出ねぇけど、タクトならまた凄ぇもん引き当ててくれるだろ! ポテチ食いながら高みの見物させてもらうぜ!」


 リオンが満足そうにポテチを口に運ぶ。


 レイカ姉さんも、手帳を手に落ち着いた笑みを浮かべた。 「ええ。このカレンダーがもたらす予測不能なイノベーションと、タクトの現場主導の経営管理……それらが融合してこそ、我が社の価値は極大化されるわ。さあ、タクト。本日のドロップを検分しなさい」


「ああ。ここからが、新生ホワイト株式会社の本当のスタートだ!」


 俺は胸を張り、自分の手でクリスタルカレンダーの輝く画面に触れた。 タスク管理スキルを発動し、確固たる決意を込めて画面を力強くスワイプする。


 残り195日 → 194日


 シートからあふれ出した黄金と真鍮の絢爛たる光の中から現れたのは、お祝いの式典やパレードで使われるような、華やかな彫刻が施された真鍮製の小さな笛だった。


 SSR【ファンファーレ笛(マナ・ホーン)】


『※祝祭や式典の開会において、全聴衆の歓喜と集中を高める澄んだ美音を奏でる、高品質な真鍮製ファンファーレ笛です』


「おおっ! 金ピカのファンファーレ笛か!」


 俺が手を伸ばして受け取ると、レイカ姉さんが眼鏡の奥の瞳を和らげ、優雅に自らの投資分析コンソールと同期させた。


「ただのファンファーレ笛? 違うわ、タクト。これは新生ホワイト村の再始動と、全社員の組織愛(エンゲージメント)を一瞬で最高潮へ引き上げる、完璧な『式典号砲笛(グランド・ホーン)』よ」


 レイカ姉さんは笛に魔力を注ぎ込み、村全域の音波増幅ネットワークを起動した。


「さあ、タクト。全社員と住民たちが下で待っているわ。新しい時代のスタートを、代表取締役であるあなたの手で切りなさい」


「ああ、任せてくれ!」


 *


 占領劇を完全に乗り越え、驚異的な復旧を果たしたホワイト村の本社ビル前・大広場。


 そこには、村の住人、オークやゴブリンの現場作業員、元魔王軍の兵士たち、勇者アーサー率いる「白馬の騎士」ギルドの志願兵たち、アンド全国から駆けつけた商人たちが溢れんばかりに埋め尽くされていた。


「社長! 全エリアのインフラ復旧、ならびに新システムの稼働準備、完了しました!」


 秘書のシルフィが、最高の笑顔でタクトに最終レポートを手渡した。


「大浴場の魔導ボイラーは以前の1.5倍の出力に強化され、セシルさんの食堂ではアツアツの特製スープが三千人分準備されています!」


「よし……!」


 タクトは広場の特設ステージへ登り、マイクを握りしめた。 隣には大盾を構えた最高安全責任者(CSO)ザンギュラ、モップを担いだ見習い清掃員の黒崎、バケツを抱えたスー、アンド新生5幹部(ネクロディア、グレイシア、シオン、ザンギュラ、レイカ)がズラリと勢揃いしている。


 タクトは広場を見渡し、腹の底から声を張り上げた。


「――ホワイト村の仲間たち、アンド新しく加わったすべての社員諸君! 本日、ホワイト株式会社は完全復活し、ここに『グランドリオープン』を宣言する!」


「「「オオオオオッッ!!」」」


 地響きのような大歓声が湧き起こる。


「俺たちが今回の危機を乗り越えられたのは、小綺麗な数字や冷たい仕様書のおかげじゃない! 毎日泥にまみれて汗を流し、現場を守り抜いてくれた君たちの『泥臭い現場の絆と人間への信頼』があったからだ!」


 タクトはステージから一人ひとりの顔を見つめた。


「これからのホワイト株式会社は、ただの『優しいぬるま湯』じゃない! レイカ最高投資責任者とグレイシアCFOがもたらす『鋭い資本と投資の力』、ネクロディアCDOとシオンCIOが創り出す『世界最高の技術と全知のインフラ』、そしてザンギュラCSOと黒崎さん、スー局長が護る『絶対の安全と現場の誇り』――そのすべてが融合した、世界で一番温かく、世界で一番成果を出す最高の会社だ!」


「「「うおおおおおっ!! ホワイト会社最高ッ! タクト社長万歳ッ!!」」」


 タクトは掲げた【式典号砲笛(グランド・ホーン)】を思い切り吹き鳴らした!


 プォオオオオオンッ……!!


 空高く響き渡る澄んだファンファーレの美音とともに、空からは虹色の祝福の魔導花火が打ち上がり、セシル特製の温かいポタージュスープが全社員へと次々と配給されていった。


「うめぇぇぇっ! 温かいスープだぁぁっ!」 「やっぱりホワイト会社が一番だぜぇぇっ!」


 広場全体が、笑顔と歓喜の熱気に包み込まれた。


 *


 式典の熱気が一段落した夕方。本社ビルの社長室。


 タクト、シルフィ、レイカ、リオン、そして五幹部(ネクロディア、グレイシア、シオン、ザンギュラ、レイカ)、黒崎、スーが集まっていた。


「ふぅ……これで第一フェーズの完全復旧と、新体制のキックオフは完了だな」


 タクトは窓から見える、夕日に美しく照らされたホワイト村の街並みを眺め、微笑んだ。


「ぷるるっ! ぷるぷるっ!」 清掃局長のスーが、ピカピカに磨き上がった床の上で嬉しそうに跳ねる。


「フッ……現場のモップがけも、これでさらに精が出るってものだ」 黒崎が爽やかに笑った。


 タクトはデスクに戻り、傍らのクリスタルカレンダーに表示された数値を指差し、全員を見つめた。


「残り194日……。俺たちの目標は、ここからが本当の本番だ」


 ネクロディアが骨の手をカタカタと鳴らした。 「カタカタ……! 365日目の最終ロードマップですな! 腕が鳴りますぞ!」


 グレイシアも優雅に扇を広げた。 「ええ。我が社の財務・投資ポートフォリオは、すでに大陸全土をホワイト化するだけの余力を備えておりますわ」


 シオンも静かにホログラムモニターを指し示す。 「全全知監視網も、脅威の排除ではなく『人々の困りごとを助けるサポート網』として全稼働を開始しました」


 レイカ姉さんが手帳を閉じ、冷徹ながらも温かい笑みをタクトに向けた。 「見事な進捗ね、タクト。だが、ここからのスケールアップには私の投資戦略が不可欠よ。ビシバシ鍛えてあげるわ」


 タクトは強く頷き、力強く拳を握りしめた。


「ああ! あと194日……365日目を迎えるその時までに、俺たちのホワイトな経営哲学で世界中を幸せにし……最後の365日目には、『魔王』すらも最高条件で我が社に就職させてみせる!」


「「「おおおおおっ!!」」」


 夕陽に染まる社長室で、仲間たちの熱い誓いがひとつに重なり合った。


(残り194日。明日は何が出る?)

【170日目時点の主要キャラクター紹介】

■ タクト(ホワイト株式会社 代表取締役(兼PM)) 状況:奪還したカレンダーを自らの手で引き、グランドオープンを宣言。5幹部と共に「365日後に魔王すらも就職させる」という最終目標へ向けて進撃を開始する。


■ シルフィ(社長秘書) 状況:グランドオープン式典の司会進行を完璧に務め、タクトの掲げるロードマップを全力で支え続ける。


■ レイカ(ホワイト株式会社 最高投資責任者(元・魔王軍臨時CEO)) 状況:最高投資責任者《CIO》として正式に参画。タクトのカレンダー引きを笑顔で見守り、会社の成長を強力に牽引する。


■ リオン(広報・エンタメ事業部見習い(元・魔王の息子)) 状況:カレンダーがタクトに戻り、ポテチと炭酸水を手に楽しく見習い業務に励んでいる。


■ ザンギュラ(CSO(最高安全責任者)) 状況:全施設の『安全第一』防衛プロトコルを完成させ、社員たちの安心と平和を鉄壁の大盾で護る。


■ ネクロディア(CDO(最高デジタル責任者)) 状況:「〜ですぞ!」の熱い開発魂でエンジニアのゆとりと開発環境を最適化。1日1000件のカイゼンを導く。


■ グレイシア(CFO(最高財務責任者)) 状況:レイカとの最高のタッグで財務・投資ポートフォリオを完成させ、ROI 300%以上の健全経営を実現する。


■ シオン(CIO(最高情報責任者)) 状況:全知監視網を『ウェルビーイング・アラート』へ再構築し、社員の不調や困りごとを即座にフォローする。


■ 黒崎(見習い清掃員(元ブラックCEO)) 状況:現場清掃のリーダーとして、元ブラックCEOの経験を生かした泥臭い現場の誇りと安全を支え続ける。


■ スー(清掃局長(スライム)) 状況:言葉は話さず「ぷるるっ!」と愛らしく鳴きながら、全館の清潔と環境衛生を完璧にキープしている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。