第15話:【15日目】聖域の結界石と、平和すぎる防衛線
週休二日のリフレッシュを経て、月曜日(という概念を導入した)の村は活気に満ち溢れていた。
トラクターがうなりを上げ、獣人たちが笑顔で飛び回る。
だが、村が豊かになればなるほど、一つの懸念が頭をもたげてくる。
「外部からの脅威」だ。
美味しい作物の匂いや、温泉の魔力、そして何よりこれだけの大所帯になれば、荒野の魔物や、たちの悪い盗賊の耳に入るのも時間の問題だった。
「ルナ。最近のパトロールの状況はどうだ?」
「はい! 今のところ村に近づく大きな群れはいませんが、遠くの森の方でゴブリンやオークの気配が増えているような気がします……」
やはりか。
防衛線を構築するのは急務だ。だが、俺は獣人たちに血を流させるような戦闘はさせたくない。
「今日のカレンダーに賭けるか」
俺は祈るように「残り351日」の紙をめくった。
光が弾け、現れたのは、真っ白で神々しい光を放つ、八面体の巨大な水晶だった。
『SSRアイテム【絶対平和の聖域結界石】を獲得しました』
『※村の中心に設置することで、村全域を覆う不可視のドームを展開します。村の住人および「明確な敵意を持たない者」以外は、いかなる物理・魔法攻撃も通過できず、侵入も不可能です』
「……完璧だ。これ以上の防衛システム(セキュリティ)はない」
相手を傷つけるのではなく、「そもそも入れない」という徹底した平和主義。俺のホワイト村のコンセプトにこれ以上なく合致している。
「シルフィ! これを村の中心の広場に設置して、起動してくれ」
「はいっ! タクト様、これはとてつもない純度の魔力です! 起動します……【聖域展開】!」
シルフィが水晶に杖を触れると、キィィィンという澄んだ音と共に、村全体を覆うように薄い光のドームが広がった。
光はすぐに透明になり見えなくなったが、肌で感じる空気の安全度が明らかに違っていた。
「……ちょうどいい、テストのお客さんが来たみたいだぜ」
物見櫓(ガルドが休日の暇つぶしに建てた)に登っていたガルドが叫んだ。
荒野の向こうから、凶暴な角を生やした巨大な猪の魔物が、村の畑の匂いに釣られて猛突進してくるのが見えた。
「村長! アタシたちが迎撃します!」
「いや、待てルナ。そのまま見ていよう」
武器を構える獣人たちを制止し、俺は腕を組んだ。
猛スピードで突っ込んできた巨大猪は、村の境界線――透明な結界の壁に激突した。
――ボォォンッ!!
まるで巨大なゴムまりにぶつかったかのように、猪は悲鳴を上げて何十メートルも後ろに弾き飛ばされた。
結界にはヒビ一つ入っていない。猪は目を回し、這うようにして逃げていった。
「……す、すげえ。あんな巨大な魔物が、指一本触れずに弾き返されたぞ」
「これなら、夜も見張りを立てずに全員ぐっすり眠れますね!」
獣人たちが歓声を上げる。
俺はメモ帳の「防衛・セキュリティタスク」に完了のチェックを入れた。
これで、魔王が来ようが四天王が来ようが、少なくとも物理的な破壊で村が脅かされることはなくなった。俺たちは安全圏から、彼らを説得(交渉)すればいいのだ。
(残り350日。明日は何が出る?)




