第13話:【13日目】初めての「休日」と、戸惑う獣人たち
朝。村の広場に集まった全員を前に、俺は宣言した。
「今日と明日は『休日』とする! 業務は一切禁止。各自、好きなように過ごしてくれ」
俺の言葉に、獣人たちは水を打ったように静まり返り、やがてガロ族長が恐る恐る手を挙げた。
「あの、村長……『きゅうじつ』とは、何かの罰でしょうか? 我々、何か粗相をいたしましたか!?」
「違う違う」
俺は苦笑しながら手を振った。
「うちの村は週に五日働き、二日休む『週休二日制』だ。つまり、今日と明日は労働から離れて心身をリフレッシュするための日なんだよ」
「労働から、離れる……? では、畑の世話は? 警備は?」
「畑はスプリンクラーとトラクターの自動運転で回るように設定してある。警備は結界魔法の簡易版(シルフィ作)を張ってあるから、最低限の見回りでいい」
この世界において、「休む」という概念は貴族だけのものだ。
奴隷のように働かされてきた獣人たちにとって、「一日中何もしなくていい」という状況は、逆に不安で仕方ないらしい。
「そ、そんな……働かないで飯を食って、風呂に入っても良いと……?」
「ああ。むしろ、しっかり休んで遊ぶのも仕事のうちだ。趣味に没頭するもよし、昼寝するもよし、大浴場で宴会をするもよしだ」
戸惑う獣人たちに、ガルドが豪快に笑いながら肩を組んだ。
「ガハハ! 最初は俺様も戸惑ったが、村長の言う『るーる』ってやつは絶対だ! 休む時は全力で休む! よし、お前ら! 今日は俺様が木を削って『ボウリング』って遊びを教えてやる!」
「おおっ! 面白そうですね!」
ガルド(俺が前世の記憶を話したら自作してしまった)の音頭で、獣人たちは恐る恐る、しかし徐々に目を輝かせながら遊び始めた。
広場では木製のピンとボールを使ったボウリング大会が始まり、女性陣はルナを中心に、シルフィから花の冠の作り方を教わっている。
昼間から大浴場で鼻歌を歌う者もいれば、木陰で大いびきをかいて昼寝を貪る者もいた。
「タクト様は、お休みにならないのですか?」
縁側でハーブティーを飲んでいる俺の隣に、シルフィがちょこんと座った。
「俺にとっては、みんながこうして平和に笑っているのを見るのが一番の休息だよ」
「ふふっ。タクト様は本当に、みんなの『お父さん』みたいですね」
「25歳でお父さん呼ばわりは勘弁してくれ……」
平和な休日の風景。
前世では、土日も関係なくスマホが鳴り響き、常にチャットの通知に怯えていた。
だが今は、青い空と、仲間たちの笑い声しかない。
「……あ」
そういえば、日めくりカレンダーをめくるのを忘れていた。
休日とはいえ、カレンダーのドロップは毎日の重要タスクだ。俺は広場の隅にあるカレンダーの前に立ち、「残り353日」の紙をめくった。
『SSRアイテム【至高の魔導コーヒーメーカー&焙煎豆セット】を獲得しました』
「……神様、分かってるじゃないか」
休日の午後に欠かせない、極上の嗜好品。
俺はシルフィと一緒に、村中に漂うコーヒーの香ばしい匂いを楽しみながら、最高に贅沢な休日を満喫したのだった。
(残り352日。明日は何が出る?)




