第12話:【12日目】大浴場建設プロジェクトと、SSRの源泉
村の人口が一気に増えたことで、一つ問題が発生していた。
「……村長、露天風呂が満杯で入れないぜ」
「アタシたちも、早くタクト様が作ってくれたお風呂に入りたいですぅ……」
夕方になると、最初に作った小さな岩風呂の前に、獣人たちの長蛇の列ができるようになってしまったのだ。
元々三人用として作った風呂に三十人が入れ替わりで入るとなると、待ち時間だけで数時間かかってしまう。これでは「定時退社後のリラックス」が「風呂待ちのストレス」に変わってしまう。
「これは早急に対処が必要だな」
翌朝、俺は日めくりカレンダーの前に立った。
風呂問題の解決。つまり、より広大な入浴施設と、大量のお湯(あるいは源泉)が必要だ。
頼むぞカレンダー。俺のホワイトな福利厚生への執念に応えてくれ。
ペリッ。
紙をめくると、ゴゴゴゴゴ……という地鳴りが響き、村の端の地面がぽっかりと隆起した。
そしてそこから、もうもうと白い湯気を立てる熱水が噴き出したのだ。
『SSRアイテム【大地の霊泉(源泉)】を獲得しました』
『※どんな病や疲労も瞬時に癒す、極上の効能を持つ無限の温泉です。温度は常に最適に保たれます』
「よっしゃあああっ!!」
俺の歓声に、村のみんなが集まってきた。
「む、村長! お湯が、地面からお湯が噴き出してます!」
「しかも、なんて良い匂いなんだ……。嗅いでるだけで肩こりが治りそうだぞ」
湧き出す温泉は、わずかに乳白色に濁っており、ほんのりと硫黄とハーブを混ぜたような心地よい香りがした。
「ガルド! 建築部隊を全員集めろ! 今日の最優先タスクは『大浴場』の建設だ!」
「ガハハ! 待ってましたぁ! 野郎ども、最高の風呂を作って、今夜はでっかい湯船で疲れを癒すぞ!」
「「「おおおおっ!!」」」
獣人たちのモチベーションは最高潮に達していた。
ガルドが即座に図面を引き(彼の頭の中にだが)、無限箱から大量のヒノキ材や大理石を取り出す。
そこからはまさに人海戦術だった。獣人たちが地面を掘り下げて巨大な浴槽の枠を作り、ガルドがヒノキを組み上げて床や壁を作っていく。
シルフィが魔法で源泉の湯口を整え、見事な滝湯のギミックまで追加してくれた。
日没前には、男湯と女湯に分かれた、三十人が一気に入っても余裕のある「超大型・檜露天風呂」が完成した。
脱衣所にはふかふかのタオル(カレンダーの過去のドロップ素材で作った)も完備している。
「よし、一番風呂は建築部隊からだ。ゆっくり入ってこい!」
「村長、あんた最高だぜぇぇ!」
獣人たちが歓声を上げて男湯へとなだれ込んでいく。
女湯からは、ルナや獣人の女性陣の「きゃーっ! 気持ちいいーっ!」というはしゃぐ声が聞こえてきた。
俺も後からゆっくりと湯に浸かった。
ヒノキの香りと、霊泉の凄まじい疲労回復効果。お湯に浸かった瞬間、全身の細胞が歓喜の声を上げるのが分かった。
「……前世で通ってたスーパー銭湯の100倍気持ちいいな」
星空を見上げながら、俺は深く息を吐き出した。
最高の福利厚生は、最高の労働意欲を生む。これで明日からの業務効率はさらに跳ね上がるだろう。
(残り353日。明日は何が出る?)




