第11話:【11日目】魔導トラクターと、適材適所のチームビルディング
三十人の獣人一族が村に加入したことで、村の雰囲気は一気に賑やかになった。
朝、真新しいユニットハウスから起きてきた獣人たちは、広場でラジオ体操(前世の記憶を頼りに俺が教えた)をしてから、それぞれの業務に向かう。
「よし、今日の朝のルーティンにいこう」
日めくりカレンダーの前に立ち、「残り355日」の紙をめくる。
光の粒子と共に現れたのは、巨大な四つの車輪を持つ、無骨だがどこか愛嬌のある金属の塊だった。
『SSRアイテム【全自動・魔導マルチトラクター】を獲得しました』
『※魔力で駆動し、耕起・播種・収穫のすべてを自動または手動で行える万能農機具。地形走破性に優れ、数十ヘクタールの農地を一人で管理可能です』
「……またとんでもない業務効率化ツールが出たな」
思わず呟いた俺の背後で、パトロールから戻ってきたルナが目を丸くしていた。
獣人たちが加入して労働力は増えたが、全員で手作業の農業をするのは生産性が低い。このトラクターがあれば、農業にかける人員を大幅に削減し、他の開拓タスクに回すことができる。
「よし、ルナ。ガロ族長を呼んできてくれ。チーム編成の見直しだ」
「はいっ!」
広場に集まった獣人たちと、シルフィ、ガルドを前に、俺はメモ帳を掲げた。
「今日から、村の業務をいくつかの『部門』に分ける。それぞれの適性に合わせてタスクを振るぞ」
PMの基本は、適材適所の人員配置だ。
「まずは『農業部門』。カレンダーから出たこの魔導トラクターを使えば、少人数で広大な畑を管理できる。ガロ族長、機械の運転と農地の管理を任せたい。できるか?」
「な、なるほど。この鉄の馬に乗って畑を走れば良いのですね。我々ウルフファングは勘が良いのですぐに乗りこなしてみせます!」
ガロはトラクターの運転席に乗り込み、すぐにハンドルとレバーの操作を理解したようだった。
「次に『建築・インフラ部門』。ガルドがリーダーだ。獣人の中から力自慢を十人ほどつけて、道幅の拡張や倉庫の増設を頼む」
「ガハハ! 任せときな村長! こいつら、昨日家を建てた時からすっかり建築の虜になっちまってるからな!」
ガルドの後ろで、筋骨隆々の獣人たちが「俺に石を運ばせてくれ!」と目を輝かせている。
「そしてルナがリーダーの『警備・探索部門』。残りの獣人と交代制で、村の周辺警備と、近隣の森での食糧(果物など)の採集を頼む」
「はいっ! アタシの鼻に任せてください!」
「最後に、シルフィ。君は俺の直属の『秘書兼・遊撃魔法サポート』だ。各部門で魔力が必要になったら駆けつけてやってくれ」
「承知いたしました、タクト様! この身と魔力、すべてタクト様のために!」
見事な組織図が完成した。
トラクターの轟音と共にガロ族長が畑を耕し始め、ガルド率いる建築部隊がドスドスと石材を運び、ルナの警備部隊が風のように荒野を駆けていく。
「ふむ、完璧なチームビルディングだ」
俺は湧き水で淹れたハーブティー(ルナが採ってきた)を飲みながら、それぞれのタスクが滞りなく進むのを眺めていた。
自分が手を動かさずとも、組織が自律して最適に動く。PM冥利に尽きる瞬間である。
(残り354日。明日は何が出る?)




