表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
10/89

第10話:【10日目】三十人の獣人と、一瞬で建つ集合住宅(タスクフォース)

 獣人たちを乗せたキャリッジが村に到着したのは、翌朝のことだった。


「おおおっ……これが、噂の……!」

「畑が自動で水を撒いているぞ!?」


 初めて見る魔導スプリンクラーや巨大氷室、そしてシルフィやガルドの生み出したインフラに、獣人たちは目を丸くして驚愕していた。

 そんな彼らを前に、俺は拡声器代わりに手を作って宣言した。


「全員、よく聞いてくれ! 今日から君たちはこの村の正式な『社員』だ! だが、今のままでは君たちが住む家がない!」

「そ、そうですね。我々は外で野宿でも構いませんが……」

「ダメだ。劣悪な居住環境は健康を損なう。というわけで、今日の最優先タスクは『全員分の住居の建設』だ!」


 三十人分の家を一日で建てる。

 普通に考えれば正気の沙汰ではないスケジュールだが、俺には秘策があった。

 俺は『日めくりカレンダー』の前に立ち、「残り355日」の紙をめくる。


 光の粒子と共に現れたのは、小さな木箱に入った大量の「ブロック」のようなおもちゃだった。


『SSRアイテム【魔導ユニットハウス展開キット(×30)】を獲得しました』

『※平らな地面に置いて魔力を込めるだけで、家具・空調完備の快適なログハウスが瞬時に展開されます』


「……来た! 超高効率のプレハブ住宅!」


 これでガルドの作業をさらに極限まで圧縮できる。

 俺はメモ帳を取り出し、即席のタスクフォース(特別チーム)を編成した。


「族長、あんたの名前は?」

「ガロ、と申します」

「よし、ガロ。あんたたち獣人三十人の身体能力を見込んで頼みがある。ガルドの指示に従って、家の『基礎』となる地面の整地と、ブロックの配置作業をやってくれ」

「整地と配置、ですね。承知いたしました!」

「シルフィは彼らの体力が切れないよう、適度な魔法サポートと給水係だ。ガルドは全体の監督と、最終的な魔力注入による『展開』を頼む」


 俺の号令で、三十人の獣人たちによる怒涛の建築ラッシュが始まった。


「そこの地面をもっと踏み固めろ! 獣人の脚力を見せてみやがれ!」

「おおおっ! 任せろドワーフの旦那ァ!」


 ガルドの的確な指示のもと、獣人たちは驚異的なスピードで荒野を整地していく。重機も真っ青の馬力だ。

 整地された場所に、先ほどのブロックが等間隔で置かれていく。


「よし、配置完了だ! シルフィ嬢ちゃん、魔力注入!」

「はいっ! 【魔力充填マナ・バースト】!」


 シルフィが杖を振るうと、置かれたブロックが次々と光を放ち、ズズズッという音と共に、瞬く間に立派な一軒家ユニットハウスへと変形・展開していった。


「うおおおおっ!? 家が、家が生えてきたぞ!」

「すげええぇぇぇ!」


 自分たちが少し地面をならしただけで、あっという間に家が建っていく様に、獣人たちは大興奮だ。

 彼らの士気は最高潮に達し、午後には三十棟の真新しい住宅が綺麗に立ち並ぶ『居住区』が完成してしまった。


「終わった……」


 夕陽に照らされた新興住宅地を見つめ、ガロ族長が震える声で呟いた。


「どうだ、自分の家を持った気分は?」

「信じられません……。今まで、雨風をしのぐためだけに洞窟で震えていた我々が、こんな立派な家に……。しかも、中には柔らかいベッドまで……!」


 ガロは俺の前に膝をつき、深い感謝の意を示した。


「タクト村長。我々一族は、命に代えてもこの村のために尽くします! どんな過酷な労働でも命じてください!」

「だから、過酷な労働はさせないって言ってるだろ。労働は1日8時間、今は17時だ。今日の業務は終了(定時退社)!」


 俺がそう宣言すると、シルフィとルナが巨大なお盆を持って走ってきた。


「タクト様! 豊穣祭のプレイベントとして、大宴会の準備が整いました!」

「村長! お肉はないけど、世界樹のお芋のホクホク焼き、最高です!」


 村の広場には、三十棟の家を囲むように焚き火が焚かれ、冷えた湧き水と山盛りの料理が用意されていた。

 俺は湧き水の入った木杯を高く掲げた。


「新しい仲間たちへ。そして、誰も過労死しない、最高のホワイト村の未来に……乾杯!」


「「「乾杯!!」」」


 獣人たちの歓声が、夕暮れの荒野に響き渡る。

 1日1歩の確実な前進は、今や大きなうねりとなって、この世界を塗り替えようとしていた。

 この調子なら、魔王が復活したところで、コタツでお茶でも飲ませて大人しくさせられるかもしれない。


 春の陣の終わり。俺のホワイト村経営は、最高のスタートダッシュを決めていた。


(残り356日。明日は何が出る?)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ