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第119話:【119日目】慰労会(打ち上げ)と、過去との決別

 119日目の夕方。

 復興作業が一段落したことを祝い、村の広場では過去最大規模の「大慰労会(打ち上げ)」が開催された。


 セシル率いる調理部隊が、【魔導屋台セット】と【炊き出し鍋】をフル稼働させ、数千人分の極上料理を振る舞う。

 唐揚げ、ステーキ、焼きそば、そして世界樹の野菜を使った特製サラダ。


「うおおおおっ! 美味すぎる! なんだこの肉の柔らかさは!」

「俺たち、王都でこんな美味いもの食ったことないぞ……っ!」


 初めてホワイト村のまかないを口にした元王国兵たちは、全員が涙を流しながら料理をかき込んでいた。

 アーサーやザンギュラ、ルナたちも、彼らと肩を組んで酒を酌み交わしている。


 タクトは広場の端から、その光景を静かに見守っていた。

 すると、近くの木陰に一人で座り、どんぶりを抱えている元ブラック社長の姿が目に入った。

 彼は、スー局長から配給された「特製豚汁」を、震える手ですすっていた。


「……あ、あたたかい……」


 社長の目から、大粒の涙がこぼれ落ちた。


「私が……私が今まで作ってきた組織には、こんな温かい場所は……どこにもなかった……」


 恐怖と搾取で縛り付けた組織では、誰も心から笑っていなかった。

 自分の手でモップを握り、へとへとになるまで働いた後に食べる温かい一杯の豚汁。彼はようやく、自分がどれほど空虚なものを追い求めていたかを悟ったのだ。


「……社長」


 タクトが声をかけると、彼はビクッと肩を震わせた。

 しかしタクトは、もう彼を「トラウマの元凶」としては見ていなかった。ただの一人の、再出発を必要としている迷える労働者だ。


「明日も、トイレの清掃当番が入ってるぞ。遅刻するなよ」

「……はい。タクト……いや、タクト村長。ありがとうございます……」


 深く頭を下げる男の背中を見て、タクトの心の中にあった最後のしこりが、完全に消え去った。


(残り245日。明日は何が出る?)

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