第108話:【108日目】進軍する狂戦士と、システムアップデートの警告
ブラック騎士団一万の進軍開始を受け、ホワイト村は即座に迎撃態勢に入った。
108日目の朝。
俺は村の防衛リソースをさらに強化するため、日めくりカレンダーの前に立った。
相手は痛みも疲労も感じない洗脳兵士だ。彼らを傷つけずに無力化する、強力な広域制圧アイテムがどうしても必要だった。
「頼むぞ。今の村に一番必要なものを出してくれ」
祈るような気持ちで、「残り257日」の紙をペリッとめくる。
しかし――いつものような、黄金の光の粒子は現れなかった。
代わりに、カレンダーの台座部分から、チカチカと不吉な赤い光が明滅し始めた。そして、空中に半透明のアラート画面が浮かび上がる。
『※重要なお知らせ:明日より3日間、日めくりカレンダーはメジャーアップデート(Ver2.0への移行)のため、機能を一時停止いたします』
『※アップデート期間中、アイテムのドロップは一切行われません。日数のカウント(日めくり)のみ継続されます』
「……は?」
俺は自分の目を疑った。
機能停止? アイテムが出ない? 今、この絶体絶命のタイミングで!?
「タクト様! どうしましたか、赤い光が……」
駆けつけてきたシルフィが、空中のアラートを読んで絶句した。
前世のIT企業でもよくあった。システムが最も稼働してほしい繁忙期に限って、謎の強制アップデートが走り、業務が完全にストップする地獄の現象。
それが、異世界最高のインフラであるこのカレンダーにも起こるというのか。
「……落ち着け。PMの基本は、不測の事態を想定したリソース管理だ」
俺は深呼吸をして、村役場に幹部たちを集めた。
ザンギュラ、ルナ、ガルド、シオン、そしてアーサーが、ホログラム円卓を囲む。
「みんな、聞いてくれ。明日から3日間、カレンダーから新しいアイテムは出ない」
「なんだと!? じゃあ、迫ってきてる一万の狂戦士どもを、今ある手持ちの魔導具だけで迎え撃つってことか!?」
ガルドがバンッと机を叩いた。
「ああ。しかも、シオンのドローン映像を見る限り、彼らはクロサキの【絶対的やりがい搾取】によって完全に洗脳されている。俺たちが今までやってきたような『快適な罠(温泉やご飯)』では、足を止めることはできない」
俺の言葉に、円卓に重苦しい空気が流れる。
俺の強さの根源は、カレンダーがもたらすSSRアイテムだ。それがない俺は、ただの「ちょっとタスク管理が得意なだけの一般人」にすぎない。
(俺に、この村を守りきれるのか……?)
心の奥底で、クロサキに対する前世のトラウマが鎌をもたげる。
『君の代わりなんていくらでもいる』。あの声が、耳にこびりついて離れない。
俺の顔色が悪くなっているのを、村人たちは敏感に察知していた。
(残り256日。明日は何が出る?)




