第107話:【107日目】絶対的やりがい搾取と、CIOの警告
悪夢を見た翌日。
村はいつも通り、平和で活気に満ちた朝を迎えていた。
俺は「残り258日」の紙をめくり、『SSRアイテム【自動修復・魔導コーティングスプレー】(※吹きかけるだけで道具や武器の劣化を自動修復するスプレー)』を獲得し、各部署のメンテナンス作業を効率化させた。
昼下がり。村役場で各部門の進捗を確認していると、最高情報責任者のシオンが、血相を変えて飛び込んできた。
「タクト様! 緊急事態です! 南の聖王都でクーデターが起きました!」
「クーデターだと?」
シオンがホログラム円卓に投影した映像には、王都の城門を埋め尽くす、異様な雰囲気の王国軍の姿が映し出されていた。
彼らの目は虚ろだが、その動きには一切の迷いも疲労も見られない。ただひたすらに、異常な統制で武装を整えている。
「王国の諜報員(元部下)からの情報によれば、昨日、王都で新たな『異邦人』が召喚されたそうです。クロサキと名乗るその男は、現れた直後に固有スキルを発動し、王族から軍の末端に至るまで、国全体を支配してしまいました」
「クロサキ……!?」
その名を聞いた瞬間、俺の背筋に冷たい汗が走った。
まさか。そんな偶然があるはずがない。だが、この胸のざわつきはなんだ。
「その男の固有スキルは、なんだ?」
「【絶対的やりがい搾取】という精神支配魔法だそうです」
シオンは青ざめた顔で説明を続けた。
「対象者に『恐怖』と『空虚な使命感』を植え付け、疲労も恐怖も感じさせずに24時間不眠不休で戦わせる……文字通り、魂をすり減らして動く『狂戦士』に変える恐ろしい洗脳魔法です」
「……」
「現在、クロサキは王国軍を『ブラック騎士団』と改名し、この北のホワイト村を制圧するための進軍を開始しました。その数、約一万! 彼らは食事も睡眠もとらず、ただひたすらにこちらへ向かっています!」
俺は拳を強く握りしめた。
間違いない。前世で俺たち社員を洗脳し、過労死するまで使い潰したあのブラック社長だ。あいつが、この異世界でも同じことを――しかも魔法の力を使って、国規模でやっている。
「タクト様……お顔の色が優れません。ご存知の相手なのですか?」
「ああ。……俺の、前世での『最悪の上司』だ」
俺の言葉に、シオンが息を呑む。
相手は痛みも疲労も感じない一万の狂戦士。かつて傭兵団を無力化した「温泉やご飯による罠(快適さの提供)」は、洗脳されている彼らには通用しないだろう。
「絶対に、この村には指一本触れさせない」
俺は村の防衛システムを最大レベルに引き上げるため、CSOのザンギュラと元勇者アーサーの招集を指示した。
前世のトラウマとの、決着の時が迫っていた。
(残り257日。明日は何が出る?)




