第104話:【104日目】組織のサイロ化と、シャッフルランチ
眼精疲労も解消され、村は今日も平和に回っている。
お昼時。俺がフードコートに向かうと、そこには少し気になる光景が広がっていた。
500人規模の広大な飲食スペース。しかし、座っているグループをよく見ると、建築部隊はドワーフ同士で、農業部隊(獣人)は獣人同士で、防衛部隊(魔族)は魔族同士で固まって食事をとっていたのだ。
「タクト様。部署ごとの連携は取れていますが、休憩時間などではどうしても『同じ部署の気の合う仲間』だけで固まってしまう傾向があるようです」
シルフィが、サンドイッチをかじりながら指摘した。
「典型的な『組織のサイロ化(タコツボ化)』の初期症状だな」
人間関係が固定化されると、部署間の雑談がなくなり、新しいアイデア(イノベーション)が生まれにくくなる。
異なる価値観を持つ者同士の偶然の交流こそが、組織を成長させるのだ。
「よし、明日のランチは強制的に『席替え』をしよう」
104日目の朝。俺は「残り261日」の紙をめくった。
現れたのは、ルーレット盤が埋め込まれたような、巨大で不思議な円卓のセットだった。
『SSRアイテム【運命の交差点・魔導ランチテーブル】を獲得しました』
『※社員証(魔石)をかざすと、部署や種族の垣根を越えた「ランダムな四人一組」を自動でマッチングし、最適な席へ案内します。会話が弾む絶品コース料理付き』
「キタ! これぞ最強の社内交流ツール、シャッフルランチ!」
お昼のチャイムが鳴り、フードコートに集まった500人の社員たちに、俺はこのシステムを説明した。
最初は「知らない人と食べるなんて緊張する」と戸惑っていた村人たちだったが、テーブルに着くと、その不安は一瞬で吹き飛んだ。
「おっ、勇者の兄ちゃんじゃないか! 同じ席になるとはな!」
「あ、ガルドさん! それに、そちらは元王国軍の……」
あるテーブルでは、ドワーフのガルド、勇者アーサー、元王国軍の兵士、そしてゴブリンという、かつてなら絶対にあり得ない組み合わせが同席していた。
テーブルの中央には、それぞれの好物(アーサーには極上焼肉、ガルドには熱燗など)が自動で提供される。
美味しいご飯を前にすれば、自然と会話は弾むものだ。
「実は俺様、新しい輸送用カートの車輪の構造で悩んでてよ」
「あ、それなら俺が野宿の時に使っていた、荷車を軽くする生活魔法(サバイバル術)が応用できるかもしれませんよ!」
「フゴッ! オイラたちの農業用の肥料運びにも、それ使ってほしいな!」
異なる背景を持つ者同士の雑談から、業務を改善する新しいアイデアが次々と生まれていく。
フードコート中が、活気に満ちた笑い声と熱を帯びた議論で包まれていた。
部署の壁を越えたコミュニケーションが、ホワイト村をまた一つ上のステージへと押し上げたのだった。
(残り260日。明日は何が出る?)




