第103話:【103日目】デスクワークの職業病と、極上アイケア
組織の風通しが良くなり、各部門の連携はかつてないほどスムーズになった。
しかし、103日目の朝。村役場(PMO)に出社した俺は、ホログラム円卓を囲む幹部たちの異変に気づいた。
「……うう。目が、目がショボショボする……。肩甲骨の裏側が鉛のように重いぞ……」
グレイシア(CFO)が、コタツの中で目元を指で揉みほぐしている。
「カタカタ……。私もだ。昨夜、深夜まで統合基幹システムの魔法陣を最適化していたせいで、眼窩の奥がジンジンと痛む……」
ネクロディア(CDO)に至っては、骸骨なのに「目の奥が痛い」と訴えていた。
彼らは完全に「VDT症候群(眼精疲労と肩こり)」に陥っていた。
インフラがデジタル(魔導)化され、端末やホログラム画面を見る時間が増えたことで、現代特有の職業病がこの異世界にも蔓延し始めていたのだ。
「いかん。慢性的な眼精疲労は、睡眠の質を下げ、深刻なパフォーマンス低下(労災)を招く」
俺は即座に「残り262日」のカレンダーをめくった。
光の粒子が現れたのは、スタイリッシュな目元用のゴーグルと、首に巻くリングだった。
『SSRアイテム【極上・魔導アイケアセット&ネックウォーマー】を獲得しました』
『※装着した瞬間に、最適な温度のスチームと魔法の微振動が発生し、目と首の蓄積疲労をわずか三分で完全にリセットします』
「よし! これぞ現代のデスクワーカーを救う最強のリフレッシュツール!」
俺はすぐさま、目を真っ赤にしているグレイシアとネクロディアにゴーグルとネックウォーマーを装着させた。
「な、なんだこれは? 目元がじんわりと温かく……ああっ!」
「ヒョォォォッ! 首の骨の隙間に、絶妙な振動が……っ!」
二人は椅子に深く背中を預け、だらしなく口を開けて完全に昇天してしまった。
三分後。ピピッと終了のアラームが鳴り、ゴーグルを外した二人の顔は、憑き物が落ちたようにスッキリとしていた。
「す、素晴らしい……! 視界が信じられないほどクリアだ! 端末の小さな数字も、全くぼやけずに見えるぞ!」
「首の可動域が広がった! これなら、あと十時間はコードが書けそうだ!」
「こらこら、徹夜は禁止だ。目は大切にしろよ」
俺は村の全社員(デスクワーク組)にこのアイケアセットを配布し、「一時間に一回は目を休めること」を就業規則に追加した。
どれだけ便利なシステムがあっても、それを使う人間の体が資本である。
細やかなヘルスケアの徹底が、ホワイト村の圧倒的な生産性を支えているのだ。
(残り261日。明日は何が出る?)




