第101話:【101日目】燃え尽き症候群と、ABW(フリーアドレス)の導入
開拓100日記念の大感謝祭から一夜明けた、101日目の朝。
村役場(PMO)で温かいコーヒーを飲んでいた俺は、窓の外を歩く社員(村人)たちの様子を見て、小さく息を吐いた。
「……みんな、少し足取りが重いな」
「タクト様。昨日の祭りが楽しすぎた反動で、村全体に『燃え尽き症候群』の兆候が見られます」
秘書のシルフィが、端末のヘルスケアデータを投影しながら報告してくれた。
大規模なプロジェクト(お祭り)が終わった直後は、どうしても目標を見失い、モチベーションが低下しやすい。前世のIT企業でも、大型リリース直後のオフィスはまるでお通夜のように静まり返っていたものだ。
「よし。環境を変えて、脳に新しい刺激を与えよう」
俺は日めくりカレンダーの前に立ち、「残り264日」の紙をめくった。
光の粒子が収束し、現れたのは、折り畳み式のスタイリッシュなデスクと、座り心地の良さそうなチェアのセットだった。
『SSRアイテム【環境可変・魔導ワークスペース】を獲得しました』
『※持ち運び可能な魔法のデスクセットです。展開すると周囲のノイズを遮断し、どこでも完璧な集中環境を構築できます』
「キタ! これぞ次世代の働き方、ABWだ!」
俺はすぐさま全社員に端末で通知を飛ばした。
『本日から、固定のデスク(持ち場)を廃止し、フリーアドレス制を導入する。この魔導デスクを使って、自分が一番集中できる場所で仕事をしてくれ!』
「えっ!? 自分の部署にいなくてもいいんですか!?」
驚く村人たちに、俺は魔導デスクを展開して見せた。
ボタン一つで、アタッシュケースほどの箱が、広々としたデスクと疲れない椅子に早変わりする。
数時間後。村の景色は一変していた。
最高財務責任者のグレイシアは、大浴場の休憩室(コタツの中)にデスクを展開し、湯上がりのフルーツ牛乳を飲みながら予算管理の承認ボタンを押している。
最高デジタル責任者のネクロディアは、見晴らしの良いタワーマンションの屋上で、風に吹かれながら魔法陣を構築している。
そして獣人たちは、ポカポカと暖かい芝生の上にデスクを並べ、ピクニック気分で農作物の在庫管理をしていた。
「タクト様! 太陽の下でお仕事をするの、すごく気持ちいいです!」
ルナが尻尾を振りながら、書類にサインをしている。
場所を変えるだけで、凝り固まった思考は柔軟になり、祭りの後の停滞感は完全に吹き飛んだ。
社員の自主性を重んじる自由な働き方が、ホワイト村の生産性をさらに一段階引き上げたのだった。
(残り263日。明日は何が出る?)




