神凪の瞳
第48話です!
是非楽しんでください!
「その黒い闘気、確かミノリという名だったか?そいつと似た闘気を貴様が放っているがその神の使徒とやらに関係あるのか?」
俺は目の前にいるアニマ・フェルマータに声をかける。
「おや!あなたもミノリさんを知っているのですね!」
アニマ・フェルマータは楽しそうに声を返す。
「ただ見ただけだ。それよりも俺の質問に答えろ。ぐっ」
突然俺の身体が重くなる。
俺を拘束している機械が壊れてもなお、俺にかかる重さは変わらず地面にヒビを広げながら押し付けられる。
「嗚呼、なんと愚か!なんと無様!主に仕えることに対する嗜好を知らぬ、無知蒙昧な下等生物が…よりにもよって主に仕えるものの中でも尊き地位である第二司教、最も主の命を遂行する私が“最も敬愛”するアニマ・フェルマータ様にこともあろうに貴様と呼ぶだけでは飽き足らず要求までするなど有罪です!私が貴様に告げよう!死刑宣告!己が罪に潰されろ!死刑執行!」
俺の身体は更に重くなり軋み、吐血する。
「お待ちなさい。カルミナ・レクスさん。」
アニマ・フェルマータが耳障りな声で喚き散らしていた女を壁に叩きつけ、首を締め上げた。
「貴方の主に対する熱い思い。とても!とても!感動致しました!しかし、私を"最も敬愛"している。この言葉は到底容認することができません!私のような無能、無価値、無才、愚鈍、塵芥に等しい出来損ない。存在するだけで世界を穢す、名もなき失敗作に過ぎぬこの身を。
主と同列に語ることすら烏滸がましい。
主は至高、絶対、完全無欠にして万物を導く光そのもの。
その御威光、その御慈悲、その御意志は、この矮小な身では到底理解すら及ばぬ領域に在るのです。
それなのに……それなのに!そんな主を差し置いて、あろうことかこの私を“最も敬愛”などと、あなた、自らの信仰を穢した罪、理解しているのですか?
主を差し置き、塵を崇めたその愚行、万死に値する!あなたの言葉を借りるなら有罪!死刑宣告!」
言い終えたのち、アニマは女から手を離す、すると先程の俺と同じ状態に女がなる。
「申し訳ありません!申し訳ありません!主よ!そのような意図がないにしても主を少しでも下げるような言葉を吐いてしまった私をお許しください!ああ……なんという愚行、なんという不敬...!無能、無価値、無才、愚鈍、塵芥に等しいこの私が、あろうことか主の御名を穢すなど……!その事実だけで万死に値する罪...!どうか……どうかこの愚かなる身に罰を...!焼き尽くされようと、砕かれようと、朽ち果てようと構いません...!それでも尚、主への忠誠だけは、最期の瞬間まで捧げ続けることをお許しください……!ああ、主よ……至高にして絶対なる御方...!その御慈悲、その御威光、その御意志こそがこの世界の理……!どうか!この塵に等しい存在が、再び主を穢すことなきよう……御裁きと、御導きを……!」
ひとしきり喚いたのち女は首に下げていた十字架を天に掲げる。
するとその十字架は女の身体へと入っていく。
完全に入ったところで女は魂が抜けたように倒れる。
かと思えばいきなり起き上がる。
そして色が紫から黒へと変色する。
「カルミナさん!あなたの神に対する謝罪は聞き届けられたようです!その証拠にあなたは主の寵愛である遺物と同化することができ、主の寵愛を賜るチャンスを手に入れたのですから!そしてあなたも感じたことでしょう!我々は愚かな生き物です!意図してないとはいえ我々が敬愛する主を下げる発言をするほど愚かな生き物です!そのため完全無欠にして決して間違わない神に導いていただく必要があるのです!主に導いていただけるチャンスをそこにいる神凪イサリさんにもあげていただけませんか?」
勝手に話が進んでいるがどうしたものか
正直なところこいつらと関わりたくないからさっさと逃げたいが今の俺はあのカルミナという奴のせいで内臓が潰れ、両足に限らず身体中の骨が折れている。
万全な状態でもアニマ・フェルマータから逃げられるかどうか微妙なところだ。
それを今こんな状態で、しかも先程遺物との同化を成功させたという女が増えた状況。ここはこいつらの条件を飲んだ方が幾分かマシだろう。
「さて、こちらの話は終わりましたので神凪イサリさん。あなたにはあなたの遺物である空転ノ巻と同化していただきたいのです!神の寵愛を受ければ莫大な力が手に入りますよ!その力があればあなたの里を変えられるかもしれませんね!」
アニマ・フェルマータは俺に空転ノ巻を差し出す。
俺はその手をとった
*
自分は不滅ノ翼5番隊の副隊長、フィオラ。
自分はミレーナ隊長に代わりこの場に来た5番隊のメンバーを指揮し、収監所の鎮圧を図っている。
相手には理性を失ったのか遺物の力を無闇に使うものたちもいるがミレーナ隊長が司教を足止めしてくれているためまだ拮抗状態を維持している。
そのミレーナ隊長と第八司教を名乗ったものの戦闘は自分から見ても異次元のレベルだった。
自分は息を飲んだ。
あの二人の間にある空間だけ、まるで別の世界のように感じられる。
攻防は目で追えているはずなのに、“理解”ができない。
ミレーナ隊長が動く。
最小限の踏み込み、そして無駄な力が一切ない拳。
それを最短距離で最速で繰り出した。
だが
第八司教は、それが“当たらない場所”にいた。
ミレーナ隊長の正拳突きのリーチは腕を伸ばしきったところが最長ではなく正拳突きによって発生する風圧によるカマイタチも範囲になる。
腕のリーチは目で見れば大体わかるが風圧の方は目で追えないためリーチを見極めるのが困難である。
にも関わらず第八司教は地面の削り具合から風圧が届くであろうギリギリの位置に身を置いていた。
しかもその位置はミレーナ隊長が正拳突きを放とうとした瞬間には既に移動をしていた場所だ。
そして第八司教はミレーナ隊長の攻撃が終了したと同時に動き出す。
第八司教の指先が、滑るように伸びる。
突きだろう。
正確に急所を狙っている。
しかしモーションがコンパクトのため、これならミレーナ隊長もギリギリの位置で交わして最短で反撃するだろう。
だがミレーナ隊長はその突きが放たれる瞬間に横に大きく飛んだ。
それと同時に突きを放ち終えた第八司教の指先から凄まじい突風が吹き上がる。
思わず目を閉じてしまったが慌てて目を開けて状況を把握する。
すると先程のミレーナ隊長の攻撃よりも広い範囲で地面が削れていた。
おそらく今いるミレーナ隊長の位置がこの攻撃に当たるか当たらないかのギリギリの位置なのだろう。
ミレーナ隊長は地面を大きく蹴り、第八司教との距離を詰めそのまま、体を回転させる。
肘。裏拳。掌底。
流れるように三撃。
しかし、これもギリギリの範囲で第八司教に交わされてしまう。
第八司教はカウンターで手刀をお見舞いしようとするがそれをミレーナ隊長がギリギリの所で交わして距離を取る。
「里の中でも優れた目。ミレーナよ、貴様はそう言われていたな。俺は当時、俺たちの他者の闘気の色を見る色彩数がより高いのだと思っていた。実際高かったのだろうがそれはあくまでおまけだ。貴様も見えているのだろう?」
「答えろ!イサリ!その目の力をお前が手に入れたのはその"黒い"闘気と関係あるのか!?お前の闘気の色は緑だったはずだ!」
「その目ということはやはりか、ミレーナ、貴様もこのレベルまで達していたのか。俺は遺物に頼ってこのレベルになったがお前はもともとの才能でこのレベルに至ったのか。やはり素晴らしい!俺が新たに作る神凪の里にお前は必要だ!俺の下につけ、神凪ミレーナよ!」
目?2人はなんの話をしているんだ?
2人の共通点は神凪一族。しかし神凪一族なら遺物の適合率を色で判断できる目は標準装備のはず。
ならなんで、お前も持っているのか?という発言が出るんだ?
「神凪一族の目、今でこそ、血が薄れて遺物の適合率を色で判断できるという能力だけになりました。こちらも中々素晴らしい能力なのですが昔は更に特殊な能力がありました。それがオーラ、彼らがいうところの闘気を放出する技術です。簡単に言えば遺物がなくとも遺物の力に似た力を使用できるのです。彼らが神に選ばれた一族というのもあながち間違いではありません。あの時代は最も主の寵愛を受けた一族でしょう。」
自分は声の方を向き、すぐに距離をとる。
自分の隣に第二司教が立っていた。
「警戒しなくてもいいですよ。イサリさんからミレーナさんとのリベンジマッチをしたいという頼みを受けました。これから主のために身を粉にして働くものの頼みはできる限り聞き届けたいのでイサリさんが集中して戦える環境を作っているのです。私は彼らの勝負が終わるまで手を出しません。人というのはちょっとしたきっかけで大きく変わってしまいます。それが良い方でも悪い方でも。なので今のところはイサリさんには悔いの残らないよう戦ってもらっております。ただ、貴方がお二人の勝負の邪魔をするのであれば私は全力でそれを邪魔します。」
「なら、今暴れてる連中をおとなしくしてくれると助かるのですが。」
「それは無理ですね。彼らは主に己が身を捧げた。これは素晴らしいことです。その彼らが破壊行動を取りたいと本能で感じているのです。私は彼らにもイサリさん同様に好きに活動してほしいのです。主に身を捧げたもの達は主の所有物。私こどきが止めるなど滅相もない。それと、フィオラさん、貴方の疑問にお答えする途中でした。」
「自分に情報を与えるなんて何が目的だ?」
自分は第二司教の表情から少しでも情報を抜き取ろうと試みる。
「警戒しなくても大丈夫ですよ。これはイサリさんがリベンジマッチをするための時間稼ぎの一環ですから。私があなたと戦闘になったらミレーナさんの集中が途切れてしまうでしょう。それはイサリさんが望んだことか判断しかねるのでやめておきたいので会話でお二人方の勝負に介入しないでいただこうと思いました。おっと、また話が脱線してしまいましたね。貴方の疑問のお答えをしなくては、イサリさんとミレーナさんは神凪一族の中でごく稀に発現する魂魄眼を手に入れたのです。」
魂魄眼?コイツは何を言っているんだ?
「魂魄眼といわれただけではよくわかりませんよね。ではまずは神凪一族の目について説明していきましょう。」
*
ある民族には物や人からオーラのような色を感じる力を持つ者が多く生まれた。
最初はただ色が見えるだけ。特段気にするものでもなかった。
しかし一般に遺物が広く広まったとき、かの一族の地位は向上した。
そしてかのものたちは上長した。
そして当時最も特異な目を持つものにより民族は選定される。
より優秀な目を持つもののみを残し、他は処分した。
そして最も特異な目を持つものは自分の性を民族いや、一族の名にした。
それこそが神凪一族である。
神凪一族は遺物と人のオーラを色で見てより近い色のものがその遺物への適合率が高いことを理解している。
そのため見える色の幅が大きいものほど優秀とされている。
黒は200色あるねんという。しかし常人では黒は黒、一緒くたにして見分けることができない。
しかし神凪一族で特に優秀なものはそれを見分けることができる。
得てしてそういった特異な目を持つものは神凪一族の中でも更に特異な目を持つ。
それこそが神凪一族で魂魄眼と呼ばれる代物である。
神凪一族はオーラもとい闘気を色で見ることができる。そして魂魄眼を持つものはその色から相手の感情を読み取ることができる。
理屈はわからないが魂魄眼を持つものはその色から様々な情報を得る。
主な使い方としては尋問であろう。
魂魄眼を持つものは他者が嘘をついたかどうかも判断できる。彼ら曰く色からそんな感じがするそうだ。
そしてこれは戦闘にも応用される。
戦闘する時人はまずどこを攻撃するか思考する。魂魄眼を持つものは思考して導き出された軌道や範囲が色となって見え、そこから殺意を読み取る。攻撃の軌道と範囲が色として現れているのだから回避行動を取ることができる。
言うなれば未来予知に近しいともいえる。
*
「そんな魂魄眼ですが希少性から私が知っている限り5名しか開眼したものはおりません。そのうちの2人が今目の前で戦闘を行っているイサリさんとミレーナさんです。他3名は貴方が知っているか微妙ですが教えて差し上げましょう。1人は神凪一族を創設した使者、神凪ネイア。そして残りは剣神アレクと共にヒュベルに挑んだ大魔法使いと呼ばれしもの、神凪カインとその妹です。神凪ネイアさんに関しては直接戦闘を見たことはないですが私の祖父母の代の方々は口を揃えて悪魔のような人物だったそうです。神凪カインさんに関しては剣神アレクの冒険譚にも出てきますからご存知かと思います。あれは本当に当時のことがよく再現されている素晴らしき本ですね。当時を見ている私がいうのですから間違いありません。カインさんの時代に2人、そしてイサリさんの代に2人。ネイアさんの時代は直接見たわけではないのでわかりませんがもしかしたら魂魄眼を持つものは同世代に2人生まれるのかもしれませんね。そして勝ったものが歴史の転換点になる。そう考えますとますますイサリさんには主のために勤しんでいただきたいですね。そうすればソーマネクルに完璧な魂魄眼が2つになります。」
「完璧……?それだと完璧ではない魂魄眼があるみたいじゃないですか?」
自分は思わず、低く呟く。
だがその言葉に、第二司教、アニマ・フェルマータは、嬉しそうに目を細めた。
「ええ、ええ、ええ。そうなんですよ!恥ずかしい話、完璧ではない魂魄眼でしたら存在致します。」
そういって第二司教は前髪を掻き上げる。
そしてひたいに縫い目があり、それを解く。
そして現れる。瞳が
「この瞳は魂魄眼を開眼された1人、神凪カインさんの妹、神凪サインさんの瞳です。いえね、当時は神凪狩りが流行してましてね。そんな中、私がタルマカ王国で行ったデモンストレーションにより遺物の価値が高まりまして、神凪狩りに更にはしゃくがかかりました。遺物の適合率を見ることができる神凪一族。その瞳は多額の額で取引されてました。」
…?
神凪一族の瞳は確か、
「その感じ、フィオラさんも知っていましたか。そう!神凪一族の瞳を例え自分に移植した所で何の意味もない!なぜなら彼らの目はあくまで共感覚の一種であり、瞳自体にそのような力は全く存在しないからです!
しかし、当時はそのようなことは知られておりませんでした!というよりも神凪狩りを得てその事実が周知されだしたのですからその事実が周知されるまで神凪一族は狩られ続けた!
そこで彼らは我々ソーマネクルに助けを求めたのです!
我々としても主の恩恵を授かりし一族を保護したかったのと報酬が魅力的だったためその要望に応えました!
そして我々は主の教えをハンティングを楽しむ方々に解き、綺麗に掃除させていただきました。そして神凪一族の方々にどれだけ主から恩恵を受けた一族なのかを解きました。まぁ、それで若干選民思想が強い一族になってしまいましたがそれは些末なことでしょう。
それよりも!私が話したいのは報酬の話です!何と神凪一族の方々はソーマネクルの助けを求めるために神凪カインの妹、神凪サインさんの遺体を差し出したのです!
主の恩恵を最大限に得た魂魄眼を持つ少女。まさに魅力的でした。
私はその彼女の遺体から目を取り出して自分に移植しました。少しでも主の恩恵を受けれたらと思い。
そして奇跡が起きたのです!何と移植しても意味がないとされていた神凪一族の瞳、しかし神凪サインさんの瞳を移植した私は確かにこの目を通して遺物の色、闘気の色が見えるようになったのです!魂魄眼のように未来予知のような芸当はできませんがこのように、」
そういって第二司教は瓦礫の方に手を伸ばす。
「隠れているネズミを見つけることは可能になったのです。」
自分が隙を見て第二司教へと仕掛けるために準備していたものが破壊される。
「貴方の遺物、中々面白そうですね。鈴が関係しているのですか?先程、貴方の色と似た色を見つけたので破壊したのですが針の後ろに吊るされた鈴、これは何のためのものですか?」
バレたのなら仕方がない、自分は自分の遺物である静鈴花を起動する。
静鈴花は神楽鈴のような見た目の遺物である。
この鈴を縦に強く振ると
スパッ!
音の届く範囲に斬撃を飛ばすことができる。
「なるほど、なるほど、なるほど。斬撃ですか、しかし弱いですね。そして頼りない。おそらくその斬撃はその音の発生源に近いほど威力を発する。しかし、どんだけ近くとも威力がそこまで高くないので先程の鈴のようにその音に共鳴して音を鳴らすものが必要だったのですね。それにより攻撃の範囲の延長ともう一つの音源による攻撃、要するに二つ目の斬撃を容易したわけですね。それも意味はないですが。」
第二司教の腕が自分を襲う。
自分はすぐに左右に2回鈴を鳴らす。
そして、自分と第二司教の間に結界が貼られ、第二司教の攻撃を防ぐ。
「斬撃以外にも結界を張れるのですか?」
自分は第二司教の言葉を無視して上下と正目に計3回鈴を鳴らす。
それと同時に鈴をつけた針を周囲に投げる。
「顕現せよ、異界からおりし人ならざるものよ。盟約によって我を守護せよ。第一閉門開!顕現せよ!ベルグラウス!」
自分の呼びかけに答えて漆黒の獣が姿を表す。
「斬撃を飛ばす遺物ではなく召喚系の遺物でしたか。さて、どのような遺物なのでしょうか?」
最後まで読んで頂きありがとうございました!
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そうでなくともこの作品が少しでも気に入っていただけたら今後も読んでいただけると幸いです。
改めまして最後まで読んでいただきありがとうございました!
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