久しぶりの主人公
第46話です!
是非楽しんでください!
ヒュベル ミノリ視点
私は今、目の前の敵に全く集中できていない。
こうして私が目の前の敵たちに足止めされている間にもみんなはそれぞれのアニマを相手している。
早くこいつらを片付けたいのにまだ1人も倒せていない。
正直、狼の獣人になる遺物使いと鎧に身を纏った遺物使いがかなり高い実力者だ。
この2人が他の6人を庇うように立ち回っていて鬱陶しい。
だから先に狼獣人と鎧を倒そうとすると他の6人の邪魔が入る。これまた鬱陶しい。
早くみんなを助けに行きたいのに!
焦りが、刀を鈍らせる。
狼獣人が床を蹴り、石畳が砕ける。
っ速い!
腕を振り上げる動作だけで風圧が走る。
私は半歩だけ身体を引き、刃を斜めに寝かせる。
鉤爪が振り下ろされる瞬間、私は刀でそれを受け止める。
腕が悲鳴を上げる。
重い。
腕ごと持っていかれそうになる。
「っ……!」
押し切られる前に身体を回転させる。
回転させることにより衝撃を逃す。
真っ直ぐ受けないことが今の最善の対処。
頭ではわかっていても実際にやろうとするとかなり難しい。
狼獣人の鉤爪が床にめり込む。
その隙を狙う。
私は一歩踏み込み、狼獣人の手首を狙って斬り上げる。
だが。
キンッ!
「っ!」
途中で止まる。
横から刀で受け止められたからである。
鎧の男だ。
男はそのまま横薙ぎに刀を振り、私を追撃しようとした。
私は即座に身体を沈める。
斬撃が頭上を通過する。
風が髪を揺らす。
速い。
今の横凪だけでわかる。
体重移動、足運び、腰の回転。
その一つ一つの動作に無駄がない。
こいつは私よりも剣術に優れている。
ハッキリ言って剣技において私は修羅丸さん以外に負けたことがなかった。
私は今、実践の敵として初めて私よりも優れた剣士と戦うことになる。
狼獣人の腕が再生し始める。
そう、これがさらに鬱陶しいのである。生半可な攻撃だとすぐに再生してくる。
多分アニマがあげたあの物体のせいだろう。
ただでさえ目の前の相手に集中できいないのにこんな状況って、
あぁ、ユキちゃんのように一斉攻撃できれば全て解決するのに。
というかさっきから連発してくるあの狼獣人の鉤爪や牙による攻撃。
あれかなりやばい!
なんなんなのあれ?
たった一振りで家を破壊するなんて。
あれと力比べしたら私は確実に押し負ける。
それが今、目の前で私より上の技量を持った相手と多くの仲間と協力して襲ってくる。
それにどういう訳か人工遺物を使用できない。
これは悪夢か何かなのだろうか?
鎧の男が踏み込む。
私は刀を構え直す。
来る!
恐ろしく速い突き。
私じゃなきゃ見のがしちゃうねっ!
私は刀身をわずかに傾けて弾く。
その瞬間、鎧の男が手首の返しで斬り上げ2撃目を入れてくる。
私は一歩引く。
さらに三撃目として斜め袈裟。
「……!」
私は刀身を滑らせて角度をずらす。
火花が散る。
衝撃が腕に響く。
重い。
技だけじゃなくて筋力もある。
それに追従するように狼獣人が横から来る。
爪が薙ぐ。
たまらず私は後ろへ跳ぶ。
爪が私の鼻先を通る。
そのまま着地と同時に地面を蹴る。
鎧の男の懐へ。
刃を逆手に持ち替える。
首を狙う。
だが、鎧の男はそれを読んでいた。
刀身で私の刃を受け流す。
同時に私の未曾有地に目掛けて膝蹴りを放とうとする。
私は咄嗟にそれを腕で受け止めるが衝撃が重い、骨が軋む。
狼獣人が後ろから飛びかかる。
私は身体を横に捻る。
牙が肩を掠める。
危ない。
本当に危ない。
ただでさえ強いのにこの2人連携もうまい。
狼が力で押す。
鎧が技で詰める。
しかも。
その周囲で六人が動いている。
私が攻める瞬間だけ邪魔してくる。
くそ……。
私は一歩下がる。
呼吸を整えようとしたとき狼獣人の牙が光る。
次の瞬間。
地面が爆ぜ、目の前に狼獣人の爪が襲いかかる。
私は先程の反省から正面から受けないように受け流す構えをとる。
狼の腕が振り抜かれる。
その動きに合わせて身体を回転させる。
私はその腕に沿って滑り込み、肩口を斬りにかかる。
しかしそれを他の6人が妨害してくる。
鎧の男が間合いを詰める。
刃が光る。
私は刃を合わせる。
キンッ!
衝撃が私を襲う。
このままだと押される。
私は刀身を捻り、相手の刀を滑らせる。
そしてさっきの仕返しに膝で鎧の男の腹を蹴る。
鎧の男がわずかに体勢を崩す。
追撃をしようとしたタイミングで狼獣人の爪が私を襲う。
私は剣を地面に突き刺し、身体を回転させる。
爪を避ける。
着地と同時に距離を取る。
息が荒い。
くそ……。
このままだと終わらない。
「……一人も倒せてない」
狼獣人が喉を鳴らす。
鎧の男が刀を構える。
六人が周囲を囲む。
包囲された。
「ミノリちゃん!自分の方に集中っ、グハァッ…」
ユキちゃんの声がしたためそっちを向いたら1人のアニマがユキちゃんのお腹を抉るようなパンチをくらわせていた。
その威力に思わずユキちゃんは血を吐き出した。
「ユキちゃん!」
「実に、実に、実に!いい働きをしてくれましたね!わざわざミノリさんの注意をこちらに向けて私の拳を喰らってくださりありがとうございます!これによりミノリさんは集中力が乱れて足止めがより長く継続することができます!それともうすぐで終わりそうですね。」
私はゆっくり息を吐いた。
私が不甲斐ないばかりにユキちゃんが攻撃される隙を作ってしまった。
焦るな、焦るな、焦るな。
落ち着け、落ち着け、落ち着け。
今、必要な思考は目の前の相手を殺すことだけ。
ユキちゃんが忠告してくれたことをしっかり守るんだ。
私は目の前の敵達に改めて向き合う。
ここは第四階層で城下町。周りには廃墟がたくさんある。
今、私の手持ちはナイフが2本,最長10mくらいのワイヤーが1本,包帯が1ロール
そして遺物はアクセルとダークそこに人工遺物を加えていたものの今は発動しない。
そのため私には今、圧倒的な火力はない。
その状態でどう勝つか?
相手全員の視線を一瞬でも私から外せたら。
そこで私はあることを思いつき、それを実行に移す。
それは、
「は?あいつ何やったんだ?いきなり刀を上に放り投げるなんて、何考えてるんだ?」
そう、私はダーク(刀)を真上に高く放り投げたのである。
これにより全員の目線がダークに集中する。その瞬間に私は私を包囲している1人にアクセルを使用して距離を詰め、ナイフで喉元から肺にかけて切り裂く。
動揺した右隣の人に距離を詰める間に掴んだ砂利を顔に投げつけて目潰しをしてその間に左隣にいた人の目をナイフで切る。
そのタイミングで狼獣人が私との距離を詰めて鉤爪を喰らわせようとするがそれを先程目を切った人を踏み台がわりにして飛び、そのまま砂利で目潰しした相手に組付、首の骨を折る。
私の踏み台となった人は狙い通り狼獣人の鉤爪によって切り裂かれる。
そのまま廃墟に絡みついていたツタを回収しつつ廃墟の瓦礫を何個か投げ、それが全てダークに命中して今いる自分の位置に落ちるように調整した。
ここでアクセルを使っても大丈夫かと思った方もいるだろう。
それについてはノープログレム!
今までの私はアクセルを今出せる最大出力で使用していた。それではアクセルとの適応度があまりない私には大きな反動があった。
この反動によりアクセルは1日3回という制限があった。
しかしメノウの姐さんとの訓練によりアクセルの出力を下げることに成功した。
速度は通常時の私の3倍。これを0.1秒だけ使用する。
今までよりも速度も時間もないが間合いを詰めるだけならこれで十分なのである。何よりこれのいいところは身体の負担が少ないため結構な回数使える点である。
私はいきなり誰に説明したのだろうか?
私はまだ残っている敵に視線を向ける。
*
俺はかなり幸運な方である。
俺というよりここにいる教徒の大半がソーマネクルと裏で繋がっている孤児院出身のものである。
施設には俺たちみたいな初めから孤児のやつもいればよそから才能があるということで攫われてきたやつ、親がソーマネクルに所属しているからということで仕事の間預けられているやつもいる。
この施設の目的は遺物と正常に同化できる器の確保。ソーマネクルの手足として働く教徒の確保である。
後者の方は今となってはこの施設の意味は薄い。
なにしろ司教のほとんどが単独行動が基本であり、教徒を引き連れることはない。
例え使おうとしてもそれは捨て駒として使われるのが関の山である。
しかし俺はアニマ司教の部隊に派遣された。
アニマ司教はご自分で何百人分の仕事ができるにも関わらず、主のための優秀な駒は多い方が良いという考えのもと我々教徒にも成長の機会と手柄が建てられる任務に就かせてくださる。
それにより俺らは遺物と同化こそできないものの強力な遺物を与えられている。
それに加えて今回はアニマ司教の細胞をいただいている。
これを自身の身体につけることによりその細胞が自己再生を行なってくださる。
アニマ司教ほどではないにしてもそれなりに回復できるため死にさえしなければ傷などすぐ治る。
更に今回は8人で1人を足止めするように言われている。
相手は1〜4階層を攻略してきた猛者ではあるが8人で相手をすれば足止めくらいは余裕である。
殺して良いという許可も頂いている。しかも相手はこちらに集中できていない。更にガイム(鎧の男)もいる。俺とガイムがいれば不滅ノ翼の副隊長レベルなら相手できる。
万が一にも任務失敗はない盤面。
そのはずだった…
目の前で起きている現象はなんだ?
ミノリとかいう女が武器を放り投げたと思ったら仲間の1人がナイフで喉元から肺にかけて切り裂かれていた。
動揺した右隣の奴と距離を詰めるかと思ったら砂利を顔に投げつけて目潰しをし、その間に左隣にいた奴の目をナイフで切り付けていた。
そのタイミングで正気に戻り俺は女との距離を詰めて鉤爪を喰らわせようとする。
しかし俺が爪を振るった先には、もうミノリはいない。
代わりに、さっき目を潰された同胞の胴があった。
俺の鉤爪はそいつの腹を裂き、骨を断ち、血を撒き散らす。
その血飛沫の向こうで、女は首の骨を折った別の同胞を蹴り飛ばしていた。
「ふざ……けるなァッ!」
俺は咆哮し、再び地を蹴る。
この速度なら、今度こそ捉えられる。
しかし、いつの間にか手元に戻っていた刀に受け流されてしまう。
クソ!クソ!クソ!
なんなんだ!なんなんだよ!この女は!
最後まで読んで頂きありがとうございました!
久しぶりにミノリの1人戦闘を書いたのですがこの子本当に主人公ですか?
書いてて楽しくはあるものの主人公かと聞かれれば微妙ですね。
そんなことはともかく今回も最後まで読んで頂きありがとうございました!
もしこの作品が気に入りましたら感想や評価をいただけると幸いです。
そうでなくともこの作品が少しでも気に入っていただけたら今後も読んでいただけると幸いです。
改めまして最後まで読んでいただきありがとうございました!
また次回もお楽しみください




