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目には目を、歯には歯を、能力には、能力を  作者: 妄想お面
ウサギとダイスとひとつまみの欲望を

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32/54

アド・アストラ

第32話です!

是非楽しんください!

毎日投稿継続中!

 「それでは22ターン目のダイスロール!」


 兎幸(とこ):1

 ルシアン:6

 ミノリ:6


 「おっと!?これは!ミノリ選手!ゴールまであと4マスダァぁぁあー!!そしてついに兎幸様の牛歩が解除される!しかしミノリ選手とのマスの差は47マス差!この差を埋めることはできるのか!?」


 私とルシアンは勝ちを確信していた。斧幸(ふこう)のおかげで兎幸はろくなマスに止まらない。そしてカードの引き運も低い。全てのカードの効果を知ってしまっている兎幸だからこそ欲しいカードが明白である。しかし強く望めば望むほど斧幸はそれをさせない。


 だが何故だろう?


 この胸騒ぎわ?


 「正直ここまで追い詰められたのは初めてだわ。仮にも運に関する能力を持つ階層ボスなのに同じく運に関する能力にここまでしてやられるとは思わなかった。」


 兎幸はため息をこぼしながら私たちを見つめる。


 「でも、これを楽しく感じている私もいる。こんなにヒリついたのは生まれて初めて!」


 満面の笑みを浮かべて兎幸は歓喜する。


 「そして!一つ目の賭けに私は成功した!」


 一つ目の賭けに成功した?いったい何を!?


 「白マスイベント発動!エクスチェンジ!」


 その瞬間私の駒と兎幸の駒が入れ替わった。


 「はぁ!?」


 「嘘だろ!?おいっ!!」


 「な、な、な、な、なんとぉぉぉー!!兎幸様が斧幸を所持しているにも関わらずここで白マスイベントの大当たりを引き当てたぁぁぁ!?エクスチェンジ!こちらの効果は一位のプレイヤーと場所を入れ替える!?そんな能力です!」


 待って!なんで斧幸を持っているのにこんな幸運が訪れるの!?


 「おい!斧幸をまだ持っているはずだろ!?お前からはまだ斧幸の気配を感じる!?」


 ルシアンも驚きその場を立ち上がる。


 「えぇ、まだ斧幸を持っているわよ。この斧幸のせいでだいぶ苦労したわ。けど私はこの瞬間が来るまでずっと斧幸の不運に私の豪運の力を与え続けた。これが賭けだった。斧幸の力と私の力どちらが上回るか。そしてあの瞬間だけ私の力は斧幸をも上回ることができた!」


  ルシアンの声は震えていた。斧幸を常に持ち続けている彼だからこそ、目の前の理不尽を受け止めきれない。


 「ば、馬鹿な……!斧幸を持ちながら……大当たりを引き当てただと……!?」


 私は言葉を失った。頭の中で「あり得ない」が反響して、呼吸すら忘れそうになる。


 斧幸がある限り、不運は必ず訪れるはずなのにそれをねじ伏せて、なお強引に“エクスチェンジ”を掴み取っただなんて。


 「ふっ、ふふふふふふっ……!」


 青ウサギが身を震わせ、マイクを握る手を汗で滑らせながら叫ぶ。


 「さ、流石ぁぁぁぁぁッ!! これぞ兎幸様ぁぁぁッ!! 不運をも力で押し流し、豪運の女王たる所以を見せつけてくださったぁぁぁぁぁぁっ!!!」


 観客席が爆発する。絶叫、悲鳴、歓声、涙。

もはやこの逆転劇は一つの神話として刻まれるかのように、場内は揺れに揺れた。


 兎幸はそんな渦の中心で、ただ艶やかに微笑む。


 「でもね、今はまだ拮抗状態。斧幸の“不運”と、私の“豪運”。力は互いに押し合い、均衡している……だから、この勝負は最後まで分からないわ。だからここからは 2回目の賭け。」


 彼女は扇を閉じ、指先でカードを摘み上げる。その仕草すら舞台の演技のように美しい。


 「この賭けは先程の賭けよりかは武がいい賭けなの。だって豪運の能力がなくても、私自身が“運命の女神”そのものなの」


兎幸は山札に手をかける


 「このドローは激しく重いわ…でも私は引く! たとえこの指が、ペッキリ折れようと!!見せてあげる!私の幸運!運命を!!ドーロ、ドロドロドロドロドロドロドロドロドロ…ドロォオーーーーーーッ!!来たわ、私の逆転の一手、勝ったァーーーーーッ!!」


 彼女はカードを山札から一枚引き抜き、その場に叩きつけた。


 現れたのは、《リセットボタン》。


 「なっ……!」


 ルシアンが言葉を失い、私の胸は冷たく凍り付いた。


  「発動――《リセットボタン》」


 兎幸の声とともに、盤上の全てのカードが光の粒となって宙に舞い上がる。


 ルシアンの回復札も、私が整えた手札も全てが一度、虚空へと消えた。


 「なっ……全部、戻った……!?」


 ルシアンが息を呑む。


 「リセットボタン……全員の手札と墓地をリセットして、山札へと戻す。その後シャッフルして全員6枚ずつ引く。」


 兎幸は扇をくるりと回し、優雅に6枚を引き込む。その指先にはまるで磁石のようにカードが吸い寄せられ、女神の微笑とともに広がった。


 「さぁ、これで私の勝ちはより近づいた。いや、これで私の勝ちだ!例え能力が使えなくても私自身が運命の女神なのだからなんの障害にもならない!」


 その瞬間私とルシアンは、気づいた。


 手札を全て山札の下に行ったつまりそれが指すことは!?


 「ま、まさか……っ!」


 私の声は震えていた。


 兎幸は目を細め、頬に指を添えながら愉悦の笑みを浮かべる。


 「そう。斧幸は山札の一番下に沈んだわ。つまり、もう私の手札に現れることはない!すごい!こんな高揚感はじめて!」


 観客席が爆発した。


 「兎幸様ぁぁぁぁぁっ!!!」


 「豪運の完全復活だぁぁぁぁぁ!!!」


 「斧幸の呪いを、自ら振り払ったぁぁぁぁぁっ!!!」


 青ウサギは声を枯らさんばかりに叫ぶ。


 「皆さまご覧ください! あとゴールまでわずか4マス!その状況で斧幸を切り離し、豪運の本領を解き放った兎幸様!!このターンとゴールしたターン両方とも生き残れば兎幸様の勝利が確定する!?」


 兎幸は笑顔で、私たちを見下ろす。

 

 「凌ぐのはこのターンだけ。いたずらっ子を唱える。罠はルシアンとミノリの2マス後ろに設置。」


 この動きはまさか!?


 「更にルシアンとミノリに一枚ずつ氷結を唱える。さぁ、ダイスを振りなさい。」


 私とルシアンは煙幕の効果で 1D20を振り、ルシアンは1が出ずに2ダメージを受ける。私は 1を出してダメージだけは受けずに済んだ。そう。ダメージだけは。


 「煙幕の効果はダメージのみを回避できる。つまり氷結の2マス退がるという効果は受けてもらうわ!」


 私とルシアンは2マス下がり兎幸が設置した罠を踏んでしまう。


 「罠発動!次のターンこの罠を踏んだプレイヤーはカードを使用することができない。」


  「――バナナの皮がッ!!」


 青ウサギの絶叫と同時に、身体がふわりと宙に浮き、派手に転倒したような気がした。


 「うわっ!?」


 「くっ……!」


 観客席が笑いと悲鳴で揺れた。


 「バナナの皮が!効果発動!ランダムで手札を1枚捨てさせるぅぅぅ!!さらに、次のターンはカードを使うことができない!? これは痛すぎるっ!!」


 私とルシアンの手札が光に包まれ、無慈悲に墓地へと送られる。


 心臓を鷲掴みにされたような感覚が走る。これはまずい。


 「フフッ……」


 兎幸は扇で口元を隠し、艶やかに笑った。


 「あなたたち、理解できたかしら? 次のターン、カードを使えないということは……私を止める唯一の手段が、今この瞬間にしかないってこと」


 「…っ!?」


 ルシアンの顔から血の気が引いていく。


 私も膝が震えた。次のターンまでに彼女を倒せなければ、彼女のゴールは確定する。


 「そう、つまり――」


 兎幸は観客席に向かって、まるで舞台女優のように扇を広げる。

 

 「あなたたちの英雄たる二人は、このターンで私を削り切らなければ敗北が決まるの」


 青ウサギが大げさに跳ね上がった。


 「なぁぁぁんとぉぉぉっ!!! ルシアン選手とミノリ選手、兎幸様のコンボにより次ターン行動不能ぉぉぉ!! つまり兎幸様を仕留められるのは、このターンしか残されていないッ!!」


 観客席がどよめき、悲鳴と歓声が入り混じる。


 「行けぇぇぇ!!」


 「まだ終わってないはずだ!!」


 「黙れぴょん!人間共!?豪運復活の兎幸様に勝てるわけがないぴょん!」


 ルシアンは拳を握りしめ、歯を食いしばった。


 「……ミノリ、やるぞ。ここで決めなきゃ……俺たちの負けだ」


 「わかってる……!」


 私も震える指でカードを握りしめた。


 残された手段は攻撃のみ。


 このターンで削り切るしか、勝ちはない。


 兎幸は余裕の笑みで、私たちを見下ろす。


 「さぁ、どうぞ? 最後のあがきを見せてちょうだい――私を、この運命の女神を舞台から引きずり落とせるのなら」


 私達の最後の攻撃が今始まった。


  「それでは……ルシアン選手のターンだぁぁぁっ!!」


 青ウサギの絶叫が響く中、ルシアンは静かにカードの効果を読み込んでいる。


 「罠カードをゴールマスに設置する!」  


 「おーーっとぉ!?ここで重要なルールをおさらいしましょう!」


 青ウサギが身を乗り出し、会場へと叫ぶ。


 「このダンジョンすごろく……実はゴールした瞬間に勝利が決まるわけではないのです! ゴールマスに到達したプレイヤーは、次のターンを迎えるまで“生き残らねばならない”! つまり、ゴールマスは一見安全そうに見えて実は最も危険なマスでもあるのです!!」


 観客席がどよめく。


 「そしてぇぇ!!そこに目をつけたのがルシアン選手だぁぁ!! ゴールマスに罠カードを設置したッ!!」


 青ウサギは耳をぶんぶん振って興奮を煽る。


 「これは天晴れ! 確実に兎幸様が踏むマスに仕掛けるとは、なんという冷静さ、なんという執念ッ!! さすがは不運を操る男ッ!!!」


 会場の熱気が一層高まる。


  ルシアンはさらにカードを叩きつける。


 「ファイヤーボール!」


 煙幕の効果で1D 20が振られる。兎幸の目は「1」。


 「無効」兎幸は淡々と告げる。


 「メガファイヤーボール!」

 1。

 「無効」


 「サンダーショット!!」

 1。

 「無効」


 ルシアンの額から汗が滴る。


 「くそっ……! 何を打っても通らねぇ!」


 青ウサギが実況席で身を震わせる。


 「ルシアン選手の猛攻……しかし全て煙幕の闇に呑まれたぁぁぁ!! 兎幸様、常に1を出し続けているっ!? こんな芸当、誰が想像できた!?!?」


 兎幸は扇を優雅に広げ、観客席へ微笑む。


 「見てちょうだい。これが“豪運”という名の舞台演出よ」


 場内から黄色い声援が飛び交う。


 「兎幸様ぁぁぁ!!!」


 「次は……ミノリ選手のターンだぁぁぁ!!!」


 私の手が震える。


 攻撃カードを繰り出す――「斬撃!」

 サイコロは、1。

 「無効」


 「重撃!」

 1。

 「無効」


 「魔剣ッ!」

 1。

 「無効」


 「な……っ……!」


 私は愕然と立ち尽くした。ルシアンと同じく、全ての攻撃が煙幕にかき消される。


 兎幸は目を細め、挑発するように囁いた。


 「どうしたの?その程度じゃ、私には届かないわ」


  震える手で、私は最後の切り札を掲げた。


 「――秘剣、《エクスカリバー》ッッ!!!!」


 発動と同時に盤面全体が光に包まれる。地を割る巨大な魔法陣が浮かび上がり、そこから幾千もの光の剣が天へと突き抜けた。


 青ウサギが絶叫する。


 「き、来たぁぁぁぁぁっ!!! 伝説級カード、《エクスカリバー》!!!」


 観客がどよめく。


 「な、なんだぴょん!あれは……!」


 「天空を埋め尽くす剣の軍勢だぴょん……!」


 青ウサギが声を張り上げる。


 「このカードの効果はぁぁぁ!! “自分以外の全プレイヤーに10ダメージ”!! さらにッ! 全プレイヤーのマナを半分にするッッ!!! しかもぉぉぉ――この攻撃は決して無効化されない!!」


 観客が一斉に悲鳴を上げる。

 

「な、無効化されないぴょん!? じゃあ煙幕も意味ないのかぴょん!!」


 「まさか……兎幸様が直撃するってのかぴょん!?」


 青ウサギが叫び続ける。


 「その通りだぁぁぁぁぁっ!!! あらゆる防御を貫き、全員を薙ぎ払う究極奥義! これこそが……《エクスカリバー》!!!!」


 私は叫んだ。


 「いけぇぇぇええええええっっ!!!!」


 光の剣が一斉に放たれる。


 まずルシアンが吹き飛び、呻き声と共に10のダメージを負う。


 「ぐっ……!」


 だが剣は止まらない。旋回し、矛先は兎幸へ。


 天空から降り注ぐ剣の雨。


 剣の嵐はすべての矛先を兎幸に揃えた。


 黄金の輝きが闇を切り裂き、煙幕が霧散していく。


 それは攻撃ではなく、一つの神話だった。

 観客が絶叫する。


 「うわぁぁぁぁぁ!!!」

 

 「兎幸様に突き刺さるぅぅぅぅっ!!」


 刹那。


 無数の剣が兎幸を突き貫き、最後に巨大な黄金の一振りが落ちて盤面ごと断ち割れた。


 閃光。轟音。世界が白く染まる。


  その光の中、兎幸のシルエットが裂け、崩れ落ちていった。


 彼女のHPを削り取った。


 青ウサギが叫ぶ。


 「決まったぁぁぁぁぁぁっ!!! 兎幸様のHPは――ゼロォォォォォォォォッ!!!!」


  ……しかし。


 白光が収まったその中心にまだ立っていた影があった。


 「……は?」


 私の声が震える。


 観客席からも困惑のざわめきが広がる。


 「……う、そだろ……」


 ルシアンが呻く。


 青ウサギが絶叫する。


 「ば、ばかなぁぁぁぁぁぁぁぁっ!! 《エクスカリバー》は無効化不能ッ! 直撃を受ければHPが10しかなかった兎幸様は即死のはずだぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」


 兎幸は、崩れ落ちる寸前に扇を震える手で広げた。


 その身体が、黒く、不気味に輝き始める。


 「――《狂気の沙汰》、発動」


 その声は、低く、冷たく、心臓を凍り付かせるものだった。


 瞬間。


 兎幸のMPゲージが一瞬でゼロに沈む。


 そして、そのすべてが鮮血のような生命力へと変換される。


 真紅のオーラが爆ぜる。


 ズタズタの肉体が無理矢理に繋ぎとめられ、断末魔のはずの身体が再び立ち上がる。


  「……っ、はぁ……はぁ……耐えた……耐え切った……!」


 兎幸は荒い息を吐きながらも、勝者のように笑う。


 「私は……まだ死んでいない……!」


 青ウサギが声を震わせる。


 「信じられないぃぃぃぃっ!!! 《狂気の沙汰》!! 自らのマナを全て犠牲にし、生命力へと変換ッッ!! 兎幸様……残りHPは――なんと“2”!!」


 観客席からは悲鳴がこだまする。


 「ゼロには届かない……! エクスカリバーの神話を受けても、なお!兎幸様は立っているんだぁぁぁっ!!」


 兎幸が、血に濡れた唇を歪めて笑った。


 「……さぁ……あとはゴールするだけ……ここから先は……私の舞台よ……!最後に笑うのはこの兎幸よ!」


 絶望が、戦場を覆った。


 「……ふぅ……」


 兎幸は髪をかき上げ、整った笑みを浮かべる。


 残るはわずか四マス。彼女の白い指先がサイコロを摘み上げる。


 「さあ、終わらせましょう」


 転がったサイコロが盤上で跳ね、静止する。

 ――“4”。


 観客席から悲鳴のような歓声が湧き上がった。

 「で、出たぁぁぁぁっ!!! ピッタリぴょんっ!!!」


 「これで兎幸様の勝利だぴょんっ!!!!」


 青ウサギが涙声で叫ぶ。


 「これ以上ない幕引きですぅぅぅっ!! 《狂気の沙汰》で生き残り、最後は運命すら手中に収めたぁぁぁっ!!!」


 兎幸は静かに歩みを進める。

 

 「一歩、二歩……ふふ、やはり舞台は最後まで私を選ぶのね。これで私の勝利だ!」


 兎幸はゴールマスへ足をかけた、その瞬間。


 盤上が軋み、黒い影が滲み出す。


 兎幸の視線が細くなる。


 「……これは?」


 「まだ俺の攻撃は終わってないぜ!トラップカードオープン!」


 ルシアンの声に呼応するようにカードが浮かびあがる。


 浮かび上がったカード。そこに描かれていたのは芦毛の馬が立ち上がる姿。


 青ウサギが絶叫する。


 「こ、こ、こ、これは!罠カードですぅぅぅっ!! 名は《120億事件》!!!!」


 場内に悲鳴が響く。


 「ワープしたプレイヤーがゴールを踏んだ時……効果発動!!!」


 「対象のプレイヤーは――120億コインを失うッッ!!!!」


 観客席が凍りつく。


 「……っ、な、何を言っているの……?」


 兎幸の声が震える。白い手が盤面を掴み、紅い爪先がわずかに軋んだ。


 「120億……失った……? じゃあ……わたくしの所持は……マイ……ナス……?」


 その言葉が口を突いて出た瞬間、観客席に電流が走った。


 「ま、マイナスぴょん!?」


 「嘘だぴょん!? 兎幸様が……負け……!?」


 ルシアン高く拳をあげる


 「チェックメイトだ!兎幸!」


 青ウサギが震えながら声を張り上げる。


 「……こ、これはっ……これは信じられませんっ!! 兎幸様、ゴールを踏んだ瞬間に所持コインがマイナスっ!! 規定により即時敗退っ!! 挑戦者側の……挑戦者側の勝利となりますぅぅぅぅぅ!!!!」


 「や、やった……!!」


 私は思わず隣にいたルシアンへ手を伸ばす。


 彼も目を見開いたまま、私の手を打ち返していた。


 パァンッ!


 高く響いたハイタッチの音が響き渡る。


 肩が震え、吐息が乱れる。だが、次の瞬間。


 兎幸はゆっくりと背筋を伸ばし、口元に微笑を刻んだ。


 「……ふふ……ふふふ……ふふふふ!見事……見事…見事だわ!」


 艶やかに笑うその姿は、敗北を受け入れてなお、舞台の主役であり続ける女王そのものだった。


 「これほどまで鮮やかに……わたしを打ち倒すなんて……称賛せずにはいられないわ。挑戦者――いや、ルシアン,ミノリ・テンドウ,神凪ユキ,バレット・ニール、あなたたちの勝利よ!」


 兎幸は私達に拍手を送る。


 その姿は負けたとはいえ圧倒的強者の風格を出していた。


 「賞賛しておいて申し訳ないけど、よくピンポイントであのカードを引けたわね。」


 「俺はお前ほどではないが斧幸がなければ運がいい方でな。」


 そう言ってルシアンは机の上に百面の導きを出す。


 そう言って振ると百面の導きは1を示す。


 「百面の導きは一度振った目はそこから24時間変わらない。つまりここで1が出るってことは私に斧幸を押し付けた段階で机の下で百面の導きを振っていたのね。やられたわ。けど楽しかったわ。」


 そういって兎幸は今まででいちばんの笑顔を見せる。


 「さて、本来なら階層ボスを倒したら宝箱を出して遺物をプレゼントするって、ことになっているのだけれど。今回は別のものにするわ。グリードさん!きてください!」


 兎幸の声に呼応してダンジョンすごろくを出したあの大きな箱が現れた。


 「兎幸、お前が勝負の後に俺を呼ぶのは初めてだな。もしや決めたのか?」


  金貨が口からこぼれ、床に散らばるたび、澄んだ音が辺りに跳ねた。


 兎幸は息を整え、まっすぐその怪物を見据えた。


  「……グリードさん。私、決めました。」


 兎幸は微笑みを浮かべ、しかしその声音には凛とした決意が宿っていた。


 「私、ルシアンの遺物になりたいの。」

 その言葉に、場が凍りついた。

 

 「なっ……!」

 ルシアンは息を呑み、思わず声を上げる。


 「……お前、何を言っている……?」


 兎幸は静かに頷く。


 「初めてなの。本気で勝負をして……負けたのは。だからこそわかるわ!これ以上、この舞台で勝負を繰り返しても、今日以上に震えるようなひりついたゲームは二度と味わえないって!」


 その瞳はまっすぐにルシアンを見据えていた。


 「しかも私が一番警戒していなかったあなたに、あっさりとしてやられた!その瞬間から、あなたに興味が尽きなくなったのよ!」


 グリードが口を閉じ、短く笑った。


 「フフフ……これはこれで面白い。」


 ぱかりと再び蓋が開き、舌がゆらりと揺れる。


 「カジノ型の階層をなくすのは少々もったいなく感じる。だがお前を無理に縛りつける気はない。」


 宝箱の奥で、金貨が唸り声のように震えだす。


 「……ただし、“豪運”は俺のお気に入りだ。返してもらう。」


 周囲の金貨がふっと浮かび上がり、光となって兎幸の身体へと吸い込まれていく。


 その身体が一瞬だけ眩く光り、そして静かに沈黙した。


 「代わりに新たな力を授けよう」


 グリードの瞳が赤く光る。


 「新たな能力は《カウンター・オブ・フェイト》。

  自らの運を相手に跳ね返す。お前が幸運なら相手も幸運、

  お前が不運なら相手も不運になる。うまく使ってもらえ。」


 兎幸は目を閉じ、微笑を浮かべた。


 「素敵ね……」


 「そしてお前をとこの任から外す。

  今より名を授けよう。……お前の名は“アストラ”だ」


 その瞬間、兎幸いや、アストラの身体が柔らかな光を放ち始めた。


 髪が金の粒子となって宙に散り、彼女の姿がゆっくりと崩れ落ちていく。


 ルシアンが反射的に手を伸ばした――が、その手の中に残ったのは、


 一振りの輝くモーニングスター。


 それはまるで兎幸の笑みを宿したかのように、静かに脈打っていた。


 グリードが満足げに笑う。


 「……ここにまた、新たな階層ボスに認められし者が現れた」


 その言葉と同時にどこからともなく、鐘の音が響き渡った。


 重く、荘厳で、次なる物語の幕開けを告げる音だった。

最後まで読んで頂きありがとうございました!


これにて第3章完結です!ありがとうございました!

次回は少し外伝ぽいお話を投稿します!予定では前編,後編に分けて投稿する予定です。

それが終わり次第!第4章に入ります!

是非お楽しみください!

あと、皆さまはカードゲームは何をやってますか?私はデュエマと遊戯王です!どのカードゲームをやってたかをコメントしていただけると幸いです!


この作品が気に入りましたら感想や評価をいただけると幸いです。

そうでなくともこの作品が少しでも気に入っていただけたら今後も読んでいただけると幸いです。


改めまして最後まで読んでいただきありがとうございました!

また次回もお楽しみください

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