ルシアン死す!
第30話です!
是非楽しんでください!
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「それでは第12ターン! サイコロをどうぞぉっ!」
ルシアン:+4
ユキ:+6
兎幸(次ターン休みのため行動不可):(休み)
ミノリ:+5
「まずはルシアン選手の行動! 駒が止まったのは……ショップマスっ!」
「……ここで補充か。悪くない。」
ルシアンは迷わずコインを投じる。
「ショップマスではコインを消費し、MPを回復することができますっ!なお、1MP一万コインなので少々お高いです。おっと!ルシアン選手、10万コインぶち込んだ!MPを10回復だぁ!」
「このターンで決め切れないなら持久戦になる。ここで切らすわけにはいかねぇ」
ルシアンの言う通りここで兎幸を倒し切れないことがわかった今、マスのリードを守らなければならない。
ルシアンとユキちゃんは好きな目を出すためにイカサマダイスがある。
つまりピッタリゴールすることは容易い。
問題はゴールまで耐えられるかというものだ。
ルシアンはヒーラーということもありこのゲームでは持久寄りなのでこのままゴールを目指していく戦法なのだろう。
その後ルシアンは氷結を兎幸に放ちターンを終えて剣の舞の効果で剣カードを1枚回収
「続いてユキ選手! サイコロの目は『6』、止まったのは赤マスっ!」
「あー、赤マスかぁ。ちょっとやだねぇ〜。こういうのは運が味方してくれてるって感じ?」
「赤マスはダメージマス!踏んだものに1d10ダメージを与える超超超〜危険なマスだ!! 今回は3ダメージだぁ!」
「あはっ、ちょっと削れたね。でもこれでMPは6回復、少しは楽になるかな〜」
ユキちゃんも同様に長期戦の構えだ。ユキちゃんの職業忍びも防御系カードのコストを下げるなど割と耐久寄りである。
少ないダメージならすぐルシアンが回復してくれるからその分MPを最大値で回復していくつもりなのだろう。
ユキちゃんはターンを終えて剣の舞の効果を発動するものの剣カードは出なかった。
「さぁ続いてはミノリ選手! 駒が止まったのは白マスっ!おっとここで白マス!白マスは何が起きるかわからない完全ランダムイベント! その効果は……《手札リセット》だぁぁっ!」
「……手札リセット?」
「そう! 持っているカードをすべて捨て、新しく引き直す効果だ! 今まで積み上げたプランが台無しになることもあれば、逆に新しい突破口を開けることもあるぞぉ〜! 兎幸様に挑む以上、油断ならないねぇ!」
なるほど、これは賭けだ。
私は今まで兎幸を倒すため、短期決戦用にカードを揃えてきた。けれどこの流れはもう持久戦。なら、むしろここで手札を変えられるのは好機かもしれない。
次に引くカード次第で、新しい戦い方を作れる。
……そうだ、まだ戦える。前を向ける。
私はそれを胸にドローしてターンを終える。
そして剣の舞の効果で剣カードを1枚回収
12ターン目終了時
ユキ:HP17/MP=16/手札8/スタートからマス=59
ルシアン:HP20/MP=36/手札10/スタートからマス=57
兎幸:HP24/MP=29/手札19/スタートからマス=56
ミノリ:HP20/MP=21/手札8/スタートからマス=60
「さぁ、第13ターン! 全員、サイコロを一斉に振っていただきましょうっ!」
青ウサギの合図と共に、四つの駒が転がる。
出目は――
「全員『6』ぅぅぅっ!? こ、これは奇跡だぁぁぁっ!」
観客席が総立ちになる。大歓声とどよめきが響き渡った。
「なかなか派手じゃないか。」
ルシアンが鼻で笑う。
「ふふ、こういうのを運命って言うんだろうね〜」
ユキちゃんは飄々と肩をすくめる。
私は胸の奥で、ほんの少しだけ笑った。
ルシアンとユキは仕込み済みのイカサマダイス。
私も、出目を思い通りに操る方法を知っている。
そして、兎幸の豪運。
この四つの「必然」が、偶然を装って同じ場所に並んだ。
「……さてと、小細工を弄しても無駄よ。結果は私の勝利で約束されているのだから。」
兎幸が不敵に笑う。
「さぁ、どうだろうね〜。それとダイスに関してはただの偶然でしょ?」
ユキちゃんはとぼけた声で返す。
「……そうね。偶然にしておいてあげるわ。あなたたちが必死に繕っている間は、ね」
青ウサギが熱を帯びた声で叫ぶ。
「兎幸様は6マス前進っ! しかぁし! 他の三人も同時に6マス進んでしまったぁっ!」
「ふふ……いいじゃない。せっかくのお遊びだもの。揃い踏みの方が、盛り上がるでしょう?」
兎幸は艶のある声で笑った。その声音には焦りも驚きもない。ただ余裕を湛えた響きだけがあった。
「さぁ、兎幸様の行動っ! 駒が止まったのは金マス! 通常ドローに加えて、さらに3枚ドローだぁっ!」
青ウサギが高らかに叫ぶ。
兎幸はゆるやかに扇を閉じる仕草をしながら、引いたカードを指先で弾いた。
「ふふ、揃ったわね。では――始めましょうか。」
次の瞬間、兎幸は手札を躊躇なくカードを5枚墓地に捨てていく。
「魔剣……力を貸しなさい。手札を5枚捨てたことにより魔剣を1コストで唱える。対象はミノリ。」
「おっとぉ! ここで《魔剣》だぁっ! このカードは、好きな数だけ手札を捨て、その捨てた枚数分コストを下げられる! 今回はなんと5枚捨て! 本来6コストの《魔剣》が、わずか1コストで放たれるぅ! さらに威力は変わらず4ダメージ! 重い刃がミノリ選手を襲うぅっ!」
青ウサギが声を張り上げる。
兎幸は涼しげに次のカードを差し出した。
「私色のフィールドに塗り替えてあげる。《マジックフィールド》展開するわ」
先程まで展開していたユキちゃんの剣の舞が消えて、足元から魔方陣が広がり、全プレイヤーを覆うように浮かび上がる。
「でたぁっ! 《マジックフィールド》!剣の舞同様の永続フィールド! 全ての魔法で相手にダメージを与えるたび、追加で+1点の固定ダメージが入る! しかも兎幸様はウィザード職! 職業効果により通常の魔法ダメージ+1と更にマジックフィールドの固定1ダメージに+1される……合計で魔法カード、一枚につき+3点の追加ダメージがつくんだぁぁぁっ!」
何それ!?
それってファイヤーボールですら6ダメージになるってこと!?
そんなの耐えられるの!
早くフィールドを塗り替えないと!
兎幸は薄く笑い、さらにカードを掲げる。
「そして……《レスト》。手札から10枚の魔法カードを捨てる。」
カードが音を立てて墓地に積まれる。
「その分だけ、HPを回復させてもらうわ」
「でたぁ!《レスト》!4コストで手札を捨てた枚数分だけHPが回復するとんでもないカードだ!しかも兎幸様が捨てたのは魔法カードばかり……これは次への布石かぁぁぁ?!」
ここで魔法カードを捨てるなんて!?
いったい何をする気なの!?
兎幸は手元に残ったカードを、艶然と指で弾きながら囁く。
「さて……ここからが本番よ。あなた達に聞いてみたいの。このゲームに存在する魔法カード、全部知っているかしら?」
青ウサギが慌てて解説を被せる。
「魔法カードといえば――
《ファイヤーボール》、3ダメージ!
《メガファイヤーボール》、5ダメージ!
《サンダーボルト》、4ダメージ!
《ライトニングボール》、1ダメージ!
《氷槍》、 2ダメージ
《氷結》は1ダメージ+2マス戻し!
《絶対零度》は2ダメージ+1回休み!
《マジックフィールド》はフィールド永続!
これらが今ゲームに存在する魔法カードです。」
兎幸は唇に笑みを浮かべ、声を艶やかに落とす。
「……これが、もし一度に、すべて私から放たれたとしたら?」
言葉が、盤面を凍りつかせる。
ユキちゃんの目がわずかに見開かれる。
ルシアンの手が無意識に拳を握る。
そして、私の喉が思わず震えた。
「そんなの……耐えられるわけ……!」
そこまで言った瞬間、心臓が跳ね上がった。
「……まさか!?」
兎幸はゆっくりと一枚のカードを掲げる。
その姿はまるで舞台の幕を上げる女優のよう。
兎幸は扇を広げ、その骨をしなやかに滑らせながら囁く。
「秘儀――《魔導の極み》。
「古き魔法の旋律を、今一度この盤上に響かせましょう。」
掲げられたカードが、ひときわ眩い光を放つ。
「燃え盛る焔――《ファイヤーボール》。
さらに深紅の嵐――《メガファイヤーボール》。
凍てつく牙――《氷槍》。
鎖す氷結――《氷結》。
絶望の静寂――《絶対零度》。
天を裂く轟雷――《サンダーボルト》。
閃光の一矢――《ライトニングボール》。
そして……私の舞台装置――《マジックフィールド》。」
次々とカード名を艶やかに紡ぎ出すたび、足元の魔法陣が重奏のように光を増し、炎と氷と雷が渦を巻いて天を裂く。最後に浮かび上がった魔方陣が戦場全体を覆い尽くした。
「す、すごいぃぃっ!《魔導の極み》は全員の墓地にある魔法カードを全て使用することができる魔導士の究極秘儀!兎幸様が先ほど《レスト》で捨てた魔法も、他プレイヤーがこれまで撃ち尽くした魔法も、すべてが同時に放たれるんだぁぁぁっ!」
青ウサギの声が裏返る。
燃え盛る炎が空を裂き、氷槍が大地を穿つ。雷鳴が幾重にも折り重なり、盤上は光と轟音で塗り潰された。
7つの魔法が重なり合い、津波のような衝撃が盤面を呑み込んだ。
「《変わり身の術》!」
ユキちゃんの声が鋭く響く。
ルーレットの結果、炎の直撃は兎幸にダメージを与えることに成功する。
通常ならこれで終わりだが、今回はこれで終わらない。
氷柱が地面から突き上げる。
「《巻き巻きの術》!」
ユキちゃんは別のカードを叩きつけ、術を奪い返そうとする。
だが、次から次へと迫る魔法があまりにも多すぎた。
火球、氷刃、雷槍――それらが同時に奔流となり、ユキちゃんの周囲を包囲する。
「くっ……!」
《魔導の極み》によって7つの魔法が複数枚ずつ同時に放たれている。
更にはマジックフィールドと魔導士の職業効果で1枚1枚のカードが+3ダメージ
ユキちゃんは歯を食いしばり、最後の《煙玉》を投げ放つ。黒煙が立ち込め、幾つかの雷を逸らすことには成功した。
だが、それでも残った奔流は彼女の身を焼き尽くす。
ユキちゃんのHPが一気に削られ、0になってしまう。
その姿は、最後まで抗い続けた証のように、煙の中に跡を残して消えていった。
「ユキちゃん……!」
私の喉が詰まる。
仲間の強さを知っているからこそ、その退場は胸を抉った。
「――ユキ選手、退場ぉぉっ!」
青ウサギの実況が響き渡る。
「《変わり身》《巻き巻き》《煙玉》と、忍びカードを次々繰り出したが……《魔導の極み》による一斉砲撃の数が桁違い! 全てを防ぎきることはできなかったぁぁっ!」
「まだ大量の魔法カードが残っていますし次の対象はミノリで。」
炎と氷と雷の奔流が、今度は彼女へと収束していく。
私のHPがドンドン削られていく。
残り5までになった、その刹那ルシアンがカードを高々と掲げ、力強く叩きつけた。
「――《聖盾の誓約》!」
足元から光の紋章が広がり、黄金の盾がミノリの背後に浮かび上がる。
「対象は……ミノリだ!」
光の鎖が走り、ルシアンとミノリを繋ぐ。
次の瞬間、奔流のすべてが強制的にルシアンへと流れ込んだ。
火球が爆ぜ、氷刃が突き刺さり、雷槍が胸を貫く。
だがミノリには一片の傷も届かない。
「すごいぃぃっ!さすが《聖盾の誓約》!このカードは対象のダメージをそのターンずっと肩代わりするカードだぁぁぁぁ!」
「更に《狂気の沙汰》を発動。このカードはMPを0にすることでその分HPを回復するカードだ。」
「なんとここで《狂気の沙汰》!!このカードは自分がダメージを負ったとき強制的に発動するカードです!普段なら1点や 2点くらった程度でも発動してMPを枯らしてしまうというデメリットが大きなカードです。しかしここにおいてはHPが増えるということは兎幸様の猛攻を防ぐのに役立つかも知れません!しかもルシアン選手のMPは36!HPに36追加されます!」
「あら、めんどくさい。私の攻撃を邪魔するなんて。これはお仕置きをしましょう。」
火炎と氷槍と雷鳴が怒涛のごとく叩きつけられそのすべてが、ルシアンの身体に直撃した。
「ルシアンっ!!」
私の声が震える。
HPが一気に0へと落ち込む。
青ウサギが叫ぶ。
「兎幸様の連撃でルシアン選手のHPは……ゼロォォ!!」
だがルシアンは、新たなカードを掲げた。
「……まだ、終わらせねぇ。《命の雫》……発動だ!」
カードが砕け散り、天から滴るように光が降り注ぐ。
その雫は彼の身体を包み込み、失われた命を呼び戻した。
「なななななな、なんとぉぉぉー! ヒーラーの秘儀《命の雫》だぁぁぁぁー!!HPを20回復し、さらにMP+10するというまさに奇跡のカードだぁぁぁ!しかも《命の雫》はHPが0の時は自動発動! コスト不要で奇跡が舞い降りたぁぁっ!」
青ウサギの叫びが場内を揺らす。
ルシアンのHPが0から一気に蘇り、20の値を示した。
だが――それでも《魔導の極み》の奔流は止まらない。
炎が削り、氷が裂き、雷が叩きつける。
回復したばかりのHPは瞬く間に削られ……残ったのは、かろうじて1のみ。
炎は彼の衣を焦がし、氷はその体を穿ち、雷が骨を軋ませているような気がした。
意識を保っているのが不思議なほどの衝それでもルシアンは、倒れ伏すことはなかった。
「……ルシアン……!」
私の胸が熱くなる。守られたという事実が、息を詰まらせるほどに重い。
場内を揺るがす歓声をよそに、兎幸はゆるやかに扇を閉じた。
艶やかな声が、驚きとほんの少しの愉悦を含んで零れる。
「《魔導の極み》を耐えきるなんて。ふふ……見事だわ。これには拍手を送らなくてはね」
扇の先端で軽く卓を叩き、まるで舞台の余韻を楽しむ観客のように微笑む。
青ウサギの実況が、悲鳴のように響き渡った。
「み、見ましたか皆さん! ルシアン選手は先ほど、兎幸様の一斉砲撃を受けてHPが0になった! 普通ならそこで“死”を味わう痛みに襲われ、そのまま倒れ込むのが普通!ユキ選手がそうであったように! HP0とは、それほど絶対的な終わりなんです!」
観客がざわめく。
ウサギたちの耳が一斉に震え、場内の空気は一瞬で張り詰めた。
「ですがルシアン選手は命の雫に救われ、蘇った!それだけでも奇跡!だが、その直後にさらに兎幸様の連撃を浴び、今度はHPが1になるまで削られてなお、立っている!!これは異常だぁぁぁッ! 肉体ではなく精神に刻まれる痛みとはいえ……HP0に至った瞬間に走るのは、“死”そのものの苦痛が来る!それを一度味わい、さらに追加で瀕死の痛みに打ち据えられながらも……まだ意識を保ち、カードを構えている!!」
「……ぐっ……まだ、俺は……やれる……!」
その声は震えていた。
だが、精神力を削り尽くされてもなお、彼の瞳の光は消えていなかった。
兎幸はしなやかに扇を閉じると、艶やかに微笑んだ。
「……あらあら。精神をこれほどまでに削り取っても、なお闘志が衰えないなんて。ふふ……見惚れてしまうじゃない」
その声音には、驚愕よりもむしろ甘美な愉悦が滲んでいた。
「いいわ。あなたのその強さ……舞台を飾るにふさわしい」
「舞台をっ…飾るのはっ…お前のっ…敗北したっ…姿だ。」
「そう、途切れ途切れに言われても説得力ないわね。そうできるように頑張りなさいな。」
もう認められるとかどうでもいい。ただ勝ちに行く!勝って次の階層へ向かう!それだけを考えないとこの勝負に負ける!
最後まで読んで頂きありがとうございました!
タイトル詐欺ではありません。一度0になっているので。本当に許してください。
もしこの作品が気に入りましたら感想や評価をいただけると幸いです。
そうでなくともこの作品が少しでも気に入っていただけたら今後も読んでいただけると幸いです。
改めまして最後まで読んでいただきありがとうございました!
また次回もお楽しみください




