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目には目を、歯には歯を、能力には、能力を  作者: 妄想お面
凍りついた世界〜新たな伝説の始まり〜

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18/54

vsグレイシア & vs神凪イサリ 2

18話です!

是非楽しんでください!

毎日投稿継続中!

 神凪ミレーナは静かに前へ進んだ。


 その背筋は真っ直ぐで、一片の迷いもない。


 対する神凪イサリは巻物と刀を構えていた。


 氷の壁に囲まれた回廊は、ふたりの呼吸ひとつで軋むほどの緊張に包まれる。


 周囲の兵たちは言葉を失い、ただ息を呑んで見守っていた。


 誰もが理解していた。この戦いは自分たちが介入できる領域ではない、と。


「……ミレーナという名をつけてもらったか」


 イサリの声は冷ややかに響いた。


「名はついたが、行動は相変わらずだな」


「規律を守る。それが私の務めです」


 ミレーナは淡々と答えた。だがその瞳には、消えぬ炎が宿っていた。


 過去に幾度も罰され、孤立させられ、それでも彼女は己の正義を貫き通した。


 その生き方は、一族の中でも異質であり、同時に脅威でもあった。


「不滅ノ翼……五番隊隊長。出世したものだ。それとお前のその拳、少し面倒だ。」


 イサリが吐き捨てるように言う。


「空転ノ巻」


 ミレーナがわずかに声を強めた。


「生物とそれが身につけているもの以外は全て吸収し、力を返す……。その方が、よほど面倒ではありませんか?」


 二人の視線が交錯する。


 場が震えていると錯覚するほどの緊張が走り、兵たちの喉が乾いた音を立てた。


 ミレーナが静かに拳を構える。


 その所作は無駄がなく、まさに武の化身。


 空気が低く唸りをあげ、冷気さえ震えた。


「ここであなたを止めます。神凪イサリ」


 言葉が落ちた瞬間――爆ぜるような衝撃が回廊を薙ぎ払った。


 ミレーナの拳が放った一撃。


 空気そのものを刃へと変じ、石壁を抉り、後方の兵を吹き飛ばす。


「チッ……!」


 イサリは即座に巻物を抜き、その衝撃波を吸収した。


 範囲が広く巻物で吸収しきれなかったところは床に深々と切り傷が刻まれる。


 互角。


 兵たちの目が見開かれる。


 ミレーナとイサリ。その力は拮抗していた。


「やはり、貴様は邪魔だ」


「あなたこそ。規則を破る行為、この国の癌です」


 二人の声が重なる。


 空気はさらに張り詰め、壁が細かく軋んだ。


 ここから先は、誰も踏み込むことができぬ領域。


 神凪一族の兵たちはただ息を呑み、二人の激突を見守るしかなかった。


 イサリが巻物を広げる。


 符が震え、血の雫が滴り落ちる。


 瞬間、空間から溢れ出したのは無数の刃。


 暗器、毒針、鎖、泥塊――吸収したあらゆる武具が嵐のように解き放たれた。


「っ……!」


 ミレーナは拳を振り抜き、衝撃波で空間ごと切り裂く。


 刃の群れは軌道を逸らされ、壁や床に突き刺さり、破片が雨のように降り注ぐ。


 だがイサリは一歩も退かない。


「……まだだ」


 低い呟きとともに、巻物の影から別の刃が伸びる。


 まるで生き物のように背後から迫り――


 ミレーナは振り返る暇なく、腕を交差して受け止めた。


「……っ!」


 衝撃が骨を震わせ、石床に亀裂が走る。


 兵たちのざわめき。


 彼女の膝がわずかに揺らぎ、体勢が崩れる。


 その刹那を、イサリは逃さなかった。


 刀を振り上げる。


 瞳に映る鋭い光、狙いはただひとつ、ミレーナの心臓。


 刃が迫る。


 避けられない。


 ミレーナはほんの刹那、覚悟を決めた。


*


 氷の城を震わせる咆哮。


 巨鳥《グレイシア》が翼を広げるたび、天井から氷片が雨のように降り注ぎ、それが瞬く間に兵士へと形を変えていく。


 数の暴力。


 ただでさえ巨大な鳥を相手にしているのに、その羽根一枚が兵士一体になる。まさに悪夢だ?


「シルトッ!」


 ミノリちゃんの張った透明の壁が、氷槍の雨に晒されて音を立てて砕け散った。


 そこへ容赦なく降り注ぐ氷片。


「チッ!」


 ルシアン君が斧を大きく振り抜き、迫る氷兵を粉砕する。


 破片が四散するが、すぐに後ろから新手が湧いてくる。


 バレットちゃんは既にゲシュッツを展開していた。


 掌から放たれるエネルギー弾を弾き飛ばし、跳弾させて兵士の頭部を次々と穿ち抜いていく。


 彼女の動きに迷いはない。正確で、無駄がなく、効率そのものだった。


 ボクは氷の羽を広げ、足場を作りながら仲間を守る。


 息をつく暇なんてない。


「くそっ、数が減らん!」


 ルシアン君が呻く。斧に纏わせた《ブレッシャー》で破壊力は増しているはずなのに、出現する兵士の数に追いつかない。


 ……その横で。


 ミノリちゃんは、ただ斬っているだけじゃなかった。目を凝らし、何かを探している。


「……核……胸に、ある……」


 小さな独り言が、氷の衝撃音の合間にかすかに響いた。


「ミノリちゃん?」


 思わず声をかける。


「氷の兵士に変わる瞬間……グレイシアの動き、止まってる……」

 ……!


 そういうことか。


「フッ、面白ぇな」


 ルシアン君が鼻で笑った。斧を肩に担ぎ直し、目を細める。

「つまり羽が兵士に変わる一瞬……あいつは無防備になるってことか」


「そこを突けばいい。核が胸にあると分かってる以上、狙うしかないよね?」


 ボクは笑って言った。


 バレットちゃんが静かに指を鳴らす。


「なら、ルートを作って」


 その短い言葉だけで十分だった。彼女はもう次の一手を描いている。


 氷城全体が震える。


 グレイシアが大きく翼を打ち下ろし、城壁が裂けて無数の氷槍が突き出してきた。


「くっ……!」


 ボクは氷壁を展開して味方を守る。だが氷槍の圧力は強く、壁は次々と軋んでいく。


「任せろッ!」


 ルシアン君が《斧幸》を振り抜いた。


 その瞬間、彼の斧が異様なほど巨大化する。


 石床が崩れ、巨大な氷柱ごと叩き割る。だが、その分だけ彼自身に返ってくる不運はさらに重くなる。


「……っは、これで借りが増えたな」


 吐き捨てるように笑い、ルシアン君は氷兵の群れへ斧を振るう。


「ミノリちゃん!」


 ボクが呼ぶ。


「了解!」


 彼女は頷くと、刀を瞬時に槍へと変形させた。


 シルトで足場を作り、彼女は跳躍。氷兵の頭を蹴り台にして一気に高所へ駆け上がる。


 槍の穂先が煌めき、グレイシアの胸部を狙う。


 ……だが。


 氷の羽が弾丸のように射出され、彼女を阻む。


「まだっ!」


 ミノリちゃんは空中で槍を刀に戻し、迫る羽を切り裂いた。


 けれどその隙にグレイシアが動きを取り戻し、鋭い嘴で彼女を叩き落とそうとする。


「させねぇ!」


 ルシアン君がシルトを足場代わりにして跳躍、斧で嘴を受け止めた。


 衝撃で骨が軋む音が響くが、彼は押し返す。


 そして先程放たれた氷の羽が地面につき、氷の兵士に変わった。


「……今だ、バレットちゃん!」


 ボクは叫ぶ。


 バレットちゃんは既に狙いを定めていた。


 ゲシュッツから放たれたエネルギー弾が、空間を跳ね返りながら七度軌道を変える。


 氷壁を反射し、シルトを利用し、さらにはボクの氷羽を使って、一直線にグレイシアの胸部へと収束していく。


 七度の跳弾。


 エネルギー弾はまるで意思を持つかのように核を正確に射抜かんと迫っていった。

最後まで読んで頂きありがとうございました!


もしこの作品が気に入りましたら感想や評価をいただけると幸いです。

そうでなくともこの作品が少しでも気に入っていただけたら今後も読んでいただけると幸いです。


改めまして最後まで読んでいただきありがとうございました!

また次回もお楽しみください

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