↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
書類不備です。  作者: 魚野れん
何でも屋「カジくん」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

69/210

マイペース過ぎるITサービス

 浩和は終ぞ休憩中に祥順から現状を聞き出したりはしなかった。最初にねぎらいの言葉を送ってきただけで、何も話題に上げなかったのだ。

 サーバーの不具合と聞いて、不安に思っている社員はたくさんいるだろう。浩和だってその内の一人に違いない。

 その気になれば、浩和は親しい友人という名の特権で祥順からいろいろと聞き出せたはずだ。

 自身の気持ちを完全に抑え、祥順が午後の作業に集中しやすいよう、リフレッシュさせる方を優先させてくれたというわけだ。そんな浩和は、三時頃に再び邪魔しに来ると宣言して去っていった。


 サーバーのブースへ戻ってきた祥順は、早速作業の続きに取りかかる。まずは社内にサーバーへの接続制限の開始を通達する。そしてセーフモードで起動し、改めてエラーログを探り始める。

 見慣れないログの調査である上に、午前中は焦りの気持ちが強く、時間も途切れ途切れで良い調査が出来たとは思えなかった。

 午前中もエラーログやイベントログを見ていたが、改めてゆっくりと見直せば、傾向が掴めてきた。サーバーを起動すると複数のアプリケーションが立ち上がっていくが、それのいくつかが立ち上がり中にエラーを起こしてしまっているらしい。


 いつからそんなエラーが出ていたのかを確認すると土曜日の深夜だった。ITサービスに土曜日の深夜が始まりのようだと伝えたら、こんな回答が返ってきた。

「土曜日の深夜はサーバーのバックアップを取ってますね。あと、OSのプログラムアップデートがあった時はそれを適応させるようになっていたはずです」

「因みに確認方法は――」

 教えてもらってサーバースケジュールを見てみれば、確かにそういう設定になっていた。幸運な事に、バックアップデータはあった。

 最悪、一営業日分をやり直せば済む。

「コンポーネントエラーが多いという事は、恐らくOSのアップデートに失敗してしまったんでしょうね」

「えっ」

 今日一番、不気味な言葉を聞いた気がした。


「OSのアップデートって失敗する事があるんですか?」

 携帯端末とかで、よくOSの更新を求める案内が表示される。あれをする事でまれにバグったりする事は知っていたが、動かなくなるほどの不具合に繋がるとは考えた事がなかった。

 それに、祥順が知っているのは、OSのアップデートによってバグが発生するという事であり、OSのアップデートが失敗する事によって端末がクラッシュする事ではない。


「発生するのは大きな更新の時が確率は高いんですけど、何万とあるパソコンの中で一つだけがうまくいかない事はありますね。バグみたいなものですよ」

 さらりと言われた。


 いや、いやいやいやいや! バグっていうか、欠陥じゃないのか!?

 祥順は心の中で突っ込んだ。

「アップデートする時にかかる負荷が、設置しているサーバーのスペックでは対応しきれなかったのかもしれませんね。何しろ、保守の満期を迎えたのにリプレイスしなかったんですから。

 あ、ちゃんと一年ごとの保守に入り直してますから保守はしてますよ」

 初耳だ。

 だが、確かにサーバーのリプレイスに関してはこの会社に入ってから何も聞いていなかった。


 電話越しに聞こえてくる担当はこの機に営業を仕掛けてくる。

「でもこういう事があるとなれば、そろそろリプレイスはした方が良いですね。

 購入時の保守は五年になってて――」

「いや、私は担当ではなく代理なのでそういった話は結構です。それよりも今、すぐ、これをどうにかしなくては」

 緊急時だと言っているのに、どうして営業を始めるのか、祥順には理解できなかった。

 このままずっとサーバーに繋がらない状態にしておくわけにはいかない。比奈子の代理として、さっさと復旧させなければならないのだ。


「そうですね、もちろん早く復旧する事の方が優先でした。まずはアップデートしたパッチを削除してみてください。

 アップデートしたパッチが単に競合してるだけかもしれませんから」

 基本的にサーバーのパソコンの考え方はクライアント側のパソコンと同じらしい。電話を一度切って、試してみる事にした。

 パッチの削除くらいなら、誰にも聞かなくたってできる。そう思っていた。




「――だめだ」

 祥順はそう呟き、背もたれに身を預けた。ぎし、と微かに椅子が軋む。

 どういう事か、セーフモードだとパッチが削除できない。できたものもあるが、機能を制限している部分に関わるパッチは削除できないらしい。

 恐らく、問題が起きているのはこの“消せないパッチ”である。

「これさ、削除させてくれないかなあ……」

 力なくサーバーに話しかけたが、言う事を聞いてくれるわけがなかった。



 消去できない旨をITサービスに連絡すれば、のんきな声が返ってくる。

「通常起動して、フリーズするまでに頑張ってみると意外にできたりしますよ」

「それもできなかったので連絡したんですが」

「やっぱりだめでしたかー」

 やっぱり、とは何だ。祥順はむかむかと胸元が騒いでいくのを感じていた。

 マイペース過ぎる彼に対する感情を、祥順は思いっきり深呼吸をする事で抑え込んだ。


「次は、何を試しますか?」

「前回の状態にOSを復元させた方が早そうです。復元作業は分かりますか?」

 自分のパソコンでやった事がある。それと同じだったら、問題なく操作できるだろう。

「通常のパソコンと同じであれば、できると思います」

「じゃあ、試してみてください。復元は更新したデータとかには影響がないので安心してください」

 復元を実行する為に彼の指示通り、操作し始めた。

2023.11.13 一部加筆修正

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。