388.百合ちゃんのこと③
「このお煎餅美味しいですわね。」
「百合子は甘いお菓子も好きなんですけど、お煎餅とかしょっぱいお菓子も大好きなのよ。」
「そうなんですね。気に入ってもらえてよかったです。これ、値段もお手頃で、これだけ入って200円なんですよ。」
「えー?こんなにおいしくてこんなにたくさん入って200円?このお煎餅を作っているお店はどうやって利益を得ているんでしょう?私、このお煎餅が気に入ったのにお店が潰れたら困ってしまいますわ。」
「これは製造中に割たお煎餅なんです。ほら、商品名も割煎って言うんです。」
・・ふう。百合ちゃんも少し落ち着いたかな?そんな事を考えていた時
トントントン
と扉をノックする音が聞こえた。
「はい。」
と返事をすると、食事会に参加されていた皆さんとメイドさん達が部屋に入ってきた。メイドさん達は人数分の椅子を設置して部屋から速やかに出て行った。
百合ちゃんのお父様が
「話は聞いていただけましたか?」
と私に尋ねた。その瞬間、私は緊張した表情の桜華様と目があったが、百合ちゃんのお父様に向き合い、
「はい。」
と私が答えると、西園寺さんのお父様は
「このはさん。皇帝陛下がこちらの仕事を辞めて百合子の護衛として働いていいとおっしゃってくれたんだ。君のお父さんはこのはさんの判断に任せると言っている。だから明日から百合子の護衛として働いてくれないか?頼む。」
と頭を下げた。その瞬間、ここにいる全員の視線が私に向いた。私は
「申し訳ありませんがこのお話、お断りさせていただきます。」
と答えると、(百合ちゃんと百合ちゃんのお母様以外の)皆んながとても驚いた顔をした。きっと私が引き受けると思っていたのだろう。西園寺さんのお父様は、
「なぜだ?あの話を聞いて断るとは、君には心がないのか!報酬を気にしてるのか?ならここの2倍出そう!」
と身を乗り出して私に言った。友見さんと西園寺先生は
「僕は君を優しい子だと思っていたが・・・。買い被ってたよ。」
「このはさん、君なら引き受けてくれると思ってたのに、残念だよ。」
とがっかりした口調で言った。その時
「は?勝手な事言うなよ!優しいこのはは自分の損得勘定では動かない。心があるからこの答えを出したんだ。大体、自分たちの思い通りにならなかったからってこのはを責めるのは違うだろ。」
と桜華様が言うと、百合ちゃんも
「桜華様の言う通りですわ。お父様、お兄様方、チャ・・このは様に謝ってください。理由も聞かず大人がよってたかってみっともないですわよ!」
と言った。ここにいる百合ちゃんはさっきまで涙を流していた百合ちゃんとは全く別人で、凛として力強い女性に見えた。すると西園寺さんのお母様が、私が護衛を断った理由を皆んなに話してくれた。
「このさん申し訳なかった。確かに君の言う通りだ。娘を守りたかったんだ。私は頭に血が昇って、君に酷い事を言ってしまった。本当に、すまない。
と西園寺さんのお父様は深く頭を下げて謝ると、友美さんと西園寺先生も深く頭を下げ謝罪をした。




