387.百合ちゃんのこと②
「今、この小娘である私がここで仕事ができているのは父がここで魔導師として働いてきた実績があるからなんです。・・・考えてもみてください。護衛の方々は日々の訓練や日々の仕事の中で仲間同士の信頼関係を築き上げて皆さんをお守りしてるんですよ。私が百合ちゃんの護衛を引き受けたとして、突然やってきた小娘が屋敷のお嬢様である百合さんをお守りするって、これまで勤めていた方は面白くないでしょ。それに、そんな私に背中を預けてくれる方はどれだけいらっしゃるでしょうか?」
「ですが、チャリコさんはすごい魔導師ですわ。私はチャリコさんがすごい魔導師であることをこの目で見ましたから。」
「百合ちゃんありがとう。そう言ってもらえて嬉しいです。・・・なるほど、ここで働く警備員の皆さんが私と父の試合を見にきたのも私が使える人間なのか品定めをしてたのかもしれませんね・・・。ってごめんなさい話がそれて。・・・つまり何が言いたいかと言うと、実力があり護衛として経験豊富な人間しか皇太子殿下の婚約者候補になった西園寺家のお嬢様である百合ちゃんの護衛は務まらないという事です。」
「確かにそうですね。でもその様な方はどこにいらっしゃるでしようか?」
と西園寺さんのお母様が尋ねた。
「これから言うことは私の独り言です。こちらの人事にも関係してくることですから。」
と私が言うと、2人は
「わかりました。」
と声を揃えて答えた。
「例えば私の父とか。手前味噌ですが、父は術だけでなく剣の実力もかなりのものですし、経験も豊富なのでどの様な状況でも冷静な判断はできます。それに昔退魔部隊で働いていましたから私の心配している人間関係のあれこれもよく理解していると思います。それと・・百合ちゃんが信頼している私を、母が亡くなってから12年間男手一つで育ててくれたのが父です。・・途中2年半は冨久岡にいましたが・・。だから父だったら、百合ちゃんにも、西園寺家の護衛の方々に受け入れて貰いやすいと思うんです。それに父が西園寺家で働き、護衛の方々に受け入れてもらえれば、人手が足りない時とか私がお手伝いをやり易くなると思います。まぁ、・・・これは独り言です。独り言を言っただけです。こちらで雇っていただいている人事権なんて持ってない子供の独り言ですから。まずは皇帝陛下、皇太子殿下に護衛の件は相談されてください。」
と伝えると、百合ちゃんは
「チャリコさん・・。ありがとう。」
と涙を流してお礼を言った。私は
「待って、泣くのもお礼を言うのもまだ早いです。私は独り言を言っただけです。どうするか決めるのは皇帝陛下ですから。」
と念を押した。




