376.喫茶店で
「なかなか見つかりませんわね。」
「5軒目も空振りだったな。」
百合ちゃんと桜華様が話をしていると、
「こっちも成果なし。」
と言って西田くん達もやって来た。
「元々南武政右衛門の本は多くの人に読んでもらうために出版されたものではないでしょうね。例えば自分の弟子達に配るために本を作ったとか、特定の人向けのものだと思うんです。でも仁母町は掘り出し物がたくさんありますから楽しみながら探しましょう。」
という友見さんの両手にはたくさんの本が入った風呂敷があった。
「じゃあ、あっちの通りにも行ってみようぜ。」
と言う西田くんに私達はついて行った。
それから3時間もかけて仁母町の古本屋全てを探したが南武政右衛門の本は見つからなかった。本屋通りから離れた古い喫茶店でお茶をすることにした。
「みんなありがとう。貴重な休みなのに付き合わせちゃって。お茶代くらい奢らせて。」
と言うと
「いいって、気にしないで。私なんか大好きな恋愛小説『君は満月のように光っている』の初版本を800円で買えたのよ。友見さんがねぎってくれて3000円が800円になったの。すごくない?」
「俺の欲しかった基礎のトレーニングの本が新品の状態で3割引の値段で売ってんだぜ。迷わず買った。」
と上岡さんと松本くんが言ってくれた。
「この辺りの本屋全部探したけど、無かったってことは・・あとは、年末年始あたりに出直すくらいしか手は無いかな。」
「ないですわね〜。ってなんで年末年始なんですの?」
「年末に大掃除をする家がほとんどだろ。だからその時期に本を売りにくる人が多いんですよ。」
「へぇ〜。そうなんですのね。」
西田くんと西園寺さんの話を聞きながら桜華様が、
「呪術関係の本も思った様な物も無かったし、古本屋を回るのにも時期とかあるんだな。」
と言うと、店のマスターが、
「学生さん達は、呪いとか物騒な本を探しに来たのか?」
と尋ねてきた。私は
「まぁ、はい。そうですね。」
と答えると、
「本屋じゃないけど・・世界各地で語られたり行われてる呪とか禁忌とか宗教とか風習とか風俗とかさ。・・民俗学って言ったかなそんな本とか道具とか取り扱ってる変わった店がこの近くにあるよ。まぁ、ぱっと見、本屋というより雑貨屋?って感じかな。店の店主の息子がここの常連でね。いつも、あの不気味な店を潰して食堂にしたいってよくぼやいてるよ。息子さんは駅前の食事で働いてるんだけどね・・・。」
マスターは話好きで、私達がお茶をしている間1人で喋っていた。
南武政右衛門は宗教家の一面もあり、彼の本は帝大の民俗学の棚にあると友見さんも言っていたし、私達はお茶をした後、マスターに教えてもらったアンコンブルという名の店に向かうこととした。




