369.いつも通りになったけど②
「そうですねー。西園寺さんの家で働けば、西園寺先生や友見様に勉強を教えて頂く機会も増えるし、西園寺さんとはおしゃべりをしながら刺繍を教えてもらったりして楽しそうですね。それに西園寺さんのお宅は魔物による被害もないそうです。」
「・・・そうか。楽しそうでいいな。」
「はい。ですが私、魔物退治をしたり、魔物が発生しない様に結界を張るのが仕事です。西園寺さんのお宅で私の仕事はありません。」
そう言って、私はもう一つのおにぎりに手を伸ばした。
「え?」
桜華様は驚いた様に呟いた。
「あ。こっちはシャケのおにぎりでした。すごく美味しいです。昨日買ったおにぎりの根付けの具は何が入ってるんでしょうね?」
「あ、え?あの根付け、開くのか?」
「ははは。開きませんよ。もしもの話です。」
「あぁ。そうだな。・・・俺は梅干しのおにぎりが好きだから。梅で。このはは?」
「私はシャケかな。このおにぎりすごく美味しいので。・・・桜華様。私は仕事を途中で投げ出したりしません。そんな無責任なことはしないから安心して下さい。」
そう言って私は麦茶を飲み干して立ち上がり、伸びをした。
「桜華様。明日もお出かけするんですから早く寝ましょ。私も朝寝坊した癖に眠たくなりました。歯磨いて仮眠します。」
私はそのまま洗面所へ行き歯を磨いた。鏡にうつる自分の首元には赤い吸い跡が目に入った。
「明日には消えるかなぁ。」
それから部屋に戻ると、桜華様が手ぬぐいを持ってソファーに座っていた。
「これ菊が首に巻けって。中に氷嚢が入ってる。冷やせば跡が薄くなるって。」
「ありがとうございます。ではおやすみなさい。」
私は渡された手ぬぐいを首に巻いた。桜華はベッドには行かずソファーに座っている。何か考え事をしている様に見える。邪魔をするのは申し訳ない。今日は疲れたし、足を伸ばして寝たいのでソファーは使わずに床で寝よう。私は邪魔にならない様にソファーと壁の隙間に寝転んだ。皇居内はどこも掃除が行き届いているので埃一つ落ちておらず、絨毯も上等なので寝心地は抜群。ああ。秒で寝落ちする。
・
・・
「・・ちょっと、このは、ごめん。すぐに退くから。」
寝落ちした瞬間声をかけられた。
「大丈夫です。ちょっと今日は足を伸ばして仮眠とりたかったんで。おやすみなさい。」
「ちょっと。何で床・・・。」
桜華様様が何が言ってるけど眠い。
・
ん?
「桜華・・あ。」
「ごめん起こした。ベッド使って。俺がソファー行くから。言っとくけど、変なことしようとしたわけじゃない。今ここに寝かせてだけ。」
桜華様は早口でそう言った。




