366.寂しくて
「桜華様、このは様がお戻りになられましたよ。」
と菊さんが言うと、ベッドに横になっていた桜華様は体を起こし私を確認してから
「あ、うん。」
と言って(私に背を向け)横になった。桜華様は明らかにいじけている様子だったので
「何があったんですか?」
と小声で菊さんに尋ねた。
「桜華様がお風呂に入っている間に食事をして戻られるとこのはさんがおっしゃったでしょ。」
「あ。すみません。魔物が発生してそのまま・・・。」
「桜華様もこのは様が魔物を退治しに行ったことも、事後処理をされていたこともご存知なんです。」
「え?ではなぜ桜華様はいじけているんですか?」
「大事な仕事をしていたのを知っているからこそ、寂しかったとか、遅いじゃないかとか文句の一つも言えなくて、自分の気持ちをどこにぶつけていいか分からずいじけていらっしゃるんです。」
「そうなんですね。」
「そこで何コソコソしてるんだ?」
と桜華様が私達に背を向けたままたずねた。すると
「このはさん、私、ちょっとお夜食準備して来ます。」
と言って菊さんは部屋から出て行った。
・・・私に桜華様のご機嫌を取れということですね。・・・だから警備員の方や菊さんが早く部屋に戻る様にあんな態度をとってたんだ。確かに今の桜華様と一緒の部屋にいるのは気疲れするよね。
・・まあ、魔物が出て来たとはいえ、私はすぐに戻るという約束を破った。私は
「桜華様、すぐに戻るという約束を破ってごめんなさい。」
「別にこのはは悪くないから謝らなくていい。」
「そうですか。」
ん〜。完全にいじけてるな。面倒くさいな。仕方ない。菊さんが部屋から出て行ってしまったし、髪の毛にタオルを巻いたままだとみっともないから、髪の毛結いに一旦部屋に戻ろう。
私がドアノブを開けようとすると、
「ごめん。ここにいて!」
と桜華様が言った。
「お風呂から出て慌ててこちらに来たから髪の毛濡れたままなんです。流石にこのままここにいるのは見苦しいので髪、結んできますね。」
「そのままで構わない。」
「はぁ〜。」
私はため息をつくと桜華様が寝ているベッドの縁に座った。




