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61・侯爵withおみ足ダンサーズ

「モルガン・ブラックモア、お召しに従い参上いたしました」

「同じく破邪魔法使いジーン、参りました」



 左右にレシェフモートとカイレンを従え、肩にライを乗せたガートルードに、モルガンとジーンは礼儀を尽くしてひざまずく。



 片や、建国以来の名門ブラックモア侯爵家の当主。片や、平民出身の魔法使い。

 王宮所属の破邪魔法使いは平民でも貴族に準じた扱いを受けるのが建前だが、本来ならば同じ場に並ぶことなどありえない二人である。ましてや直系王女の御前ともなれば、平民と並ばされた貴族は屈辱のあまり自死を選びかねない。



 だが決して相容れない身分と立場の二人は友好的とまではいかずとも、互いがそこにいることをなんの気負いもなく認め合っているように、ガートルードには見えた。回復したジーンはモルガンのもとを訪ねたというから、そこで身分の壁を乗り越え、わかり合えるものがあったのかもしれない。



「よく来てくれたわね、二人とも。もう身体は回復したの?」



 光と闇みたいな組み合わせだわ、と内心感嘆しながら問うと、二人は美貌を緩ませた。



 まず答えたのはモルガンだ。


「ご心配をかけてしまい申し訳ございません、我が女王。すでに体調は万全ですが、我が女王の麗しいご尊顔とおみ足を拝し、気力体力魔力おみ足力すべてが充実し、みなぎっております」

「……そ、そう……それは、良かったわ」



 おみ足力ってなんだろう。気になるが、説明されるのもちょっと怖い。



「ご覧の通り回復しました。このジーン、殿下のお慈悲に心よりお礼申し上げます」



 次に答えたジーンは完全に猫かぶりというか、よそゆきモードだ。精神世界でやさぐれまくっていた最低最悪のクソッタレの馬鹿野郎のヘタレとは思えない。



「ジーンも良かったわ。二人の元気な姿を見て、安心しました。……どうか、楽にして」



 ガートルードの勧めに二人は素直に従った。ごく、とガートルードは息を呑み、問いかける。



「手紙は、読んでもらえた?」



 呼び出す際、二人にはすでにこれまで知り得た情報――皇禍こうかの経緯やヴォルフラムと夢の中で話し合ったこと、女神と禍神、禍神のこれまでの所業を手紙で伝えてある。……禍神がガートルードとヴォルフラムの魂を、こちらの世界へ転生させたことも含めて。



 ジーンはすでにガートルードが本物の『ガートルード王女』ではないことを知っている。だがモルガンは初めて知ったはずだ。

 もしも彼が、『本物の王女でもないくせに、よくも騙してくれたな』と憤ったら。いや、そこまでいかずとも、本物でもないくせに王女のふりをしていたのかと失望していたら。



「もちろん、拝読いたしました。禍神の暴虐には驚くばかりですが、使嗾しそうされたとはいえ、僭王が己の意志で女王陛下や王女殿下がたを殺めたのは明白。断じて許すべきではないと……」

「……あの、モルガン?」



 立て板に水とばかりに話し始めたモルガンを、ガートルードはついさえぎってしまった。藍色の双眸がぱちぱちとしばたたかれる。



「いかがなさいましたか?」

「いえ、その……オズワルドや禍神よりも、まずわたしに言いたいことがあるんじゃないの?」

「言いたいこと?」



 はて、とモルガンは首を傾げた。その隣で微妙にゆがめられたジーンの表情を言語化するなら、『あっ、やべっ』だろうか。



「我が女王に捧げる譚詩バラードならば、何千篇でもございますが……こちらで披露してもよろしいのでしょうか?」

譚詩バラード?」

「うん侯爵、ちょっと待とうか」



 なぜか手を叩こうとしたモルガンを、ジーンが止める。



「なんだジーン、無粋な」

「無粋な、じゃねえんだよ。お貴族様みたいなつらして、しれっとおみ足ダンサーズを呼ぼうとしてただろうが」



 ジーンは声をひそめているつもりらしいが、モルガンがまるで悪びれないせいでしっかりばっちり聞こえてしまっている。



(お、……おみ足ダンサーズって、なに?)



 ガートルードの脳内で、暗黒の儀式を繰り広げていたおみ足隊がサンバのリズムに乗って踊り始めた。まさか、まさか手を打ち鳴らすだけであんなモノを呼び寄せられるというのか?



(って、その前にそんなモノ結成させる必要なんてないでしょ!?)



 しかしうろたえているのはガートルードだけ。ライはつぶらな目に虚無を漂わせているし、レシェフモートとカイレンにいたっては『よし』と頷き合っている。



「私は正真正銘の貴族だからなんの問題もない。我が女王に譚詩バラードを捧げるのならば、がくも献ずるのが王宮の流儀というものだ。素寒貧のジーンにはわからぬだろうが」

「素寒貧じゃないし! そこそこ稼いでるし! あと稼ぎ関係ないだろ!」



 まるで隠せていない二人の会話を聞いているうちに、ガートルードは気づいた。



(……モルガン、ジーンのこと名前で呼んでる)



 負け犬と呼び、鋭い舌鋒で糾弾していた。決して相容れないまでも互いの存在を許せるのならそれでいい、と思っていたのだが……この二人、ガートルードの想像以上に……?



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