幻獣と心の関わり編 久しぶりの休息2
お久しぶりです!
だいぶ空いてしまって申し訳ございません!
秋真っ只中。
日中の幻獣出現が多いといっても、そこまで頻繁でもなく、相変わらず少ない。
今は俺の部屋で魔衣達とだらけた日々を送っている。
美依の事は、下手に詮索して危険な事になったら困るし、幻獣を追っていたら、いずれ必ず会えるということだ。
「シュン! 私は羽休めをしたい!」
「お、おう。到達だな」
沙希と戦闘するようになって、数日が経った。
最近は切羽詰って、確かに魔衣にも苦労させていた。
「って言ってもな。金ない何もないの俺じゃ、そうおいそれとどこにでも行けるわけじゃ……」
「流石にここでゴロゴロは、飽きた」
幻獣にしては割と贅沢なんだな。
「なら私が手配しましょうか?」
「そんな事できんの?」
そう唐突に告げたのは沙希だ。
聞けば、本部に休息地を要求すれば、手配してくれるそうだ。
さしずめ、流石は大切に保護されている人種なだけはあるって感じかな。
「どこにしますか? テーマパーク、温泉、温水プール、南国ビーチ、雪国、あとは―――」
「待て待て待て! どんだけ候補出すんだよ!」
というかそんな遠出に行くわけには行かない。
「シュン。温泉って何?」
「えっ、知らないのか?」
「記憶にはあるけど、行ったことはない」
行ったことないのか。
まあ、温泉ならそんな遠くないし、いいかな。
俺は沙希に温泉を提案し、近場の温泉地をお願いした。
秋の紅葉が色づき始めた時期。
あたりを見待たせば、どこもそんな景色でいっぱいだ。
「温泉! 早く行こうシュン!」
「わかったから落ち着けって」
久しぶりの、一泊二日のプチ旅行。
魔衣達を連れては初めてだ。
というか、男子俺一人なのはなんか少し気まずい……。
「てか本当に取れたんだな」
隣にいる沙希に聞く。
手配を要請したその次の日は、既に返事が来ていた。
「そうですね。だいたい私がお願いすると、すぐに準備してくれますよ」
いいのかよ。こんな事にお金使って……。
ま、それはさておき。今はこの状況を大いに楽しむか。
気づけば魔衣は子供のようにはしゃいで、既に旅館の入口にまで行っていた。
走って魔衣に追いついて、女将さんに説明を受けながら部屋まで案内をしてもらった。
どうやら部屋は和室のようで、木と畳の匂いが落ち着く。
「シュン! 温泉いこ!」
そう言って、旅の疲れを、沙希の入れてくれたお茶を飲みながら癒していると、魔衣が俺の手を取って誘ってくる。
「悪い。久しぶりにあんな長時間電車に揺られたせいか、酔ったかも……先に二人で入ってくるといいよ」
「そうなの? じゃあ沙希、行こう」
「わかりました。今準備しますね」
そう言って沙希は準備をするが、待ちきれない魔衣は急かしている。
「早く!」
「わ、わかるました!」
「いや慌てないくていいからな」
そう言いつつも魔衣に急かされて準備を終えて部屋から出て行く。
やっと一人になれて、ゆっくりできる。
俺はまだ早いが、布団を敷いて横になる。
そして気づけば眠気が襲う。
静かな部屋。何も気にすることなく、考えることもなく、久しぶりに熟睡出来そうだと思って、ゆっくりと目を閉じた。
気づけば、日が落ちていて、魔衣達の姿が見えない。
スマホの通知ランプが光っていて、開いて見れば『ちょっとお店みてくる!』ってきていた。
「俺もちょっと売店でも覗きに行くか」
部屋を出て、喉が渇いて売店に飲み物と軽食を見に行く。
「ふあ~。久しぶりによく寝た」
高らかにあくびをして歩く。
我ながらかなり堕落している。
「きゃっ!」
「お……っと!」
角を曲がったところで、人とぶつかった。
「すみま……美依っ!」
俺よりも身長の低い彼女の髪が見えた。
髪の色は、珍しい青色。
「ってて。いえ、こちらこそ」
そう言って顔を上げた彼女。
「っ!? ……アナタは!」
「あの時の……!」
青髪の正体は美依ではなく。
あのフードをかぶった幻獣使いの少女だった。
以前何度か戦闘した時に見た髪色。そしてこの声は明らかにその人物だった。
「……そんなに身構えないでください。こんなところで戦闘するわけないじゃないですか。……それともアナタは、そんな常識もない人間なんですか?」
美依は二人を倒せなかったのか。
「……話でもしますか」
唐突な彼女からの提案。
「だから、そんな身構えないでもらえますか? 自意識過剰ですよ?」
んな事言われても無理がある。
敵である彼女とふたりっきりで会話。身構えない奴がいるのかって話だ。
「ここじゃなんですし、中庭で話しませんか? この時間なら誰もいないはずです」
「わかった」
俺は彼女に連れられて、中庭に場所を移す。
中庭に着くと、真ん中あたりに一つあるベンチに、座る。
「アナタは、あの女のなんなの?」
「……唐突だな。家族だよ」
「兄妹?」
「血は繋がってないけどな」
なんでこんな事聞いてくるんだよ。
意味分かんねえ。
「恋人とかじゃない?」
「今はな」
「じゃあ前はそうだったってことね」
「あのさ。俺の私情を知ってどうすんだ?」
まあ、利用するにしたって、特に意味のない情報ばかりだけどな。
「なあ、逆に聞くけど、二人は何なんだ? 普通じゃないよな?」
ずっと知りたかった二人の力。
その力を、まさかこんな形で聴くことになるとは。
「……いいわ。特別に教えてあげる。……私たちはとある実験施設で実験を受けた。幻獣を使わずに幻獣使いを生み出す。禁忌。人工幻獣ならない、人工幻獣使いの製造。既存の幻獣使いを超えて、来るべき厄災に備えて生み出すはずだった。……だけど生み出されて生き残ったのは、私と隼人だけ……それ以外はみんな殺された。こんな忌々しい力を植え付けて……」
「……その力は? なぜ幻獣を使わずに?」
「幻獣ならある、体内に。私たちはその実験で、幻獣の魂をその身体に取り込んだ。……その結果幻獣を必要としない能力を手にした。だけどその結果がこれ」
そう言って彼女は、さっきまでかぶっていた帽子を取る。
「耳? 幻獣化なのか?」
「いいえ。近いけど違うわ。これは力の代償。大きな力にはその対価が必要。普通の幻獣使いは約束がその対価。けど私達は、身体の一部を無条件で、最初に取り込んだ幻獣に侵食される、私達はお互いに狼神を取り込んだから、半獣化した」
だから常にローブに身を包んでたわけか。
「幻獣の力を喰らって力にできるのが、二匹目の幻獣の力、三匹目が翼。これだけ話したんだ、もういいわよね?」
「ああ。十分なくらいだ」
むしろこっちにとっては大きな情報すぎる。
「私はもう行くわ」
そう言って帽子を隠し、尻尾に出して、空を見上げる。
「しっかりと、普通の人間として生きたかった。……今日は、満月ね。さよなら、次に会うときは戦場で、敵よ」
そう言って彼女は、建物へ戻っていった。
「……さて、俺も戻るか」
魔衣達もそろそろ戻っているだろうし、俺も部屋向かった。
結果その日一日、彼女が最後に言った言葉が気になって仕方なかった。




