幻獣と心の関わり編 始まりの夜静かな朝
お久しぶりです! 久しぶりの新話です。少し改正した話などもあるので、その辺も読んでみるのもおすすめです!
これからもよろしくお願いします!
暗い森の中を駆ける。その移動速度は、人のそれではない。体は再び幻獣化が進み、前よりも進行が酷いとも見える。
「ハアッ……ハアッ。ここまでくれば、追ってこられなっ……っ!?」
急な吐き気と、胸の苦しさに追われる。近くにあった木に体を預けて、腰のポシェットから兄に渡された薬のはいった瓶を取り出し、慌てて出したため、手から何粒か零す。
「っ……こんなんじゃ、長くなんて持たない」
兄さんの言っている通り、この薬を飲んでいる時は、力を抑えたり、進行も停止してる。だけど、さっきみたいに力を使えば、一瞬で幻獣化の効力が勝って、再び進行が始まる。
別に大きな力や使用回数を制限すれば、別に症状は進行しない。
だから、さっきの戦闘は一度でかなりの力を使った。完全にオーバースペックだった。
「んっ。幻獣?」
発作のようなものが収まり始めたときだ。草むらがガサリと音を立てる。闇夜に光るは二つの赤い目。いや、もっとある。
「野良の、雑魚幻獣……」
普段はない、この血が沸き立つような、沸騰するような本能はなんだろう。
――――――殺したい。
――――――血を、浴びたい。
こんな気持ちは、いままで感じたこともない。まさしく狩りの本能? それとも殺戮の本能? どっちにしても、これも幻獣化の原因なんだろう。
私の幻獣化のベースの幻獣は、狼神。そう、リン達と同じ狼系の幻獣だ。
きっと目の前の相手も、私と同じ感情を抱いているのだろうか。
「ガグルルルゥッ!」
相手に対して発した言葉は、実際は言葉になってなくて、それは獣は喉から出すような、そのままの声。
声を出すと同時に、両手に鉤爪を召喚する。きっと今の私には、この武器が一番合うと思う。
なんて便利な能力なんだろうとか、こんな状況、状態の中で、そう思ってしまう。
そして獣達は順番に私を遅いにかかる。一匹から二匹、二匹から三匹と、同時に仕掛けてくる数が次第に増えていく。
「アッハハハッ!」
私はこの戦闘を、獣を切り裂いていくのを、あまつさえ血を浴びるのを、楽しんでいた。
「さあほら! もっと!もっとだよ、みんなで来なよ!」
私は獣のように四つん這いで動き出す。そのほうが動きやすいと思った。
そして同時に、無意識に、その状態に必要なものを体に召喚させる。
四つん這いで動くなら、前後の体をしっかりと動きやすいものに、尻尾を、腕だけでなく、足にも鉤爪を、それもしっかりと体と一体化しているものを――――――。
日が昇り始める森。その太陽が照らすのは、無数の死体の山の上に立つ私でない私。
血を全身に浴び、ただ太陽に向かって吠える。
「まさかとは思ったが、そうか。美依」
急に現れた兄さんがそう私を呼んだ。たぶん、私の事だと思う。
私はその兄さんのもとに歩み寄る。
「それがお前なりの力なんだな」
そう言って兄さんは、私の体を撫でる。
その体はとても綺麗な毛並みで、艶のある深い青。
『ごめんなさい。私……』
力が次第に私を飲み込んでいっているのに気づかず、朝まで獣と戦闘していたら、こんな事になってしまった。
私は、完全に狼神になってしまった。
「大丈夫だ。お前は理性はあるし、自信を制御している。それにこれは幻獣化とは違う。薬を飲めば元の体に戻れるし、いずれは自信の意思で好きな時に戻れるようになるさ。今は帰ろう。……乗せてくれるか?」
『うん』
普段は乗せてくれているリンと同じ、狼神の背中に、自分が乗るのではなく、乗せる側になるなんて思ってもなかった。
私が自信の精神で見た映像。それは、私自信が幻獣になる映像。それがこんな早い段階で現実になるなんて思わなかった。
これで本当に望みはなくなった、あと二、三日もすれば、きっと本部のほうが私を指名手配に出すはず。そうなれば、一緒にいる春まで巻き込む。
そうならないためにも、このまま兄さんに匿ってもらうのが一番だ。
まあ、まずは元の体に戻らないと。




