幻獣と心の関わり編 知ってしまったこの先
力が使えないことを知ってから三日、兄さんは私に、力の喪失の原因は、私自信の覚悟が足りない。幻獣化が進むのを恐れている。自分が生み出した力への恐怖じゃないのかと言ってきてた。
確かにここ最近、緩和剤のおかげで、今まで通りに動けるまでになったし、腕の変質も抑えられて、幻獣の力さえ使おうとしなければ、変質することもない。
「兄さん、私ちょっと出てくるね」
「……別に外出制限を設けてるつもりもない、ましてや束縛するつもりもないが、これだけは約束してくれ、決し一人で幻獣に立ち向かうな、不必要のない人間との関わりはもつな。あと―――」
私は兄さんに許しをもらい、前に春と来た森にやってきた。
目的は彼女に会うために。
彼女ならこの幻獣化を、私の内側から調べられるかもしれない。
「沙希、いる?」
「その声って……やっぱり美依さん!?」
私が玄関の扉を開けて、待っていると、沙希が驚いた顔で私のもとに駆け寄ってくる。
「春さんからいなくなったって! でもどうしてここに?」
「説明はあとでゆっくりするから。今はそれより、これを見てほしいの」」
そう言って私は、被っていたフードと、マントで隠していたものを出す。
「獣の……耳と尻尾?」
「沙希なら、何か知ってるかなって思って。私がここに来たことは、春には伝えないでほしい」
「……わかりました、しれでは、二階の寝室に行きましょう。ココロのに行けば、なにかわかるかもしれませんし」
そして連れてこられた二階。以前春がデュランとのなにかを掴んだ、あの部屋と同じ部屋。
私はベッドに横になり、沙希がなにか詠唱し始める。
すると次第に眠気が襲い、瞼が重くなる。
「この検査では、美依さん自信が自信の心を見て探してもらいます。一時間程したら一度起こしに来ますね」
そんな沙希の言葉を最後に、詠唱の効果で訪れた睡魔に負けた私は、心の世界へ入る。
「春さん! 美依さんが……!」
沙希は美依が眠っている間に、春へ連絡をいれた。
「―――生まれろ、短剣」
電話を切った沙希の背後から、美依が短剣を首筋に切れない程度に当てる。
「美依さん!? そんな、動けるはずないのに……」
「ごめんなさい。思ったよりも早く見つけたの、探してたものがね」
「それじゃあ、わかったんですね。治す方法が!」
沙希の表情が明るくなる。
「ええ、わかったわ……」
「っ―――!」
言葉の続きを言うことなく。美依は短剣の柄で沙希の後頭部を殴り、気絶させた。
「沙希!」
「えっ……」
ドアを慌ただしく蹴破るように入ってきたのは、春だった。
「……美依!」
春はその顔を見るや走ってくる。
「来ないで!」
瞬時にハンドガンを生み出して足元を撃つ。
その行動に春は足を止め、美依を見る。
ちょうど魔衣も、遅れて部屋に入ってきた。
「来るなって美依、帰ろうぜ?」
「もう、帰らない」
「いや逃がさない!」
春はデュランを召喚してつきつける。
「止めてみてよ、覚悟を見せてよ。……いつもそう言ってるでしょ?」
そう言って美依は窓から飛び降りる。
「待てよ!」
春もあとを追う。
「レインバレット! 弾質変化雷」
レインバレットは、天に向かって撃った一発の弾が無数の弾丸に姿を変えて降り注ぐ。
春はその弾の、本来の弾丸である性質を、弾の性質をイメージして変えたことで、対人無力化弾に切り替えた。
「生まれろ。数多の剣。舞え、ハンドレット・ブレード!」
美依は幻獣化の影響で人外の力を手にしている。
その力も、さっきの検査で潜ったときに、掴んでいた。
そしてぶつかり合う、お互いの数多の力。
「魔衣! 燃えろ幻武! 蒼銃!」
青色の銃を両手に持ち、一気に駆け出す。
春のココロも意識も、完全に戦闘モードだ。
「馬鹿なの? この剣の雨をくぐり抜けられるわけ……」
「行けるさ! 俺と魔衣なら! 届く!」
一瞬も止まることなく、春は剣の雨の中をその先にいる美依を求めて、幻武を構えて突っ込んでいく。
「纏え―――」
春は腕をしたでクロスさせ。
「―――そして合わされ……生み出されしは思いの結晶」
二丁の銃が合わさり、片手にライフルほどの長ものが生まれる。
「―――そして……」
春はポケットから小さなココロの欠片を取り出す。
それは彼女から受け取った大切な預かり物。
そしてそれは、普通の幻獣使いなら、他者は扱えないもの。
春はそれをギュッと握り締め、呼んだ。
「来い! リン!」
右手が光だし、白色の光が構成するのは、左手にある銃とは少し違う、すっきりとした見た目の、ライフルだ。
「これが、俺の想いだ!」
春は二丁のライフルを操り、雨の中を通り抜ける。
「そんなっ! 自分が通れる最低限の剣だけを!?」
「全て壊すなんてそんな無駄な事しない。ただまっすぐに、美依のもとにいければ、それでいい!」
「来させない! 生まれろ大剣!」
雨のその先にたどり着いた春だが、美依が思わぬ反撃に出た。
「この距離じゃライフルで対処できる距離じゃない!」
『春は私が守る!』
左手のライフルがデュランに戻り、目の前には蒼剣で大剣を受け止める魔衣がいた。
「春、今!」
「ありがとう魔衣!」
そして春は、美依に飛びついた。
「捕まえたぞ。ぜってえに離れねえ」
春は完全にひっついて離れようとしない。
「俺はお前がいないと何もできないからな。それに、美依も案外ドジだしな。俺がいないと危ないしな」
「春……」
美依はクスッと笑った。
「……わかったわ。だから離れてくれない? その、手がね?」
「え? あ、ああ、悪い悪い!」
春の手は美依の胸をしっかりと掴んでいた。
美依にそれを指摘されて、力を緩めた。
「っ! どいて!」
美依が春を突き飛ばす。
「なにすんだ、美依」
「私にはもう、戻れない。この幻獣化のその先に、何が待っているのか、全て知ってしまったから……」
そう言い告げると、美依はバックからもしもの時のための、兄に渡されたスモークグレネードを使った。
「美依!」
走り去る中、背後からは春が呼ぶ声が聞こえる。
「ダメだよ。これ以上いたら……戻りたくなるじゃない……」
一人日の落ちた暗い森のなかを走った。
お久しぶりです。だいぶ空いてしまい申し訳ないです!
ですがまだまだ頑張っていくので、末永く、お付き合いください!




