表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
絶対に叶わないと思っていたプロポーズをしてくれたのは中年冒険者さんでした  作者: 9bumi


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
4/23

第4話 そんな風に言われたら

 気づけば、すでに第二階層を突破しようとしていた。第三階層に到達した時点で、今回の探索もちょうど折り返し地点となる。


 Cランクの迷宮となれば、一つの階層を突破するには二時間近くは要する。それをロットは、その時間の四分の一で突破してしまった。


 対峙した魔物を倒すスピードが異常に早いのだ。


「そろそろ、休憩にしようか」

「――はい!」


 戦闘はすべてロットに任せていたとはいえ、足を引っ張らないように立ち位置を変えたり、周囲を警戒したりすれば、精神的な疲労は溜まる。

 何もしていない身で弱音を吐くわけにはいかなかったので、ロットからのこの申し出は素直にありがたかった。


 ポータルの周辺は、比較的魔物が襲ってこないセーフゾーンとされている。

 そのため、第二階層へと続くポータルを使って第三階層に移動してから、二人はポータルの近くに座って休息を取ることにした。


「ここまでの調子はどうだ?」

「どうだと言われましても……」


 エメリーヌは基本的に何もしていない。強いていえば、無双状態のロットの背中を見失わないよう、ちゃんとついて行っているくらいだ。

 言葉に詰まっているエメリーヌの様子に、あまり状況が芳しくないと受け取ったのか、ロットは眉を少し八の字にする。


「すまない。何か至らない点があったか?」

「――っ、い、いえ。とんでもないです!」

「そ、そうか……」


 ロットの表情は、明らかに納得していない。

 しかし、誤解を解くための気の利いた言い訳も思いつかない。


 このまま黙っていては、余計に状況を悪化させるだけだと、エメリーヌは別の話題をひねり出した。


「そういえば、ロットさんって、魔法師だったんですね」


 エメリーヌは、ロットの腰に備えられた短剣に視線を向けながら尋ねる。

 最初はそれを使って戦闘をこなしていくものと思っていたのだが、ここに至るまで、ロットはすべての戦闘を魔法で片付けている。


「本職は魔法師ではない。パーティーを組んでいた頃はタンクをしていた」

「そうなんですね、通りで身体つきがしっかりしていると思いました!」


 魔法師の中でも、身体を鍛えている者は少なくないが、ロットの隆々とした筋肉の付き方は、明らかに近接戦闘で培われたものだった。


「もしかして、魔法を使って戦闘しているのは、その方が私を守りやすかったりするからですか?」

「そうだな。それに遠距離攻撃の方が楽でいいって……っ!?」


 突然、ロットは衝撃を受けたといった様子で、右手を使って額を抑えた。


「ど、どうしたんですか!」

「いや、私はとんだ失敗をしてしまったなと」

「失敗……ですか?」


 今に至るまでに、ロットが一体何をやらかしてしまったというのだろうか。エメリーヌにはまったく見当もつかない。


「剣士である必要があるだろう」

「えっ……?」

「リーヌの憧れる物語では、プロポーズするのは剣士だっただろ?」

「そ、そういえば……」

「リーヌの夢を叶えるという意味で、俺は剣士でなければいけなかった……」


 心から落ち込んでいることがわかるくらい、声を低くしたロットに、咄嗟にエメリーヌは声を上げる。


「べ、別にそこまで求めませんから! 私はディアールに連れて行ってくれるというだけで普通に十分ですから!」

「ダメだ。というより、本当にそう思っているのか」

「思ってます!」


 強く出たエメリーヌに対して、やはりロットは懐疑的な視線を向けてくる。


「では、どうして神官を続けている?」

「――」


 咄嗟に言葉が出てこなかった。


 神官は色々と制約が多い。一番は何より、自由に恋愛ができない。

 そんな中でも神官を続けてきたことに、ロットは職業にこだわりを持っていると感じただろう。


「本当のことを、言って欲しい」


 実際、今のエメリーヌが相手の職業に拘っていないのは事実だ。

 しかし、最初に夢を見たあの頃は、確かに相手が剣士であって欲しいと願っていた。

 あまりにも、現実味がなさ過ぎる願いであったがために、いつしかこだわりが消えていて、ディアールに行けさえすればいいとなっていた。


「リーヌ。俺は君が一番幸せを感じる方法で求婚したいんだ」

「――っ」


 心臓が小さく飛び跳ねる。


 まだ、会ってから一日も経っていない。


 それでも、ロットのエメリーヌを思う言葉に、一切の嘘偽りは感じられなかった。


(そ、そんな風に言われたら……っ)


 ロットが一番やりやすいように――一番お互いが安全に目的を達成できれば、本当にそれでいい。

 その気持ちに嘘はない。けれど、理想を求めて欲しいと迫らせたのなら――。


「お願いしても、いいですか?」


 頬を朱に染めながら、腰の短剣の鞘に、そっと触れながらそう言った。


「ああ、もちろん」


 返ってきたのは、満足そうな微笑だった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ